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長見佳祐(HATRA)インタビュー「アルゴリズムと想像力で拓かれる衣服」試し読み|『faber! no. 2』特集「拡張する衣服」

この記事は、2023年8月13日(日)開催のコミックマーケット102で刊行する『faber! no. 2』の特集記事の試し読みです。

特集「拡張する衣服」
衣服は時代の変化に合わせ、そのかたちを変えてきた。
人々の生活様式や価値観に大きな変化が起こる近年、衣服の在り方もこれまでにはなかった新たな広がりを見せている。
今号のfaber!では、こうした時代に服づくりやファッションをテーマにした創作に取り組むつくり手たちを特集。
各々の実践とその背景にある思想に迫り、衣服の新たな可能性を探索する。

2010年からファッションブランドHATRA(ハトラ)を展開するデザイナーの長見佳祐さんは、今まさに服飾業界内外で多大な注目を集めている3DCADツールCLO(クロ)の活用にいち早く取り組んできた。
デジタル技術を創造的に活用することで新しい衣服の形を探求し続ける長見さんにインタビューを実施。
HATRAでの制作や外部のつくり手とのコラボレーションを中心にお聞きし、その実践と背景にある思想に迫る。


長見佳祐(ながみ・けいすけ) デザイナー
1987年広島生まれ。株式会社波取/HATRA代表。2006年パリでクチュール技術を学び2010年に帰国後HATRAを設立。近年はファッションデザインの傍ら、企業のブランディングディレクション、衣装制作、3Dモデリング技術を介したプロダクト設計など制作活動の幅を広げている。テクノロジーを経由して様々な分野とファッションを接続して生まれる、新たな人間観をリサーチする。著書に『CLO: DIGITAL MODELISM』(BNN、2023)

HATRA (はとら)
2010年設立。リミナル・ウェアを主題に、ポータブルで境界的な、空間としての衣服を提案する。現在では3Dクロスシミュレーションを始めとするデジタル技術の応用を通して、デジタル・フィジカルを架橋した身体観をリサーチする。また、バーチャルウェア・プロジェクト「NINE HATRA」、菊地成孔主宰のバンド「ラディカルな意志のスタイルズ」とのコラボレーション、文化庁MACC事業のための衣装製作など表現領域を拡張する。主な出展「Future Beauty ─日本ファッションの未来性」(東京都現代美術館、京都近代美術館、2012)「JAPANORAMA」(ポンピドゥー・センター・メス、フランス、2017)「Making FASHION Sense」(HeK、スイス、2020)「甲冑の解剖術─意匠とエンジニアリングの美学」(金沢 21 世紀美術館、2022)「新しいエコロジーとアート」(東京藝術大学美術館、2022)
◯公式サイト: www.hatroid.com


—H‌A‌T‌R‌Aでは、2‌Dと3‌Dを行き来しながら衣服を設計できるC‌L‌Oというソフトを活用し服づくりをされていますが、何かきっかけがあったのでしょうか?
僕は趣味も兼ねてワンターフェスティバル(フィギュアやプラモデルといった造形物の同人即売会)に毎年行くんです。そこで2‌0‌1‌5年くらいからZBrushという3‌D彫刻ツールの紹介が始まって、フィギュアの造形方法が手作業から徐々にデジタル化していく流れが加速していくのを目の当たりにしました。フィギュアはファッション表現とは全く別物だけど、人型の造形という一点においては共通していて面白い分野だと惹かれています。だから、この流れはいずれファッションにも来ると感じました。
 そんな中で、元々存在だけ知っていたMarvelous Designer(C‌L‌Oの姉妹ソフト)が認知され始めているのを見て、フィギュアやゲームの世界と自分がつくっている服の世界をシームレスに繋げることができると感じました。このときはじめて自分事として受け止め、それがモチベーションになってC‌L‌Oを制作に取り入れるようになりました。

—長見さんは『CLO: DIGITAL MODELISM 3‌D‌C‌Gではじめる新しいファッションデザイン』で、C‌L‌Oのインターフェイスは実際のパターンメイキングの感覚に近いと語られていますよね。
パターンメイキングには、平面裁断と立体裁断という2つの方法があります。平面裁断では、折り紙の設計図を精度を高く描いていくような方法で型紙をつくります。それに対し立体裁断では、人体やマネキンの上に布を直接当てて、不要な部分を切り取りながら立体的に型紙をつくるんです。教育の現場ではこの2つがA面・B面のように分けて伝えられています。
 だけど、実際の服づくりの現場では2つが明快に分かれることはなく、スタートがどちらでその分量がどちらに偏っているかという話でしかありません。もっと言えば、一定レベル以上のパタンナーになると、平面的なパターン思考と立体的なパターン思考のどちらもが常に平行して頭の中で起こっています。C‌L‌Oの2‌Dと3‌Dをパラレルに操作する感覚はまさにそれで、はじめて触れたときは感動しました。

—C‌L‌Oは、初心者でも熟練のプロに近い思考ができるツールということなんですね。 『vanitas』のインタビュー(『vanitas』No. ‌0‌0‌7 特集=ファッションとジェンダー、アダチプレス、2‌0‌2‌1年)では、制作を楽しむことを「遊ぶ」と表現し「遊び抜く強い意志を持ちたい」と話されているのが印象に残っています。制作を遊びと捉える感覚はC‌L‌Oを導入してから生まれてきたのでしょうか?
感覚としては以前からありましたが、当たり前すぎて意識することはなかったです。では、なぜ公言するのかというと、C‌L‌Oをはじめとしたデジタル技術が効率化・最適化・時間短縮といった正しすぎるかたちで産業の中に入ってきていて、僕が感じている面白さとは少なからず乖離がありました。誰かが言っておかないと、ファッションの持つ豊かな可能性を矮小化するものになりかねないという危機感があって、遊びの側面を敢えて言語化するようになりました。もちろん効率化の側面もあっていいのですが、ものづくりの豊かさってほかにもあるはずで、単にいろんな立場があるべきだよねということです。

このインタビューの続きは……

カルチャーマガジン『faber! no. 2』で読むことができます。

faber! no. 2
1500円/A5変形/68P
2023年8月13日(日)コミックマーケット102
東京ビッグサイト東展示棟[日-東プ10a]

BOOTHでの販売も予約を受け付けております。
https://faber.booth.pm/


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