福岡ダンスミュージックシーンの歴史と変遷を知る、またとない機会!(昨今の配信についても少々)
先日、Twitchの【Fabric.fk】チャンネルにて配信されました、『STANLLIE BEGINS CLASSICS』。
私の地元 福岡のクラブシーンにおいて、長きに渡りTRANCE・TECHNOシーンを牽引し、崇高な世界観を表現するそのプレイスタイルから「神」と称される、DJの大先輩にして生ける伝説 、DJ STANLLIE(スタンリー)さん。
近年では、楽曲制作にも意欲的に取り組まれ、長年、公私ともにパートナーでもあるDJ BARBIEさんとのユニット〔Kulage〕名義で楽曲をリリース。海外での評価も急上昇しており、現在でも国内外で精力的な活動を続けられています。
現在では、CDJでのデジタルプレイが主となっているSTANLLIEさんが、アナログでプレイ・かつ秘蔵のコレクションからCLASSICSを配信でプレイされると聞き、期待に胸を膨らませておりました。
内容については、実際にアーカイブをご覧いただくのがいちばんなので、ここでは触れませんが、とにかく「素晴らしい!」のひとこと。
※注意※
Twitchのアーカイブ保存期間は、最大14日間のため、ご覧いただけるのは、6/11(木)までなりますので、ご視聴はお早めに!
クラブ黎明期以前の、ディスコ時代からプレイされていることもあり、つい最近までは、DJ中にMCを挟むスタイルでプレイされていましたが、近年、本格的にTECHNOへと移行してからは、そのスタイルはしばらくの間封印されていました。
今回の配信では、DJ中に、曲の解説や、ご自身のルーツにまつわる話、福岡のクラブシーンの変遷とダンスミュージックの変遷を、ご自身の体験を交え、時系列にリンクさせたかたちで、MCで大いに語ってくださっています。
そのお話に、自分もどんどん引き込まれていき、その選曲もとにかく素晴らしく、「この曲懐かしい!」だけではなく、「この曲なんだろう?」という発見もたくさんあり、とにかくあっという間の2時間でした!
<ライブ配信における課題・その魅力を再度検証してみる>
コロナ禍において、既にDJプレイのオンライン配信は主流となり、多くのDJ・アーティストの方々が取り組まれていますが、個人的にも、大きな課題として感じていたことが、ひとつだけありました。
それは…必ずしもライブ(生)配信である必要があるのか?
という点です。もちろん、クラブのフロアを自宅で疑似体験できるという点で、このコロナ禍において、配信は、ひとつの表現手段として大切な役割を果たしているのは事実です。
DJ・アーティスト側も、VJなどの特殊効果を入れるなどして、魅せ方の工夫をされていますし、日進月歩で、その表現のレベルも格段に上がってきています。
しかし、たとえば2時間プレイをしたとして、その間、配信されている画面をずっと見続けるか?と言われれば、おそらく多くの方が「NO」と答えられるのではないでしょうか?
