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明くまで話そう

空間(あくま):柔和な人となりをしている。どこか捉えどころのない人物。
      正体は、人間のふりをしている悪魔であり、
      人の願いを聞いて回っている。
      その願いをかなえるかどうかは、不明。

未来(みく):とても真面目な性格。そのせいで、いろいろな悩みを持つ。
       本来は、とても明るく話せる人物だが、今はどこか静か。

♂or♀ 空間:
♀ 未来:

=========================

未来(N):未来は、とても明るい。誰でも、何にでもなれる。
      そんなものは、大人の。
      それも、世の中を作った人が作った幻想だ。
      だって、どれだけ頑張っても、あがいても。
      救われない人が作られていくのだから。
     ・・・そう、私みたいな。

未来  :この高さから落ちたら・・・。死ねるよね。
     もう・・・疲れちゃった。
     私なんか・・・いない方がいいんだ。

(柵を乗り越える未来。深呼吸をしながら、感情を整える)

未来  :この手を離したら・・・。さようなら。できるんだ。
     何も、考えなくて・・・よくなって・・・。
     
空間  :いやぁ~いい夜ですねぇ~

未来  :だれ!?

空間  :あぁ、こんばんわ。
     私は、通りすがりの・・・あ、えっと・・・。

未来  :通りすがりって・・・こんなビルの屋上に?

空間  :通りすがりですよ?
     こう、無意識に歩くんです。テクテク・・・テクテク・・・
     そうして、この場にたどり着いたというわけです。

未来  :私を・・・止めに来たの・・・?
     やめたりなんかしないんだから!

空間  :止める・・・?何をです?

未来  :何をって・・・私の状況を見てわからないの!?
     
空間  :あなたは・・・転落防止の柵の向こう側にいて。
     ・・・そして?あれ?もしかして?飛び降りようとしてます?

未来  :・・・そう。そうよ!死んでやるの!
     この世界からおさらばして・・・

空間  :知ってますか?
     飛び降りってすっごい『しんどい』らしいんですよ?

未来  :・・・え?

空間  :こう、地面にたたきつけられるまでの瞬間あるじゃないですか。
     その間って、瞬間で済むんじゃなくて。
     30秒が5分、10分と長く感じるそうですよ?
     そして、その間・・・ずぅーっと後悔だったり、
     懺悔しちゃったりするんですって。

未来  :・・・そう、そう言って止める予定なんでしょ。

空間  :止めるというか、事実を述べているだけなんですがね。
     あ、首つりもしんどいってよく聞きますね。
     締まっていく間ずっと呼吸を求めてしまうので、
     苦しさが続くとか。
     絞首刑とやり方が変わっちゃうからダメなんですかねぇ。

未来  :なに!?あなた、何が言いたいの!?

空間  :私ですか?そうですねぇ。何が言いたいんでしょう?
     多分、人と・・・おしゃべりがしたいんだと思います。

未来  :なら、私とじゃなくていいでしょ。
     ほかのところに行きなさいよ。
     キャバクラでも、どこでも。
     話を聞いてくれるところはあるでしょ。

空間  :そうですね・・・。
     でも、私は無意識に動くことをポリシーにしているのでね。
     どこに行く!って決めてしまうと・・・。
     そう、私のポリシーが崩れちゃうんですよ。

未来  :あっそう、じゃあ私は放っておいてよ。
     これから、死んでやる人間なんて・・・。

空間  :知ってますか?

未来  :なに!?

空間  :死にたいって人の大半はですね?
     大体誰かに助けてもらいたい人の方が多いんですよ?

未来  :私が、助けてもらいたいって何時言ったのよ。

空間  :あくまで。そういう人が多いって話です。
     あなたがそういう人、じゃないかもしれない。
     それは十分わかっています。

未来  :じゃあ、放っておいて・・・

空間  :死にたいほど、つらいことって多いですよね。この世の中。

未来  :・・・私に、忖度してるの?

空間  :そんなつもりはないですよ。
     私はただ、感想をつぶやいているだけですから。

未来  :・・・そうよ。しんどいことばっかり。
     こんなに頑張ってるのに。努力しているのに。
     それなのに・・・誰も認めてくれない。

空間  :それはねぇ・・・、たぶん頑張り方が違うんだと思います。

未来  :どういうこと・・・?

空間  :人に認められる頑張り方と、人に嫌われる頑張り方って。
     あると思うんですよ。

未来  :それって、たとえば?

