見出し画像

【事実発掘!FACT JAPAN 47 NO.40】山形県

こんにちは。FACTの戦略プランナー鈴木です。

小6の娘がこの夏、学校の体験学習で魚沼に行き、米作り体験をする予定です。都会の子どもだからなのか、農業体験はとても楽しみらしく、「魚沼まであと何日」と毎日数えては心待ちにしています。ここ数年は何かと行事も中止・縮小されてきたので、何事もなく実施できるといいなと願ってやみません。

私自身の農業体験で思い出深いのは、中学校の修学旅行で訪れた山形県です。定番の京都や奈良ではなく、山形のサクランボ農家で収穫のお手伝いをするのが学校の伝統行事。子どもながらに「渋い修学旅行だな〜」と思っていましたが、あれから30年後の今になって思えば、なかなか先見の明があった気がします。

ということで今回取り上げるのは、言わずと知れたサクランボの名産地

「山形県」です。

山形といえばやっぱりサクランボ!

■やまがたチェリサポ職員制度

なぜ山形のサクランボ農家体験を「先見の明がある」と思ったのかというと、先日こんなニュースに目が止まったからです。
「サクランボ王国、繁忙期の“助っ人”は山形県職員 収穫の副業OK」
https://news.yahoo.co.jp/articles/8da6a5fe52ff0b572eece69f0b0680231e98c590

「佐藤錦」などの主力品種は6~7月に収穫期が集中することから、この時期は慢性的な人手不足。生産者の高齢化も進む中、作業が遅れ収穫しきれない農家もあったそうです。そこで山形県は2022年度から、人手不足解消の切り札として、サクランボの収穫に限り県職員に副業を認める「やまがたチェリサポ職員制度」を開始。申請して許可を得ればアルバイトとして収穫作業に加われる制度で、都道府県単位で一つの作物に限定して副業を解禁しているのは、山形県が全国で初めてだそうです。

やまがたチェリサポ職員制度

このニュースを見て、昨今話題の「副業」という観点からの大きな可能性を感じました。今はサクランボ農家限定、収穫時期限定、県職員限定の制度ではありますが、もっともっと概念を多様に拡張していけると予感したからです。

■そもそも副業って?

厚生労働省による促進もあり、副業を認める企業も増えています。「複業」「兼業」「多業」「ダブルワーク」「マルチワーク」「サイドビジネス」「パラレルワーク」など呼び方は様々。江戸時代、給与が少なく不安定な下級武士が生活のために「内職」をしていたことが、本格的な副業の起源とされているようです。

「週末農業」「週末林業」「週末漁師」という概念も広がりを見せています。他の仕事で生計を立てながら、農業を生活に取り入れるライフスタイルは「半農半X」と呼ばれています。「農業はそんなに甘くないよ」との声もありますが、この流れはもっと加速していくでしょう。

  • 本業以外の所得を増やせる

  • 本業を持ったまま別の仕事でスキルを磨ける

  • 本業で収入を得ながらキャリア形成や起業の準備ができる

などなど、副業のメリットは世間で論じられていますが、いずれにしろ「個人的意義」が強調されている気がします。しかし、ここにもう一つ別の「社会的意義」を付加したのが、「やまがたチェリサポ職員制度」なのだと思うのです。

■本業者を助ける副業者

「本業で困っている人と、副業で稼ぎたい人/技能を身につけたい人をマッチングさせて、win-winの関係を築く」ことが、「やまがたチェリサポ職員制度」の本質だと私は思います。つまり、所得増加やキャリア形成という個人的意義の他に、「本業で困っている人を助ける」という「社会的意義」を付加しているのです。

本業の人は、労働力不足や後継者不足の解消になる。副業の人は、仕事が確実にある安心感から技能習得の動機付けになる。昨今もてはやされている副業やリスキリングですが、何かを新たに学ぶ側にとって、「身につけたスキルを活用できる働き口が確実にあること」は超重要。稼ぐあてがないのに新しい技能習得に挑戦するのは、実際問題かなり難しいからです。そういう意味で、本業と副業の良い関係のモデルケースになれる可能性を秘めていると思うのです。

■伝統産業に拡張しよう

「やまがたチェリサポ職員制度」は、山形が誇る伝統産業にも拡張できます。例えば「天童将棋駒」「山形鋳物」「置賜紬(おいたまつむぎ)」「羽越しな布(うえつしなふ)」「山形仏壇」など。こういった伝統産業は、深刻な高齢化と後継者不足(職人不足)に悩まされています。伝統産業を絶やしてはならないと願う人は多いのですが、どれだけ気持ちがあっても、職人を目指すために今の生活のすべてを投げ打てる人は、そう多くはありません。だからこそ、「副業職人」が増えても良いはずです。気軽に職人を目指す環境やきっかけを作ることは、「本業職人」の助けにもなるはずだからです。

天童将棋駒
置賜紬(おいたまつむぎ)

■全国に拡張しよう

対象者の輪を全国に拡張しましょう。多様な働き方が求められる時代です。AIに取って代わられないために、手に職をつけたい願望が増えているという説もあります。本業は県外でITエンジニア、副業は山形で織物職人。そんな働き方を選ぶ人が増えてもいいと思います。また、業種や対象者を拡大するならば、その受け入れ時期はもっと多様になるはずです。本業さえ許せば、平日に副業をしたって良いはずです。受け入れ元の働きやすさ、あるいは交通機関の混雑などを考慮すると、受け入れ時期の平準化は必須課題です。

■オンライン学習を取り入れよう

副業の技能習得スピードを上げるために、オンライン学習を取り入れるべきです。もちろん、リアルな現場での修行が技能向上には最も重要。しかし、毎週現地に足を運ばずとも、リモートで学べることもたくさんあるはずです。既存のオンライン教育サービスと連携するなどすれば、それも可能だと思います。単純な労働力として副業者を見るのではなく、技能習得や成長の観点を含めて、副業者をサポートする。そういった仕組みは、やはり県単位の規模でこそ実現できると思います。

■「対のサクランボ」を副業のシンボルに

ところで皆さん、
サクランボといえば「2個1対」のやつを思い浮かべませんか?

2個1対のサクランボ

サクランボは1つの花芽から2個の花が咲き、同じ花芽から咲いた花は、軸の元のところでくっつく。その花が実になるので、2個1対になるそうです。ほらなんだか、本業と副業のペアに見えてきませんか?(笑)。しかも、1つの花芽の中に入っている花の数によっては、5個の実がつくことも。また、サクランボの品種はなんと世界で1000種類を超えると言われています。それも含めて、多様な副業のあり方を象徴しているように感じます。

■「チェリーワーク」という概念へ

サクランボ農家を助けたいとの想いから始まった「やまがたチェリサポ職員制度」。「本業で困っている人と、副業で稼ぎたい人/技能を身につけたい人をマッチングさせて、win-winの関係を築く」ことが、この制度の本質価値。副業の意義は、単に個人の収入を増やすことだけではない。本業で困っている人を助ける、地域社会を元気にするという、社会的意義もある。言うなれば、それは「チェリーワーク」と呼ぶべき、新しい副業のあり方。これからの本業と副業のサステナブルな関係性なのかもしれません。副業を始める人にも、本業で困っている人にも、一番手厚い地方都市、山形。

2つの実がペアになったサクランボを、副業促進のシンボルに据えて!

いかがでしたでしょうか?
次回の投稿は、副業のナレーターが本業を上回る日も近い?
声のイケメン澤邊からお届けします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?