それは、むしろ当然の話で、現場でも、DJの手元を数時間ひたすら見続けているという人は、ほとんどいないと思います。(DJ KOCOさんなど、超絶テクニックを誇るDJプレイでは例外もあるかと思いますが)
あと、これを言っては身も蓋もないのですが…DJプレイだけのことを言えば、Soundcloud等でMIXを公開することもできますし、そのほうが、クオリティとしては高い音源を提供できると思います。
また、ライブ配信だと、時間の制約もあるため、その時間、仕事などでどうしても見れない、ということも出てきます。Twitch等では、アーカイブを残せるため、あとで観ることも可能ですが、そうなると、収録しておいてあとで公開…でも同じことができるため、「ライブ(生)配信である必要性」という点では、若干の疑問符がつきます。
だからといって、ライブ配信が無意味…と結論づけているわけでは、決してありません。
ライブ配信自体には、それ相応の価値が当然ありますし、アーカイブが残らない配信もあるため、「その時間でなければ楽しめない」という、ある種のプレミアム感も演出できます。
あと、ライブ配信では、チャット機能で、リアルタイムに配信者・視聴者どうしが気軽にコミュニケーションが図れる、という利点もあると思いますし、同じ時間に、同じ音楽をオンライン上で共有できるという、フロアでの一体感に似た感覚で楽しむこともできます。
しかし、「その時間だけ楽しめる」という特別感とは別に、やはり決まった時間でしか見られないライブ配信には、その魅力を最大限引き出すための、もうひと工夫やアイディアがあったほうがよい、と私は考えます。
今回のSTANLLIEさんの配信が、本当に素晴らしい!と感じた点は…
■配信に明確なテーマがあり、タイトルでそれが表現されている。
■普段のDJプレイ・スタイルとは全く異なるアプローチであり、その時点で興味をそそられる。
■ご自身のキャリア・経験を基に、時系列で音楽とストーリーが展開していくため、一瞬も聞き逃せない。
■なにより、お人柄がにじみ出ている、その語り口が素晴らしい!
今回、なぜこのようなスタイルでの配信をされるに至ったのか?まだご本人から直接お話を聞くことはできていませんが、近いうちに、ぜひお伺いしてみたいと思っております。
<オンライン配信を、更に魅力あるものへアップデートするために>
既存のDJライブ配信は、それはそれで必要である...という前提で。
クラブシーンとして、今後、更に配信をアップデートしていくために必要なことは...以下3点にまとめてみました。
❶必要以上に長すぎないこと
→これ、割と重要!長くても2時間程度に収めるのが吉。(オンラインフェス等ではその限りではないが、ひとり当たりの長さとしては、やはりそのくらいが基準になるかと。)
❷ストーリー性がある・あるいは帯番組として機能させる
→また観たい!と思ってもらうための工夫。上記❶とも関連してくるが、TVのように番組化すると、視聴者側のスケジュールをロックしやすく、継続して見てもらえるようになる。また、配信全体にストーリーを持たせることで、TVドラマのようなファンをつくることもできる。
❸普段とは違ったアプローチでの表現をすることで、その人のルーツ・人間性などが垣間見える
→配信は、身体性を伴った直接的なコミュニケーションではない分、これが視聴者の興味を引く重要なファクターとなる!繰り返しになるが、音楽だけなら、サンクラ等の他の配信方法でも代替できる。しかし、DJ・アーティスト本人のパーソナルな部分に触れられる機会は、特に現場においてはなかなか無いため、現場にはない「特別感」を演出できるのも、配信ならではの強み。
→少し話は変わりますが、その意味において、Podcast配信には、個人的にすごく可能性を感じており、既に、それを活用して、クラブカルチャーに関する啓蒙活動を行っている方もいらっしゃいます。当noteを通じて、【Fabric.fk】の活動に深い関心を持ってくださっている、東京在住の”NORIWTS”さんです。
※NORIWTSさんが配信されているPodcastはこちら👇
<すみません、ここまで書いておいて、大前提となることを言い忘れていました!>
この「配信をアップデートする」という話は、既存のクラブユーザーはもとより、主に、これまでクラブに行ったことがない・あるいは経験したことはあるが、たまに行く程度というライトユーザー層へ向けて発信していくことが前提にあります。
既存のユーザーの、音楽・DJプレイに対するニーズを満たす意味で、DJプレイ自体のライブ配信は、このコロナ禍においては、メインのコンテンツとして、ある意味、必要不可欠なものになっていると思います。