空間  :そうですね・・・。
     たとえば、釈迦力で頑張ってみたとするじゃないですか。
     すると、上司は認めてくれるかもしれない。
     ですが、同僚からは、
    『上司に好かれるためにやってる』
     なんて思われたり。

未来  :・・・うん。

空間  :そして、逆に『同僚に好かれよう』とする。
     そうなると上司の覚えは悪くなる。
     かえって『大して何もやらない奴』って思われる。

未来  :それは、確かに・・・あるかもしれない。

空間  :そうして、から回っていくうちに自分自身が、
     何をしていたいかがわからなくなっていく。

未来  :なに、私を見てたりしたの?あなた。

空間  :いえ?初めましてです。
     ただ、そんなこともあるだろうなーっていう。予測です。

未来  :そう。そうなんだ。

空間  :あなたは、とっても真面目な働き者なんですね。

未来  :そう・・・だったのかな。

空間  :知ってますか?
     働きアリって一部サボっている奴もいるそうですよ?

未来  :働きアリなのに?

空間  :そうです。
     グループの中にいるアリの中で、
     サボっている奴を排除したとします。
     すると、どうなるとおもいます?

未来  :全員、働き続けるんじゃないですか?

空間  :そう思うでしょう?
     ではなくて、実際は、別のアリがサボり始めるんです。
     つまり、アリの環境にはある一定のサボり魔が必要なのです。

未来  :でも、それって不公平じゃないですか。

空間  :不公平ですか?

未来  :だって、それは・・・。
     ほかの働きアリに仕事のしわ寄せが寄るわけで・・・。

空間  :と、思うでしょう。
     実はちょうどいいバランスになるんです。不思議ですねぇ。

未来  :え・・・それって。

空間  :おかしいと思うでしょう?でも、一旦俯瞰して考えましょう。
     その働きアリたちが、仮に。
     一斉にマックスの力で働き始めたと考えてみてください。

未来  :それなら、効率が高くなるんじゃ・・・

空間  :でも、そうなると100パーセントで働ける時間は短くなります。

未来  :・・・そう、なるんですか?

空間  :そうです。
     朝の9時から100パーセントで働いて、
     寝る間もなくいつまでも働けますか?

未来  :・・・それは。むりですね。

空間  :これは、アリでもおんなじです。
     マックスで働くことはできない。
     働けなくなったアリの代わりにサボってたアリが働き始める。
     ほどほどに働いていたアリはもうちょっと頑張って働く。
     そうして、アリの巣は回っているそうです。

未来  :でも、これはアリの話でしょ。人間は・・・

空間  :同じです。人間でも。
     2:6:2の法則ともいわれてます。

未来  :サボるって、良くないことですよね

空間  :一般的にはそうですね。
     ですが、いつまでもフルパワーで動ける人の方が、
     特殊なレアケースだと思いますけどね?

未来  :だって、頑張らないと人に迷惑を・・・

空間  :迷惑と感じるか、感じないかはあなたに関係するものなのですか?

未来  :だって、人に迷惑をかけると、トラブルの元ですし

空間  :それは、『あなたが勝手に』思っているだけで、
     トラブルの元だと感じている人はいないんじゃないですかね?

未来  :それは・・・

空間  :1つ、いいことをお伝えしましょう。
     あなたの欠点というやつです。

未来  :私の欠点・・?

空間  :すべてに全力すぎるんです。そして、それを全員に求めすぎる。
     だれも、求めていないのに。先入観でそう思ってしまう。
    『がんばらなきゃ』と。

未来  :それは・・・

空間  :でも、それはあなたの所為じゃない。
     むしろ、あなたに植え付けられた『呪い』の所為です。

未来  :呪い・・・?

空間  :そう。『完璧を求めないといけない』とされたこと。
     ありませんか?

未来  :・・・心当たりはあります。

空間  :でしょうね。そういった人を何人も見てきました。

未来  :でも、それは呪いなんかじゃないと思います。

空間  :れっきとした呪いですよ。
     人を『言葉で縛る』わけですから。

未来  :言葉で縛る・・・

空間  :大げさな呪術なんて必要ないんです。人を呪うのに。
     身近な人から、心に刺さる一言を言われるだけで、
     それは『呪い』になるのです。

未来  :そんな、ことで・・・

空間  :人間って単純なんですよ。意外となんにでも心を乱される。

未来  :そんなこと、考えたこともなかったです。

空間  :でしょうね。
     私も長年、いろんな人を見てきていますが、
     皆同じようなこと言いますよ。

未来  :あなたは、カウンセラーか何かなんですか?

