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独断と偏見で語る元PSGの選手

こういう題材で「取り上げない」ことにはけっこう政治性が宿ると思っていて、語らないことも語れないと思って流すことも苦しい。カマラやドゥシェズやスタンブリやネネーやムサ・ディアビのことが個人的に好きじゃなかったとかでは全くないです。なので後々ひっそりと足してるかも。ディーニェ?誰だ、それは。


()内は在籍期間と現所属先。在籍期間については「ローン→そのまま完全移籍」の選手に関してはローン時点で退団にカウントしています。途中でローンを挟んでいる選手については明記していません。


サルバトーレ・シリグ(11-17、トリノ)

カタール資本時代(雑に11-12以降とさせていただく)最初の正守護神。クロスやFKへの対応がかなり怪しかったものの、セービングの「迫力(往年のブッフォンやユーゴ・ロリスが見せた、相手の攻撃のリズムを絶ち切るようなセービング)」という観点では結局シリグを超えうる人は今季のナバスくらいだと思う。いつぞやのPKストップは本当に声出た。開幕直後とかの全然重要じゃない試合だったけど。transfermarktによるとトリノでめちゃくちゃ失点してるらしい。現オーナー体制最初のGKということもあってサポーターからの人気は高いようで、個人的にも、キャリアの最後か、引退後でもいいので戻ってきてほしい選手。それにしても、加入して1ヶ月くらいでフランス語ペラペラになってたのはいったいどういう原理だったんだろう。


ケヴィン・トラップ(15-18、フランクフルト)

フランクフルトから来て、フランクフルトに去っていったカタール資本2代目正守護神。超絶男前。加入時は、シリグ好きだった筆者はもにょもにょしたものだが、いざプレーを観てみると「たしかにシリグよりいい選手だなこりゃ」「こいつが第3チョイス~当落線上のドイツ代表は絶対におかしい」と思った。…のだが(意図的だが逆説の連続ももにょもにょする)、なんか不安定なんだよな。イマイチ言葉にしにくいんだけど。ネイマールとかダヴィド・ルイスとか、なぜかブラジル人と仲良しで未だに時折互いのSNSに登場する。



マックスウェル(12冬-17、引退)

ブラジル出身らしい技巧派で、ド派手なキャリアを送っているのになぜか地味なLB。真面目そうなキャラだものな。イブラヒモヴィッチとはアヤックス→インテル→バルセロナ→PSGと長きに渡ってチームメイトであり親友。ピッチ内でも抜群のコンビネーションであった。イブラと同じような経歴なので当然各リーグで優勝しているし、なんならバルサ時代にCL制覇している。


チアゴ・モッタ(12冬-18、引退)

EURO12決勝での負傷退場が印象的だが、ある時を境に離脱とは無縁の選手になった。理由は不明。以降は所謂「ブスケツ・ロール」として、長らくチームの大黒柱となった。どれくらい重要な選手だったかというと、PSGはモッタの代役擁立にことごとく失敗し、最終的にアンカーというポジション自体の放棄(3-4-3や4-2-3-1システムの導入)、マルキーニョスのボランチ起用といったアクロバティックな解決策を見出ださざるをえなかったほどである。最終ライン前に鎮座し、散らしのパスによる「ズラし」とカバーリングに徹する姿はまさしく「仙人」であった。嘘である。わりとマリーシア系の選手でもあり、当時サンテティエンヌにいたFWブランドンだったかに試合後殴り込みに来られたこともあった。引退後は指導者の道に進み、PSG U-19では「2-7-2」(ほんまか?)システムを志向していたらしい。今季10月にジェノアの監督に就任したが、2ヶ月で解任された。



ヨアン・カバイェ(14冬-15、サンテティエンヌ)

ニューカッスルから加入したセントラルMF。当時フランス代表ではマテュイディ、ポグバの間でアンカー役を務めており、ブラン監督はそれをイメージしてモッタの控え(所謂「ブスケツ・ロール」)として獲得したのだと思うが、フィルター役が全然出来ず。最終的にはモッタとのポジション争いに敗れたことを認め、クリスタル・パレスに移籍。個人の感想だが、当時の万能型パサーとしてはトップに近い選手だと思っていたので、印象的な大コケであった。



グジェゴシュ・クリホヴィアク(16-17、ロコモティフ・モスクワ)

