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007便 ありがとうのその先 行き


こんにちは!元客室乗務員の夏果です。

昨日、ちょっといいことがあったので、皆さんにお伝えしたいと思います。

昨日、スーパーへ行って夕飯のための買い物をしていた時のことです。

夕方の時間帯。そこそこ混んでいる店内。


しばらくレジに並んで、会計の順番が回ってきた時、私の後ろには4名の方が並んでいました。

自分の番になって気がついたのですが、私の会計を担当してくれたレジの方は研修中の方。年は一回り以上上の方とお見受けしましたが、とっても謙虚な姿勢で、一生懸命な様子。名札には、初心者マークと、ご自身で書かれたと思われるメッセージが。


「少しお時間がかかるかもしれません。すみません」(手書きの汗マークつき)


私は、研修中だろうが、ベテランだろうが、会計が5分も変わるわけではないだろうと思っているので、特にスピードという点を気にしたことが無かったんですが、その正直な言葉に微笑ましい気持ちになりました。

そして、カゴの中のすべての商品をレジに通した時、その方が、神妙な面持ちでこう言ったのです。


店員「お客様、私、気づいてしまったのですが・・・」


えっ!もしかして歯に青のり!?いやいやマスクしてるしな・・・


あまりに深刻な様子なので、こちらも身構えます。

店員「このニラ、交換したほうがいいと思うんです。ほらここ」


そう言われてよく見ると、私が買ったニラの束の中に1本だけしんなりとして茶色くなったニラが入っていたのです。

言い方!(笑)


大袈裟!


たった1本だけでしたし、別にいいですよと言おうとしたのですが、彼女は「少々お待ちください」と言って、サービス係の方を呼び始めました。

店員「お願いいたしまーす!」

しかし、ざわざわした店内。当のサービス係の人はこちらに気づかない。
今度は手を大きく振って、

「お願いいたしまーーす!!!」


・・・・


「あらやだ、聞こえないのかしら」(汗)


彼女は少し焦った様子で、私にも謝り、私の後ろに並んでいる方々にも謝りました。

私もなんだかいただまれなくなり、ニラはこのままでいいですと言おうかと考えました。

ですが、せっかく彼女が交換しようとしてくれている好意を無駄にしたくもなく、どうするのが正解なのか分からず、縮こまっていました。


「お願いいたしまぁぁぁあす!!!!」 


ようやく彼女の声が、サービス係りの人に伝わったようで、小走りで駆けてきた別の店員さんが、私のニラを取り替えてくれました。

ここまででも充分嬉しかったのですが、レジのその彼女は、新しいニラを見て心底ほっとした顔をしながら、笑顔で「よかった。このお店の自慢は、野菜なので。私も子供が小さいときには、このお店の野菜によくお世話になったんですよ」とおっしゃいました。
そして、抱っこ紐の中の息子に、優しく微笑みかけてくれたのです。


傷んだ商品を交換してくれた。それだけなら、そんなに珍しい話ではないかもしれません。でも、研修中の身で、きっと色々なことで頭がいっぱいな中、たった一本のニラの傷みに気づき、お客さんに文句を言われるリスクを負ってでも、声を出した、その勇気が単純にすごいと思ったのです。


私の後ろのお客さんに、嫌な顔をされるかもしれない。

私が「早くしなさいよ!」とキレる客かもしれないというリスクだってある。

それでも彼女は、傷んだニラを放っておかなかったのです。

1本だけ痛んでいるニラを私に売っても、彼女のお給料は変わらないし、しんなりしている所を下にしてカゴに詰めれば、私にバレることも、まずない。

それなのに、自分の労力と労働時間を増やしてでも、1人のお客のためにより良いサービスをしようとした。
この人は、このお店の店員としての職務歴は短いかもしれないけれど、プロだなぁと思いました。

接客のプロとは

客室乗務員は接客のプロだ、などと言われることがたまにありますが、私はそんなことを過去に1度も思ったことがありません。


職種に関係なく、「自分で考えて、主体的に接客をしている人」はみんなプロだと思っていました。確かに、接客にセンスと言うものも多少はあると思います。ただ、そんなものが与える影響は微々たるもので、本当に大切なのは、

「お客さんを、客という塊でみるのではなく、一人一人の人として見る力」なんじゃないかなぁと思います。


こんな偉そうな事書いてますけど、私、新人の頃は、バリッバリに



で見てました。


で、お客さんにも先輩にも怒られまくって、痛い目を見る中で、やっと気づいたことだったんです。それぞれの人を見るってこと。余裕がなかったんだなぁ。

ともあれ、先日の記事で、思ったことをその場で伝えると言う事について書いた私が、もじもじとお礼を言っている場合ではない!と思い、商品の袋詰めを終えてからもう一度その方の所へ行って、

「ありがとうございました。せっかく新鮮なニラをいただいたので、今日中に美味しくいただきます!」

と言いに行きました。
彼女が嬉しそうな顔をしてくれて、私も嬉しかった。


そして、彼女の優しさをきちんと知ってもらいたいと思い、商品を袋詰めする台に設置されていたお客様アンケートに、彼女の名前と今日のお礼を書かせてもらいました。彼女が私のために使ってくれた時間と労力を、私も自分の時間と労力使って返したかったのです。


やってやったぜ!


お客様アンケート書いてみたかった!

それも、良い内容を!


私の帰りの足取りは軽い軽い。


その「ありがとう」は誰のため?

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これ、私が彼女のためにした事のように思われそうですが、こういうことって、「自分のため」と言う側面も、多分にあると思います。

現に私は、初めて書いたお客様アンケートに胸が躍り、この声が、どうかお店の上の人に届きますようにと願い、彼女が良い評価を受けることを想像までして、こんなに気分が良くなっているのですから。


人に褒められると嬉しいけれど、人のことを素晴らしいと思ったり、それを口に出すのって、もっと嬉しいことなのかもしれないと思った出来事でした。

あんまり綺麗事言うと胡散臭くなりそうなので、普段は控えたいのですが、今日は書いてしまいたい。貰った優しさに対して、「ありがとう」を言葉や形にするのは、わくわくするし、楽しい。

あなたも、人に優しくしてもらったとき、

恥ずかしくても、

大げさだと思っても、

いつもより声を大きくお礼を言ってみませんか。その人の嬉しそうな顔は、あなたの気分をも嬉しくさせる力を持っていると思うから。


本当だったら、客室乗務員として働いていた時に、死ぬほど怖かった先輩Iさんのとんでもエピソードを語ってやる!と意気込んでいたのに、なんだか趣旨が全く違う記事になってしまいました。でもまぁ、嬉しいからいっか。

しかし、ニラを1束まるまる使ったことが無かった私。いつもは半束使って、残りは次の日に取っておくのですが、


今日は


このニラを、一本たりともしんなりさせてたまるか。
絶対今日中に食べてやる。

と謎のやる気を出し、

レバニラと、ニラと玉子のスープと、チヂミを作ったら、夫に


「おれ、今日の昼飯、レバニラ定食だったんだよね」


とか言われましたが、


知ったこっちゃないですよね。


有無を言わせず、食べさせました。


あーおいしかった。


というわけで、今日のところはこれにて着陸。
いかがでしたか?あなたの心が、ありがとうのその先の、ちょっと幸せな未来に着いていますように。
ではまた次のフライトで。

皆さん良い週末を!!

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