見出し画像

awai(fale)インタビュー「装いで広げるアイデンティティの選択肢」試し読み|『faber! no. 2』特集「拡張する衣服」

この記事は、2023年8月13日(日)開催のコミックマーケット102で刊行する『faber! no. 2』の特集記事の試し読みです。

特集「拡張する衣服」
衣服は時代の変化に合わせ、そのかたちを変えてきた。
人々の生活様式や価値観に大きな変化が起こる近年、衣服の在り方もこれまでにはなかった新たな広がりを見せている。
今号のfaber!では、こうした時代に服づくりやファッションをテーマにした創作に取り組むつくり手たちを特集。
各々の実践とその背景にある思想に迫り、衣服の新たな可能性を探索する。

服飾を専攻したのち、IT業界でAR、VR、MRといった事業に携わり、XR×ファッションの領域で活動を続けてきたawaiさん。
2021年にはファッションブランドfale(フェイル)を創設し、領域をまたいだ特殊なキャリアから着想を得たカスタマイズ可能な新しい服の仕組みを提案し話題を呼んでいる。
awai さんのこれまでの歩みとfaleでの服づくり、その背景にある思想についてインタビューを行った。


awai(あわい) デザイナー
文化ファッション大学院大学/ここのがっこうを卒業後、awaiとしてファッションブランドやVTuberの運営企業などへ、デザインとエンジニアリングを提供する事業を開始。
2017年からXRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を運営するPsychic VR Labにも所属。2021年にフィジカル、デジタル、ナラティブが融け合う時代の装いをデザインするファッションブランド「fale」を立ち上げ。

fale (ふぇいる)
2021年設立。ブランドコンセプトは、「spectral wear / スペクトラルウェア」。多層化していく社会で、フィジカル、デジタル、ナラティブを漂泊し、身に纏う人を拡張する装いをデザインする。
◯公式サイト: https://fale.jp


―awaiさんは文化服装学院だけでなく、文化ファッション大学院大学(B‌F‌G‌U)、ここのがっこうにも通われています。複数の学校に通われていたのには、どのような意図があったのでしょうか?
ここのがっこうは文化服装学院の1年目の時に知って、ダブルスクールで通うことを始めました。理由としては、日本のファッションの専門学校は基本的には縫製学校の延長で学校のカリキュラムが服づくりの技術中心でできていて、デザインを学ぼうとするとその部分は自分で考えたり、トレンドを教えてもらうしかなかったんです。デザイン面をしっかり学びたいと思ってるときに、ここのがっこうがセントラル・セントマーチンズを首席で卒業された「writtenafterwards」の山縣良和さんが主宰し、アントワープ王立芸術アカデミーを首席で卒業された「MIKIO SAKABE」の坂部三樹郎さんが講師で参加されていると知り、海外のやり方でファッションデザインを学べそうだと思いました。文化服装学院では縫製や服のつくり方の面を学んで、ここのがっこうではクリエイションやアイデンティティの面を学ぶために通っていました。
 また、その当時は世界のコンクールに出すということがファッションを学ぶ学生の目標になっていて、そのコンクールはコレクションで出さなくてはいけなかったんです。なので、文化服装学院は本来は3年制なのですが2年で辞めて、B‌F‌G‌Uに移りました。B‌F‌G‌Uに移ることでコレクションを作る課題があったり、機材が自由に使えたりとコレクションを自分で制作しやすい環境だったんです。

—学生時代のお話を伺うと、ご自身のファッションブランドを立ち上げるという強い意志を感じます。しかし、卒業後何年かはファッションの領域で活動されていましたが、しばらくしてからI‌Tやエンジニアリングの領域に進まれました。その経緯をお伺いしたいです。
B‌F‌G‌Uを卒業した後、卒業コレクションを「I‌T‌S」という世界的に有名なファッションコンテストに応募して、セミまでは行きましたが最終のノミネートには入りませんでした。ですが、コンテストの審査員の方から連絡を貰って、雑誌『VOGUE ITALIA』の将来有望な若手デザイナーを毎年掲載している「VOGUE TALENTS」というページで紹介していただいたんです。あのV‌O‌G‌U‌Eに載ったら何かが変わるかと思ったのですが別に何も変わらなくて、そんなに甘いもんじゃなかったんですよね。僕の同期や先輩でもコンテストでグランプリを取ったり、ノミネートに入ったりした方も多かったのですが、そこからいきなりブランドを始めて展示会をしても売れるわけでもなくて、クリエーションとビジネスの間には乖離がありました。そんな中で、僕は広島から出てきてお金もなくバイトをしながら学校に通っていたので、東京生まれの実家暮らしで経済的に余裕がある状態でブランドデビューをする方もいる中で勝負するのも現実的に難しいと感じていましたね。
 もう一つ、ここのがっこうでデザインを学んでいた時に、自分ができること、自分がやる意味があることは何だろうと考えたんです。生まれ持った環境の中で強烈なアイデンティティがある人もいますが、それが見つからない人もいて、僕の場合も普通に日本で生活してきて人と大きく違うところがないんです。生まれ持ったものをベースに自分のアイデンティティや武器を探すのではなく、もう少し違う考えで新しいファッションデザインをつくれないかと。また、トレンドの焼き直しをどのように今っぽく見せるかというゲームが中心になっている現状のファッション業界の中にいて新しい服をつくることにも限界を感じていました。
 そのような問題を考えながら、入りたいアパレル企業もなかったので自分で活動を始めて、デビューする友人のブランドのパターンを手伝ったり、Webサイトをつくったりしていました。Webデザインはそれまでやったことは無かったのですが、お金を貰ってつくることで無理矢理覚えようとしていましたね。拙いながらもデザインしてプログラムも触っていく中で、ビジネス的な意味でも自分の武器にできそうだと思えたので、そういった技術を強化していきました。もちろんいきなりそれだけでは食べていけないので、深夜にめちゃくちゃバイトをしていたんですけどね(笑)。

このインタビューの続きは……

カルチャーマガジン『faber! no. 2』で読むことができます。

faber! no. 2
1500円/A5変形/68P
2023年8月13日(日)コミックマーケット102
東京ビッグサイト東展示棟[日-東プ10a]

BOOTHでの販売も予約を受け付けております。
https://faber.booth.pm/


特集「拡張する衣服」の他の記事の試し読みもぜひご覧ください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?