言わずと知れたポーランド代表の10番。スタッド・ランスにいた頃からそこそこ知名度のある良い選手だった(と思う)が、ステップアップ先のセビージャでブレイク。エメリの懐刀としてパリにやってきた。鳴り物入りで加入したものの、先述のカバイェとは逆に最終ライン前を横に広くカバーしながらパスを出すという役割を全くこなせず。ここ数年で明らかになりつつあるが、この「ブスケツ・ロール」っていうのは要求項目的にかなり難易度が高いのだろう。パスを出せるヴィジョン、カバー範囲の広さ、最終ライン前の「門番」を1人で務められるフィジカルと堅実さ等々…。ブスケツやフェルナンジーニョが如何にスゴいか。原因について本人は調整不足と述べていたが、ランス、セビージャ、ロコモティフやポーランド代表での活躍を観る限り、2ボランチでダイナミックに動くと輝く選手なのだろう。1季ローンでそのまま完全移籍したロコモティフではフランク・ランパードのごとくゴールを決めている。大の旅行好きのようで、オフシーズンを利用してよく旅行している(InstagramやTwitterの投稿から推測するに古代遺跡オタクあるいは世界遺産全般好きなのか?)。18年6月にはワルシャワにブティックをオープンした。ユヴェントスのシュチェンスニーと超仲良し。Sto lat sto lat…。


クレマン・シャントーム(06-15、レッドスター(仏3部))
なぜここまで陽の目を見ることがなかったのか、理解に苦しむ選手。ジェラードを参考にしていたという無尽蔵でダイナミックなプレースタイルはかなりのレベルのもので、当時チームにはマテュイディがいたとはいえなぜ完全に干してしまったのか?


ブレイズ・マテュイディ(11-17、ユヴェントス)

現W杯王者が誇る中核の一人。モッタを心臓に例えるなら、ヴェッラッティが血管、マテュイディは肺といったところか。所謂ダイナモの中では攻撃的なタイプ。イブラのポストプレーに合わせてガンガン飛び出していくプレーが印象的。


アドリアン・ラビオ(12-19、ユヴェントス)

思うに、彼を取り巻く複雑な状況は、完全に公にされてはいないのだろう。もちろん、それは彼という人格のプライバシーであるので断固として守られるべきだが。最悪の離別をしてしまったが、一人のファンの傲慢な意見としては、彼自身の言葉を聞きたい。たとえそれが母親による腹話術であったとしても、だ。


ジョバンニ・ロ・セルソ(17冬-18、トテナム)

アルゼンチン代表で今最もアツい選手と言っても過言ではないだろう。ロサリオ出身で、ロサリオ・セントラルの生え抜きMF。ディ・マリア限界オタク(同郷の先輩。メッシ、イカルディなどもロサリオ出身)。どう見てもインサイドハーフやトップ下でストライカーの衛星として動いて輝く選手だと思うのだが、えめりんご監督にはアンカーとして起用された。まあ、たしかに、対強豪で守備面がヤバかった以外はよっぽど酷いというわけではなかった。シュートセンスにも魅力がある選手なので、それにしても疑問は残るが。前SDアンテロ・エンリケ氏によるベティスへの謎多きローン放出を経て、今季からスパーズへ。今後の飛躍に要注目だ。


デイヴィッド・ベッカム(13冬→シーズン終了とともに引退)

富も名誉も欲しいままの貴公子が現役最後の地に選んだのは、華の都であった。メディアでは「流石にもうヨーロッパではやれないだろう」「愚かな金満クラブがネームバリューに釣られた」ぐらいのことを言われていた記憶があるが、蓋を開けてみると、あら、不思議!「スタメン・ベッカムはメッシのマンマークについていた」。…何を隠そう、ベッカムはまだ全然走れたし、なんなら当時2ボランチの一角で守備力不足を露呈していたヴェッラッティと互角以上のスタメン争いを繰り広げてみせたのである。ヴェッラッティとベッカムが連続でKURENAIって10人になったエヴィアン戦はすごい笑ったもんな。他にも、イブラヒモヴィッチのゴールをアシストして、2人抱き合って喜んでいる姿も、メッシと対面した際の腰の引けた姿も、現役ラストゲームでの、交代でピッチを去る際に涙を流す姿…。全てが……。泡沫の夢の中を泳いでいるようで……、目に焼き付いてもう離れない、切り取った現実の一欠片のようで……。

ありがとう。ベッカム。


エルヴァン・オンジェンダ(13-17冬、キエーヴォ)

