見出し画像

『居酒屋の失敗』第六章「宣伝広告とグルメサイト」2.グルメサイト(3)ホットペッパー「死闘編」後編


⑥担当者3人目

 そしてまたホットペッパーの新しい担当者が即やって来た。今度は20代半ばくらいの元お笑い芸人志望の男だった。相も変わらずマトモに相手にしていなかったのだが、その頃開店から初のノーゲスを喰らった事もあり、かなり精神的にも参っていた。そんな状況の時に来たその元芸人志望。今までの2人よりはマトモそうに見えた。

 そして彼自身もホットペッパーの営業で終わるつもりはなく、ここで人脈を作って自ら事業をやりたいと語るなど結構親近感が湧いてしまった。更に「本来8万のコースを半年間半額にするので一緒に頑張りましょう!」と言うのだ。
 「ぐるなび」効果も落ち着いてしまった中で、一応知り合いの店主にもホットペッパーの効果を確認し、本当に藁にもすがる思いで始めてみることにしたのであった。
 しかし、さすがホットペッパー。このまますんなりと事が進むハズがなかったのである。

⑦担当者3人目の最期と写真撮影

 結局ホットペッパーの有料サービスを利用する事になってしまった訳なのだが、なんとあろうことか、また担当者が変わると言うのだ。確かまだ1週間も経ってなかったと思う。コレには開いた口が塞がらなかったのは言うまでもない。とりあえず最初のページ作成まではその担当者がやるとの事で、早速ページに掲載するための写真撮影となった。

 しかし、事前に何を撮るか、カット数などを担当者と打ち合わせていたにも関わらず、実際に来たカメラマンに伝わっている内容が違っていた。打ち合わせよりカット数が少ないとの事だったので、当然抗議して打ち合わせ通り撮らせたが、まずここで不信感を持つこととなった。

 そして出来上がったページを見ると、そこには「素人か!」というくらいの仕上がりがチープな写真がアップされていた。色も彩度を極端に上げた、やたらハデハデしい感じ。ホットペッパーらしいと言えばらしいのだが。
この辺で早くもホットペッパーを始めた事に後悔し始めたのであった。

ぐるなびの宴会メニュー画像


ホットペッパーの宴会メニュー画像


ぐるなびの日本酒画像
ホットペッパーの日本酒画像


ぐるなびのしぞーかおでん画像


ホットペッパーのしぞーかおでん画像

⑧担当者4人目その1

 そしてやって来た新しい担当者。女性で歳は20代半ばくらい。とりあえず黄色いマニキュアはしてなかったのでよしとした。
 今まではサービス利用のための勧誘営業だったのだが、ここからは「一緒に頑張って売上を上げていきましょう!」的な付き合いに変わる。
 と書くと聞こえは良いかも知れないが、要は店の営業方針に色々口出ししてくるという事。そうなると歳が20代半ばという時点で既におかしいというのに誰しも気付くだろう。

 しかも、こちらは「飲食コンサルなんか死んでも頼らない」と思って店を始めているのである。そこにロクに外食もしてないような小娘が色々口出ししてくるのだ。結果がどうなるかは火を見るより明らかだろう。
 やれ「こういうメニューやりましょう」だ、「こういうコースをやりましょう」だ、クーポンがどうだ、とまあとにかくゴチャゴチャうるさい。

 それら提案の一つに「日本酒呑み比べセット」というのがあった。しかし、こちらは開業前からメリット、デメリットなど色々考えて「絶対にやらない」という結論に至っていたので難色を示したのだが、それでも執拗に勧めてくるのである。どうも日本酒推し店用のマニュアルらしかったのだが、決めるのはこちらだし、当然最後はキッパリと断った。
 しかし、そこからどんどん溝が深まって行ったのだった。

 と、そもそもこの辺が「ぐるなび」との大きな違いというか、「ホットペッパー」の大いなる勘違いなのだが、「ぐるなび」は、超高額な宣伝広告は積極的に勧めてくるモノの、基本的に店の営業方針には一切口出しして来なかった。
 しかし、ホットペッパーは、まるでコンサル業まで請け負っているかのような対応を勝手にするのである。そして、それが実を伴っているならばまだしも、前述の通りド素人にそれをやらせるというデタラメさなのである。

⑨担当者4人目の最期

 大体何がアタマに来るかと言うと、ホットペッパーは外食もロクにしたこともない若い担当者が営業方針に口出しして来るだけでなく、担当している店ですらも全く飲食しないのだ。それで何が分かるというのか。
 結局は、とにかく有料会員を増やして、後は人件費が安い若い奴らにマニュアル通りやらせとけば良いという魂胆がミエミエという事である。

 そしてある日、担当者からアホらしい提案がダラダラと出てきたので、いつものように全て断っていたら、それにキレた担当者があろう事かこう言い放ちやがった。

「だいたいこの店は日本酒かビールかどっちがメインか分からないんですよ!」

 自分は安定したサラリーマン生活を棄て、退職金をつぎ込み、借金までして自分の作り上げたコンセプトに全てを賭けて店をやっている。そのコンセプトが「日本酒とビール」であり、それが伝わるような店名にまでしているのに、そいつは事もあろうにそこにケチをつけやがったのだ。

 当然ブチキレて、その場で立ち上がると座っていた椅子を思い切り蹴っ飛ばし、

「何でてめぇにそこまで言われなきゃならねぇんだ!こっちがどんな思いで店やってるのか分かってるのか!」

と怒鳴り付け

「二度と来るなバカヤロー!」

とそいつを店から叩き出したのだった。

⑩担当者5人目とホットペッパーとの終焉

 4人目のアホな担当者を追い出してから完全にアタマに来た自分は、すぐさま営業所にクレームを入れたのだが、すぐに部長的な人間が謝りに来た。そこで「もう一切営業方針に口出ししないでくれ。担当者が店に来なくても良いから」と訴えたのだが、お詫びと改善のためか、ペーペーの担当者ではなくエリア責任者を担当にするので何とか収めて欲しいと打診があり、一応受諾して一旦落ち着いた。

 そして数日後に来たエリア責任者。彼も相当若く、30そこそこといった感じだった。一通り挨拶を済ませると、店の状況など教えてくれという。
 一切口出しするなと伝えているので教える義理も無かったのだが、「お宅のところは前任者から引き継ぎもしないの?」とイヤミを言いつつ、一応大人の対応でモロモロ話をしたのだが、そいつは、なんと!事もあろうに

「さっき外の看板を見て知ったのですが、ここは日本酒が色々あるんですね」

と言いやがったのである。

 相変わらずのホットペッパー、せめてそれくらい予習してこいよと思っていると続けて

「日本酒の呑み比べセットやりませんか?」

だと…

 そこで「もういい加減にしろよ!」とまたしてもキレて、その後は資料だけ持ってくるようになり、やがて店は閉店を迎え、ホットペッパーとの腐れ縁がやっと終了したのであった。

 とにかくホットペッパーはダメだ。少なくとも2014~15年当時では3大グルメサイトで最もダメ。ああいうのが外食をダメにする片棒を担いでいるのだと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?