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『居酒屋の失敗』第六章「宣伝広告とグルメサイト」1.宣伝広告


第六章「宣伝広告とグルメサイト」

1.宣伝広告

  開業にあたり当初宣伝広告を殆どやらなかったのだが、結局は藁にも縋る思いでグルメサイト含めて色々やったので、それぞれについて特徴、効果などを書いてみたい。
グルメサイトについては後述するとして、まずはそれ以外の宣伝広告について紹介する。

(1)無料地域情報誌

 内装工事が終わった店で開業準備をしていると、まず来たのが地域の無料情報誌。駅周辺で配っている新聞というか、広告のようなアレである。しかし、無料で配るくらいなので広告料や掲載料で成り立っており、意外と掲載料が高い。また、ターゲットをほぼ20~30代の若い女性に絞っていたため、店のターゲットと合致していないと効果はない。当然自分の店のターゲットとは違うので断ったが、一度だけ無料で「ニューオープンの店」として掲載してもらえるとの事でお願いしてみた。

 そして、結果だが、それを見て来たのは3組くらい。そしてもちろんリピーターにはならず。
 ところが、あろうことか店の名前を間違えて掲載するという大失態を犯したため、お詫びとしてもう一度無料掲載してもらった。しかし、その時は全く無反応であった。

 所感としては、掲載料は高いが、駅周辺で人海戦術にてターゲットを絞って配ってもらえるのは非常にポイントが高い。ターゲットが合うのであれば月3万くらいなら一考の余地はあるだろう。

(2)地域情報サイト

 次にすぐ来たのは、地域の情報サイト。立川は、かなり大きなターミナル駅だが、毎日新しい情報を提供するのはなかなか難しい。従って、しらみ潰し的に常に新たな情報を探し回っている感じで、かなり積極的に営業にやって来る。

 しかし、結論を先に言ってしまうと、ほぼ効果はない。食べログがこれだけ認知されている中、情報量が少なく更新も少ないサイトはやはり見向きもされない。どちらかというと商売というより地域振興的な色合いも濃いので、ボランティア的にやるのはありかといった感じ。ただ、こちらも掲載料はそれなりに高い。

(3)有料地域グルメ本

 これは一般的ではないのだが、立川辺りでは、不定期に居酒屋やラーメン屋などを中心とした廉価グルメの本が発行されていた。さほど効果は期待出来ないとは思ったが、常連だった店が以前載った事もあり、一度掲載した。

 内容は、編集室の覆面調査員が店に行った体でオススメ店を紹介するというもので、掲載される枠の大きさにより掲載料の違う広告誌。もちろん覆面調査など無く編集者が取材に来るだけで飲食もしない。
 5万で2枠分にて掲載したのだが、効果は全く不明で、ほぼ自己満足の世界だった気がする。

(4)有料半額クーポン本

① 初回の掲載

 結局のところグルメサイト以外の宣伝広告で最も効果があったのは、地域限定の有料の「立川パスポート」という半額クーポン本だった。これは約1,000円で期限付の色んな店の半額クーポン付の本を購入するというもので、初回出版には目玉として結婚式場利用の半額があったため、得する総額がなんと約40万だった。2,3軒利用すればすぐに元が取れるというかなりお得な内容となっており、知り合いの店主に紹介して頂き、立川での初めての出版の際に掲載してもらった。
 気になる掲載料だが、なんと無料。半額で特定の商品を提供する必要があるが、元々原価は30%前後なので赤字になる事はない。

 正直効果があるのか?は半信半疑だったのだが、初めての出版という事もあってか、信じられないくらいの反響があった。かなりの来客があって十分な宣伝になり、費用対効果で見れば計り知れないものがあった。
 掲載されると見本を1冊もらえるので、自分でも実際に何軒か使ってみたが、結構敷居の高い寿司屋のランチなどもあり、かなりお得だと感じた。

② 2回目の掲載

 初回が調子良かったので、次の出版も早々に決まり、それにも掲載してもらう事にした。しかし、今度は前回の3分の1程度の反響しかなかった。そして利用者も明らかに質が落ちていた。

 最初はやはり物珍しくて得体が知れないと思われたのか、1,000円の投資に腰が引ける人も多かったようで、普段外食に積極的に消費するグルメ趣味的な人達が多く利用したのかと思われる。その利用方法も普通に居酒屋を利用するうちの1品で対象商品をオーダーするといった感じで、明らかにクーポンをきっかけに気になった店に来てみたものと思われた。

 しかし、2回目は非常にお得だという評判が広がったからか、単に安く飲み食い出来れば良い的な、あまり質の良くないお客が多く、クーポン利用で店をはしごして、1軒でクーポン対象品のみ1品注文といった感じのお客が多くなった。
 そういうお客は、お通しを出して料金を請求すると明らかに困惑していた。「500円の商品の半額で250円だと思って来たのに、お通しを出されてその料金が500円なの?」という事である。結局それが原因で以後掲載をやめたが、トータルでは最も集客効果があったのは間違いない。

(5)パブリシティ

 結局のところグルメサイト以外で何が最も効果的な宣伝広告か?と言うと、間違いなくテレビや「東京ウォーカー」などのメジャーな情報誌に無料で紹介してもらえる、いわゆる「パブリシティ」である。
 特にテレビの影響力は大きく、これだけネットが発達した社会となっても未だにかなりの効果がある。やはり年代によってはネットを全くやらないので、広い世代にアピール出来るのはテレビが最強と言えるだろう。

 残念ながら恩恵にあずかる事は無かったのだが、実は一度だけ店にテレビの取材が来たことがあった。それがなんとフランスのテレビ局で、当時はシーシェパードがマスコミを賑わせていたため、きっとイルカの肉を提供している事での取材だと思った。
 しかし、実際来てみたら単なるお店紹介で、さんざん飲み食いしてちゃんと料金も払ってくれたので、かなり美味しい取材だった。そしてフランス人の酒の強さにも驚いたものだった。
 残念ながら閉店が決まってからの取材だったのだが、もっと早期だったらフランス人が多数来店していたかもしれないと思うと少し悔やまれる。

(6)番外編:使えない「●●●スタジアム」

 番外編として全く使えなかった媒体についても書いておく。宣伝広告に頼る場合、一発目と事前に決めて事業計画書にも記載していたのが「●●●スタジアム」という飲食サイトの運営会社が提供する広告サービスである。
 内容は、まずニューオープンの店として取材形式でサイトに紹介し、その情報を雑誌やテレビ局にファックスなどで流し、興味を持ったマスコミから取材を受けて広告宣伝的には一番美味しい「パブリシティ」で紹介してもらう事を狙うというものだった。

 そして、いざそのサービスをいざ頼んでみると、なんと初の利用者だというのだ。その時点でかなりイヤな予感はしたのだが、とりあえず取材を受けてサイトには紹介してもらったのだが、待てど暮らせど取材申し込みは全く来ない。結局5万も払ったのに取材申込み0。
 更に、取材申し込みがあったかの確認の連絡が当初はあったのだが、いつの間にかしてこなくなってそれっきり。予感は見事的中したのであった。取材申し込みが無いという事は、店に魅力が無かったのが原因とも言えるのだが、それにしても普通は1社くらいツテで用意しておくのではなかろうか。

 現在のサイトを見る限りは、そのサービスはやめたみたいだが、宣伝広告活動の出だしからつまずいたのであった。

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