当時としては比較的貴重な、PSG生え抜きのウインガー/セカンドストライカー。遠く日本の地でカルト的人気を誇り、「オンジェンダ部」ムーブメントを巻き起こしている(仏メディアに取り上げられたことも何度かあった)。幼げで愛くるしい童顔から放たれる声はわりと太め。そもそもはじめに脚光を浴びたのはトロフェ・デ・シャンピオン、ボルドー戦での決勝ゴールで、その後は期待の若手として順風満帆のキャリアを送れているとは言い難いが、どこか「もってる」と思わせる選手。イブラのテコンドー・ヒールキック・ゴールをアシストした背面浮き球パスは語り草である。つまるところ、「オンジェンダ」は単なるネットミームなどでは断じてなく、我々は本気でスター候補生と期待していたし、「ルーマニア・リーグ最高の選手」としてキエーヴォ―「4大リーグ」―に帰還した今もその気持ちに変わりはない。



エセキエル・ラベッシ(12-16冬、引退)

通称ポチョ(稲妻)。12年夏の加入から退団まで猛威を振るったアルゼンチン代表の小兵テクニシャン。何が特長かと尋ねられると、一言では表現しにくいが、ボールを奪われないノウハウを熟知していた選手だったかな、と。あとは小柄ながらパワー十分。ポジションは違うが、同じくアルゼンチン出身のテベスとかが似たようなタイプかもしれない。昨年12月に引退。



ハビエル・パストーレさん(11-18、ローマ)

類い稀な攻撃センスと儚さでファンの劣情を煽る華麗なる(激エロ)ファンタジスタ。カタール資本時代最初の大型補強でやってきた1人で、アル=ケライフィ会長の大のお気に入りだったという。常に怪我がちで在籍期間の長さに反して活躍した時期が限られた選手だが、このタイプの選手に共通のムラっ気と本人の根本的性質にも起因するであろう自信なさげな雰囲気がさらにロマンを加速させてまた良かった。13-14CLチェルシー戦1stlegのゴールは今でも懐古されるスペシャルな一撃である。「アルゼンチンのカカ」という異名があるらしいが、絶好調だった13-14後半戦など、順足サイドMFとして起用したときが一番輝く気がする。12-13後半なんかは4-4-2の左サイドで活躍していたが。



ルーカス・モウラ(13冬-18冬、トテナム)

野心に燃えるPSGがマンチェスター・ユナイテッドなどとの競合を制してブラジルから連れてきた、快速ウインガー。ちなみに移籍金はたしか4500万ユーロとか言われていた。「いや、アホか。国外未経験の20歳に積む金額じゃねえだろ…」とドン引きしたことをよく覚えている。実はけっこうなペースでアシストを積み重ねていたはずだが、とにかくゴールが決められず、ディ・マリア、ドラクスラー、エンバペ、ネイマールとどんどん総合値で勝るウイングが加入してきた割を食った形に。最終的にはまあまあ点をとれる選手になりつつあったが、結局スパーズに移籍。なんかスパーズのレジェンドになっちゃったし…。


ケヴィン・ガメイロ(11-13、バレンシア)

カタール資本大型補強第一弾組の1人。なのだが、翌12年のイブラヒモヴィッチ加入を機に出場機会が激減。出場機会を求めてさらに翌年の13年夏にセビージャに移籍していった。とは言ってもイブラとの連携はかなり良く、「出れば決める」と言われるほどの得点力を見せてくれた。個人的には、未だに活躍の報を聞くと嬉しくなってしまう程度には愛着のある選手。



ズラタン・イブラヒモヴィッチ(12-16、ミラン)

通称神。人間でいうと今年で39歳。同い年にテニス界の神ロジャー・フェデラーがいる。先日のエル・クラシコでFKを蹴るセルヒオ・ラモスに対して、実況の倉敷保雄さんが「これだけの栄誉を手にしても尚、まだ自分が一面を飾りたいという気持ちがある」みたいなことを仰っていた。彼らのように第一線に立ち続けるには「俺が永遠に最強だ」という激情が必要不可欠なのだろう。テニス好きの友人がフェデラーを「テニス大好きおじさん」と呼ぶように、その執着は愛ゆえの飽くなき向上心によるものなのだと思う。人間として生きる上で、「最強になれる、そして最強の座に君臨し続けられる」こと以上の幸福はないのかもしれない。ただ、それはある意味で「選ばれし者」に付きまとう呪いのようなものだ。

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