一方で、誰でも簡単にアクセス可能な「配信」であることを活用して、普段クラブミュージックにリーチしない層へ、いかにアプローチするかということも、並行してアイディアを出していくべきことであると、私自身は考えています。
私個人の例でお話しすると、仕事の同僚や、競合他社の方・取引先で仲良くさせてもらっている方などへ向けては、プライベートでDJ活動していることを公言していて、ありがたいことに、同僚はもとより、競合他社の方にも、イベント・パーティーへ遊びに来ていただいたことがあります。
しかし、残念ながら、様々な要因はあるにせよ、それはごく限られた数人の方たちだけで、大半の方々からは「クラブとか行ったことがないから、よくわからない」・「音楽詳しくないから、どう楽しんでいいか分からない」というお声をよく耳にします。
コロナショック以降、そんな方々と連絡を取り合ったときに、ふとDJ配信のことに触れると、「えっ、カミキさんのDJをネットで観れるんですか?それはぜひ観たい!」と、ほぼ百発百中で言っていただけますし、「どうやった観れるんですか?」というお問合せを、向こうから頂くことも少なくありません。
だからといって、私が普段やっているようなDJプレイを、そのまま配信で見せたところで、「ふーん、こんな感じなんだ。」というだけで、それ以降、何にも繋がらない…というのは、容易に想像がつきます。
そこで、そういった方々に観てもらうときに、どうすれば自分のDJプレイや表現を、より刺激的で魅力的なものとして伝えられるか…というのを、ここ最近ずっと考えてきました。
ひとつの手法としては、現在多くのDJが取り組まれている「VJ」を駆使した配信。これにより、画面越しでの見応えが、数十倍増すことは間違いありません。
しかし、本当にそれだけで良いのか?…長年、この問題と向き合い続けてきている自分としては、どこか釈然としませんでしたが…
そこで、先日のSTANLLIEさんの配信が、大きなヒントとなりました!
なぜ、その数名の方が、わざわざ時間を割いて、私のパーティーへ遊びに来てくれていたのかを、今一度よく考えてみました。
それは、もちろん「私のDJを一度は見てみたい」という単純な興味もあったと思いますが、それ以上に、来てくださったその数名は、普段からコミュニケーションがすごく取れていて、仕事の上の話や、お互いのプライベートのことについても、よく話をしていたことを思い出しました。
要は、自分で言うのも何ですが、「私」という人間性をより理解してくれていたからこそなんだと、今では思います。
普段のDJプレイで、自分の人となりを伝えることは難しいですし、フロア等で話をしていても、お互いのことについてゆっくり語り合い、理解し合うということは、特に自分が主催者・演者の場合は、なかなかその時間や余裕がありません。
そこで、私個人のことに限らず、「DJ・アーティスト個人の人間的な魅力に迫り、それを発信するための配信」というアプローチは、DJプレイと同様に、クラブカルチャーの魅力を伝えていくうえで重要なファクターであると考えており、【Fabric.fk】としても、Podcastや他の配信方法にて、そのアプローチをとりたいと思っております。
<追記>
これを書いている現在、福岡を代表するクラブ KIETH FLACK のライブ配信を視聴しておりまして、私も何度か出演させていただいてるKIETHの看板パーティーのひとつ【OPTICAL】の配信でも、現在大阪在住の元メンバーTOSHIKI君が、リモートで自室から出演。
「TELE TOSHIKI」と題して、メンバーのDJ中に、酔っぱらいながらワイプで出てきて、ひたすらメンバーと酒を煽りちらかし、次第に自分も酔っぱらっていくという、絵的にはかなりヒドイ感じではありますが…(笑)
彼の人間性をよく知るKIETHサイドの粋な計らいであり、元KIETHのスタッフでもあるTOSHIKI君へのちょっとしたイジリもあるのかなと(笑)。しかし、一見すると無機質になりがちなDJ配信に、この「人間っぽさ」が加わることで、配信がより生き生きとしたものになっていて、個人的にはすごく楽しませてもらっています。
当然ながら、配信そのもののクオリティは非常に高く、OPTICALメンバーのプレイも、コロナ禍の鬱憤を思いっきり晴らすかのような、素晴らしいプレイが続いております!
HPよりZAIKOチケット購入すれば、各イベント配信後72時間までアーカイブも視聴できます。ご興味があれば、ぜひご視聴ください!
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