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バイオハザード:デスアイランド 第二話

「失礼」と言って一人の女性が、人の間を抜けて
波打ち際に上がっていた大きな噛み痕を
残したシャチを見ている一人の男性に声をかけた。
「サンフランシスコ市の方?」
「ああ、君は?」
「テラセイブのクレア」
「野生生物保護局のガナーだ」
二人は握手を交わしながら自己紹介をした。

「呼んだのは、テラセイブの追跡タグが付いてたからだ」
クレアが死骸に近寄ると鳥は一斉に飛んで行った。
その様子に少々驚きながらも、ガナーはクレアに問いかけた。
「テラセイブって環境保護団体か何か?」
ガナーは死臭に顏を歪めていたが、クレアは慣れた様子だった。
「バイオテロの被害者を支援するNGOよ」と彼女は答えた。

一呼吸置いて、ガナーは理解していない感じで、
「なるほどね」と言った。
「とにかく関係者が来てくれて助かった」
クレアはメジャーを取り出して噛み痕を図ると、
「噛み痕が大きい」と少し驚いた様子を見せた。

「サメかな」とガナーが言うと、
クレアは「サメはシャチを襲わない」と答えた。
彼女は続けて言った。
「それに、この巨大な噛み痕よ? サメのものとは思えない」
そう言いながら彼女は視線を、遠い海に向けていた。

—————————————

暗闇の中を懐中電灯と銃を構えている
女性は警戒しながら進んでいた。
「ジル、応答せよ」男性は無線機で呼びかけた。
「ジルよ」彼女は呼びかけに応じた。
「生物兵器関連のようだ。非常線を張り、応援を待て」
男性はジルに命令を下した。
「すでに突入し、生存者を捜索中よ」
「応援を待て。これは命令・・・」
ジルは無線機を外して中へと進んで行った。
懐中電灯を切って、明らかに戦闘態勢でジルはドアを
開けて、銃を構えたまま即座に懐中電灯を再びつけた。

彼女は少し広めの部屋に入って、懐中電灯をつけたり、
消したりしながら常に銃を構えながら捜索していた。
明らかに歴戦を潜り抜けて来た事は、その様子から
理解できた。

ジルは懐中電灯で二階がある事を知り、階段に近づいた。
恐ろしさを知っているジルは、異常なほど警戒していた。
彼女は階段を上り切ると、電灯と銃を同時に構えたが、
何も居らず、そのまま進んだ。

まるで闇が敵のような部屋の中で彼女は一人で、進んで
行き、奥の部屋のドアを開けた。
まるで光を敵が嫌うように思えるほど、彼女は懐中電灯を
つけたり、消したりしていたが、壁に争った血の跡を
見つけて立ち止まった。そして再び警戒しながら部屋の中
を注意しながら見て回った。

部屋の奥の床に死体と思われる女性が倒れていたが、
警戒を緩めず危険を承知で近づいた。
ライトで照らしながら足で反応を確かめるために、
揺さぶってみたが、反応は無かった。

ジルは更に近づいて、うつ伏せの女性を仰向けにした。
血まみれになっていて、目は人間の死んだ目をしていた。

彼女は二階の他の部屋の様子を探りに行った。
右左を警戒しながら前に進んだ瞬間、
背後から感染者の男がジルに襲い掛かってきた。
その感染者の動きは速く、振り払ったがすぐに
また襲い掛かってきた。

力では敵わず、彼女は咄嗟に壁を蹴って
二階から一階まで落ちた。
落ちる一瞬の間を利用して、ジルは感染者を下にして
そのまま床に落ちると、足を胸に押し付けて、
頭に銃弾を三発食らわせた。

入口から一部隊が突入してきて、ジルの背中から銃を
突き付けた。彼女は両手を挙げて振り返った。
部隊長らしき人物が部下に「武器を下ろせ」と命じた。
「仲間だ」と言った男はクリスだった。
「なぜムチャを?」クリスが問うと、
「生存者がいたら一刻を争う」とジルは答えた。
「そうだが・・・」クリスの話を聞こうともせず、
ジルはそのまま進んで行った。

————————————————

ある施設の研究所らしきところで、
一人の女性が熱心に机に向かっていた。
「レベッカ」と背後からクリスは声をかけた。
「クリス、ジルは?」彼女は振り返りざまに尋ねた。
「昨夜の報告書を」と言うと、
レベッカは「なるほど。始末書を書いてるのね」
「そんなことより、昨夜のような事件が12件も起きてる」
クリスは検査済の死体であろう、奥の部屋にある
複数の遺体を見ながらそう言った。
「検査結果は?」
「皆、t-ウィルスの改変型に感染し、注射痕がある」
「嚙み痕は?」
「感染者に噛まれた人はいるけど、発症せず、
そのまま死んでる。空気や唾液で感染する
ウィルスじゃなさそう」

クリスは振り返り、レベッカに目を向けた。
「新しいウィルスか・・・首謀者を見つけ、止めないと」
「ジルは噛まれてないわね?」
「噛まれてないが、いつものようにムチャをした」
「気に入らない? あなただって任務に命を懸けてる」
「何?」クリスは明らかに少し驚いた様子を見せた。
「あの事件の後、彼女はようやく現場復帰。
ムチャするのは、あなたたちに申し訳ないと思ってるから」

「ウェスカーの洗脳で俺たちを襲った件か?
誰も責めてないぞ」
「彼女は・・・自分を責めてるの」

射撃場でジルは一人で的を撃ち続けていた。
彼女は近づくクリスに気づき、撃つのを止めて
「何か用?」とだけ口にした。
「この任務から外す。少し休め」
彼女は鼻で笑い「冗談でしょ」と言った。
「無理に復帰を急ぐ必要はない。
大変な経験をしたばかりだ」

「ウェスカーに支配されてた時、頭にあったのは
みんなを殺すことだけ。意識はあったけど、自分を
止められなかった。まるで悪夢だった」

「目が覚めても悪夢の記憶は残り、心を蝕んでいく」
「もう平気。心配無用よ」
と言って、彼女は水をクリスに投げ渡した。
「ピアーズって奴がいた。俺の後継者にと。
互いに信頼し合ってた。奴は俺と共に戦い・・・
俺を守って死んだ。
任務に出る時は死を覚悟することも必要だ。
だが、❝ムチャしても自分が死ぬだけ❞と考えるな。
正直、俺でも1人で突入しただろうが、
覚悟の上の行動とムチャの違いを考えろ。
戦いが長く続き、俺たちの心はマヒしてる。
だからこれからはもっと気をつけないと。。。
そのうち心まで失うことになる」

「無実の人々がウィルスで兵器にされてる。
その首謀者に心なんてない。そんな連中を
相手にするなら、心を殺しておくくらいで
ちょうどいい。少なくとも私はね」

「なあ、ジル。おい・・・」
クリスの心は、ジルの心には届かず、
ジルは再び銃を手にして撃ち続けた。
銃を手にする彼女の眼には、憎しみが籠っていた。


ひとまずここで区切ります。次のシーンに
レオンを翻弄した女性が映っていました。
続きは出来るだけ早く更新します。

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