空間  :ん~。それについては・・・。
     こっちに帰ってきたら、にしませんか?

未来  :え?

空間  :私の名前を聞いて「満足しました」で死なれても困りますし。
     それに、私はもっとあなたとお話をしたくなっているので。

未来  :・・・わかりました。

空間  :ありがとうございます。じゃあ、改めてお話、しましょうか。

未来  :自己紹介した方がいいですかね。

空間  :そうしますか?私は・・・そうだね。『あくま』と申します。

未来  :あくま・・・さん?

空間  :あくま、です。
     ビックリしますよね?こんな名前で名乗られたら。

未来  :ちょっと、びっくりかもですね。

空間  :漢字で書いたら『くうかん』と書いて『あくま』と読みます。
     
未来  :特殊な名前しているんですね・・・。

空間  :でも、案外苦労はしてないんですよ。
     ちなみに、あなたのお名前は?

未来  :あ、私は・・・『みく』って言います。
    『みらい』と書いて『みく』

空間  :いい名前ですね。
     ご両親は、あなたの将来を希望して、
     そんなお名前を付けたんでしょうねぇ。

未来  :そう・・・だと、いいですけど。

空間  :何か、遺恨でもあるんです?

未来  :まぁ、そうですね。さっきの話に近いというか・・・

空間  :なるほど?さっきの『呪い』の話ですね?

未来  :完璧主義者なんです。両親とも。

空間  :お二人ともですか。

未来  :全部、きっちりこなせないと気が済まない性質で。
     私にも同じように求めてきて。

空間  :あぁ、なるほど。

未来  :私は、それができて当たり前だと思ってて、
     世の中そんな人しかいないんだって思っているんですけど。
     それは・・・違うんですよね・・・?

空間  :私は、そう思いますよ?

未来  :そうなると・・・。
     私の考えてた・・・信じていたものが違うということに・・・

空間  :未来さん。それもあなたの欠点です。

未来  :え?

空間  :世の中、すべてが0か100かじゃないんです。
     40もあれば80くらいもあるんです。
     
未来  :つまり・・・どういうことですか?

空間  :さっき、信じていたものが違うって言いましたよね?
     貴方のご両親が言ってたことは、あってるんです。
     ただ、あなたにとっては合わなかった。ただそれだけ。

未来  :ちょっと、わからないです・・・。

空間  :かみ砕きましょうか。
     世の中の出来事を合ってる、間違ってる。
     善か悪かで二極化するのがよくない。
     と言いたいんです。
     
未来  :二極化ですか・・・

空間  :そうです。
     ご両親の言っていることも、ある意味では間違っていないし。
     私のいうことも、間違ってない。
     あなたの考えることも間違ってない。
     ただ、それが他人にとっては合わない。
     もしくは理解できないだけなんです。

未来  :そういうものなんです・・・かね。

空間  :そういうものだとおもいますよ?

未来  :私は、そういった考え・・・したことないかもしれません。

空間  :いろいろ、考えに触れていくといいかと。
     人の考えを受け入れていくことが、
     世界の広がりになると思います。

未来  :なんだか、哲学者みたいですね。空間さんって。

空間  :そうでしょうか?偏屈者とはよく言われますが。

未来  :その偏屈に私は・・・うん。
     なんとなくですけど、気づきを感じてますよ。

空間  :そうですか。なら、よかったです。

未来  :・・・ちょっと、空間さんのことも聞きたいです。

空間  :私の・・・ですか?

未来  :はい。何かさっきからいろいろ話を聞いてもらえたんで。
     お返しになれるとは思わないんですけど。

空間  :そうですね・・・。
     じゃあ、この話をしましょうか。スイーツです。

未来  :スイーツですか?甘党なんですか?空間さんは。

空間  :いえ、私は全く甘いものとか興味ないんですが。
     ふと思い立って、ちょっと試してみたんです。

未来  :へぇ・・・。どんなの作ったんですか?

