夏目漱石の草枕からの熱力学第二法則の導出
原文:山路を登りながら、こう考えた。 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
分解してみます。
1. 智に働けば角が立つ。
2. 情に棹させば流される。
3. 意地を通せば窮屈だ
4. とかくに人の世は住みにくい。
熱力学におけるカルノーサイクルを考え、智を温度、情をエントロピーと対応付けます。
1 はB→C→Dの過程で、温度が下がり、エントロピーが減少し、排熱が行われることを意味するのではないかと思います。
漱石の文に即すれば、「冷静に考え、あいまいさを排すると、他人のあいまいさが許せずけんかになる」と解釈されます。
2 はD→A→Bの過程で、温度が上がり、エントロピーが増加することを意味するのではないかと思います。
漱石の文では「感情にまかせて”熱く”なると、取り返しのつかないことをしてしまいがち。」と解釈されます。
3 はカルノーサイクルでは、温度とエントロピーを同時に上げられないことを意味します。あるいは、得られる仕事の量は、熱源の温度差に依存することを表しています。
4 は温度差の少ないところで仕事をすることの辛さをうたっているのではないでしょうか。
つまり漱石は、「おれがしたい仕事をするためには、(漱石にとってのこの)人の世は温度差が少ない。」ということを証明したかったのではないでしょうか。
参考文献
青空文庫:草枕
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/776_14941.html
押田 勇雄・藤城 敏幸 (1970). 熱力学 基礎物理学選書7 裳華房
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