空間  :この世で一番甘いケーキです。

未来  :一番甘いケーキ・・・。

空間  :ほら、甘い空間ってあるじゃないですか。
     こう恋人たちが、愛を伝え合う時間とか。
     その環境でケーキを作ったら、
     砂糖もいらないケーキが作れるんじゃないかと思って。

未来  :なんか、不思議なことをしてるんですね・・・

空間  :案外、うまくできたと思いますよ。
     お互いの感情が盛り上がったタイミングで、作るんです。
     すごいいいものができたと思うんです。

未来  :まだ、食べてないんですか?

空間  :食べようかなって思ったタイミングであなたに会ったので。

未来  :あ、それじゃあ悪いことしちゃいましたね。

空間  :いえいえ。
     その偶然で、未来さんとこうしてお話ができていますから。
     未来さんと会うのは、ある種の運命のようなもの。
     ・・・なのかもしれません。

未来  :なんだか、詩的ですね。

空間  :裏を返せば、空想癖とも言いますが。

未来  :こうやって、ネガティブに言い返すのも偏屈ですか?

空間  :そうですね。私の欠点です。

未来  :アハハ。自分で言っちゃうんですね。

空間  :もちろん。それが、私の良いところです。

未来  :本当に、空間さんって変わってますね。

空間  :変わってる・・・

未来  :あ、もちろん『いい意味で』ですよ?変わってて、面白いです。
     今までいた色んな人の中で、割と好感度高いかもしれません。

空間  :・・・・。
     他人から言われることがあまりなくって。
     ビックリしてしまいました。

未来  :そうなんです?

空間  :私はですね。
     生まれてこの方、悪いことばっかりしてきてるんでね。

未来  :えっ、そうは見えないですけど。

空間  :人は見た目によらないというものです。
     たとえば、私は本当に『悪魔』・・・デーモンかもしれない。

未来  :まさか、そんなわけ・・・

空間  :例えば、『悪魔のような人』という例えがありますよね?
     あれは、とても悪い人物を『悪魔』に例えるわけですが。

未来  :でも、実際に『悪魔』を見た人はいない・・・

空間  :そうです。
     あくまで『架空の存在』という認識で『悪魔』が、
     共通の理解の上で悪者になってます。
     『居るかもしれない』し、『居ないかもしれない』
     そんな悪の権化である存在が、悪魔。

未来  :そう考えると不思議ですね。
     見たこともないのに『悪者』にするなんて。

空間  :まぁ、キリスト教ではない宗教の神様を、
     『悪魔』に仕立て上げているっていう、
     『宗教上の理由』もあったりしますが・・・。
     それは、この際置いときましょう。

未来  :だんだん、難しくなってきました。

空間  :おっと、失礼。話を戻しましょうか。
     見たこともない『悪魔』が。
     もし、『私』であるならば、
    『悪魔』の定義は変わりそうですか?

未来  :・・・そうですね。
     私にとっては、空間さんは『いい人』ですから。

空間  :ありがとうございます。
     でも、人間には裏表があるものです。

未来  :人殺しでもしたんですか?

空間  :ん-。もしかしたら、そう・・・かもしれませんね。

未来  :えっ・・・?

空間  :冗談です。あくまで、冗談です。

未来  :なんだか、空間さんが捉えどころなくて、
     分からなくなってしまいました。

空間  :それも私が『悪魔』だからかもしれません。

未来  :・・・つまり?

空間  :私は、本当に『悪魔』なんですよ?

未来  :また、冗談ですよね?空間さんは、私を煙に巻こうとしてます。

空間  :ふふ、本来はここで、『冗談です』と逃げるところですが。
     今日は、気が変わったので本当のことをお伝えしましょう。
     「私は、本当に『悪魔』です」

未来  :え?それって・・・どういう?

空間  :架空の存在とされる『悪魔』ですよ。クツハラ ミライさん。

未来  :なんで、私の名前・・・。

空間  :言ったでしょう?私は『悪魔』だと。
     悪魔ですから、『人間の本名』くらい見通せますよ。

未来  :なにかトリックでも・・・

空間  :あなたは今さっき、自殺をしようとしていた。
     身分を明かせるようなものを持ってはいない。
     ・・・ですよね?

未来  :・・・そうですね。

空間  :私が悪魔である証拠を更に出すと・・・。
     どうやってここに、来たんでしょう?

未来  :・・・そこの。屋上扉で・・・あれ?

空間  :ここに来た時、あなた。
     あの扉の鍵、閉めましたよね?こちら側から。

未来  :どうやって・・・ここに?

空間  :飛んで・・・ですよ。
     貴方という人間を、偶然。たまたま。見つけたからです。

未来  :どうして・・・私に?

空間  :こればっかりは、なんとなくです。
     ・・・としか言いようがないですね。

未来  :・・・魂を取る。っていうことですか?

空間  :ああ、ご心配なく。別に魂を食ったりする趣味はありません。
     むしろ、それは人間の思う『空想上の悪魔』の趣味です。

未来  :じゃあ、私に近づいたのは・・・?

空間  :最初に言いましたよ?
     私は『人とおしゃべりがしたい』からここに来たんです。

未来  :おしゃべり・・・。

空間  :食べるつもりなら、当の昔にしています。
     魂を地獄に落とすならもっと、悪い提案をしているでしょう。
     そうしない理由はただ1つ。
     『私は、人間とおしゃべりをしたい』

未来  :えっ・・・。

空間  :悪魔ってね。孤独なんです。
     いっぱい居る様に思うじゃないですか。
     でも、悪魔という者は多分、
     片手で数えるくらいしかいないと思います。

未来  :なんで、そういえるんですか?

空間  :私ですら、会ったことがないからです。

未来  :会ったことがない・・・?

空間  :そう。長く、長ぁく生きて来たわけですが、
     これっぽっちも会ったり、見たりしたことはありません。

未来  :気づけていないだけ・・・とか。

空間  :そうかもしれません。
     私が、変わり者だから皆、嫌って出てこないのかもしれません。
     ですが・・・。

未来  :・・・じゃあ、空間さんも。私と一緒ですね。

空間  :え?

未来  :先入観に囚われている。そう言ったじゃないですか。私に。
     空間さんも、そうじゃないですか?

空間  :私が・・・?囚われている・・・?

未来  :だって、見たことがないんでしょう?
     そして、会ったことがない。
     私だってそうです。つまり、この場では100%の人間が。
     『悪魔を見たことがないんです』

空間  :私を『人』としてカウントできるのかは怪しいですが。

未来  :そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか。

空間  :じゃあ、そうしておきましょう。

未来  :私も、あなたも・・・。
     空間さんも、見てないなら。もしかしたら。
     『居るかもしれない』・・・そうですよね?

空間  :そうですね。・・・そのようなことを言ったような気がします。

未来  :そうなら、『居る』にかけちゃいましょう。
     ずっと、遠い。遠いどこかに。

空間  :・・・・。なんだか、人が変わったように感じます。

未来  :え?

空間  :さっきまで、この世の終わり。みたいな表情をしていました。
     あなたは、ついさっきまで自殺したいと思っていた。
     そうでしょう?

未来  :・・・たしかに。

空間  :なのに、今あなたは、私を励まそうとしている。

未来  :・・・そうですね。

空間  :なにか、心変わりがあったんですか?

未来  :・・・なんでなんだろう。
     自分でもわかんないですけど・・・。

空間  :けど?

未来  :多分、空間さんと、もっと話したいからだと思います。

空間  :フフフ・・・ハハハッ!

未来  :そんなに笑わないで下さいよ。

空間  :『悪魔』である私と『話したい』とは。
     笑わない訳にはいかないでしょう。
     ・・・けど、ありがとうございます。
     すこし、気が楽になった気がします。

未来  :どういたしまして。
     助けてもらった、『お返し』できましたかね?

空間  :ええ、できていると思いますよ。
     私のちょっとした『さみしさ』を埋めてくれましたし。

未来  :じゃあ、これでお相子ってことで。

空間  :いえ・・・、これはいけません。

未来  :いけないんですか?

空間  :そう。悪魔にもルールがあるんです。
     ・・・詳しくは言えないですけど。
     あ、そうそう。さっきお話した。あのスイーツ。
     やっぱり食べない方がいいです。
     実はね。ちょっとだけ食べてたんです。
     けど、人間の愛は甘ったるくて・・・。
     人間が食べきることなんてとても・・・。
     できそうにないですから。

未来  :え?それってどういう・・・?

空間  :それは企業秘密です。
     さて、ではそろそろ夜が明けます。

未来  :え、もうそんなに・・・?

空間  :ええ。ほら、見てください。空も白み始めました。 
     では、最後に聞きましょう。
     悪魔の私から質問です。
     『悪魔の私に、叶えてもらいたい願いはありますか?』

未来  :本当の『悪魔の質問』ですね。

悪魔  :ええ、そうです。

未来  :私の答えは・・・。

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