見出し画像

0405:(GaWatch書評編008)『デザインの学校 これからはじめるDreamweaverの本』

 ホームページ製作ソフトウェアの雄・Dreamweaver。その学習書として本書は私のニーズにとても合っていた。ただし、人を選ぶとも思った。

デザインの学校 これからはじめるDreamweaverの本[2019年最新版]
著:太木 裕子, 山本 浩司
発行:技術評論社 (著)  形式: Kindle版


■1.日本語のDreamweaver学習書の最新版

 amazonでDreamweaver関係の本を検索し発行日逆順にソートをすると、洋書を除き和書の中で一番最初に出てくるのが、本書だ。発行は2019/8/8、1年余り前になる。

 DreamweaverはAdobeのプロフェッショナル向けWeb開発ツール、平たくいえば「ビジュアルHTMLエディタ」だ。自分でホームページを作る上で、ソースコードとその実際の画面を見比べながら様々な設定作業を行う「HTMLエディタ」は、今や必須といえるだろう。次項で説明するように私がHP作成に熱心だった20年前は、まだHTML3.2で、テキストエディターでちまちま作成することもそれほどの苦労はなかった。しかしその後にCSSが本格導入され、HTML5の時代に突入して久しい。専用エディタなしで作るのは苦行のようなものだ(将来のエンジニアのためのトレーニングとしては有効とは思う)。

 一方で、20年前に猫も杓子もHP作成に手を出していた時期に比べて、現在はwordpress、ブログ、SNSとサービスが充実しており、情報を発信するのにいちいちHPを立ち上げる必要性は大きく低下した。このnoteだってそうだ。分かりやすいインターフェイスで、テキストを流し込み、画像を配置して、必要なリンクを貼れば、見栄えのいい発信物が完成する。

 その一方で、逆に官公庁や企業、法人など、オリジナルドメインのHPにより安定した情報発信を行うことで顧客サービスとともに信頼性を向上させることは当たり前になった(20年前はまだそうではなかった)。そうすると、そうした団体等の依頼によってサイト構築を引き受ける技術職の需要は十分にある。その中で更にユーザインターフェイスの利便性やデザインセンス、PCだけでなくスマホやタブレットへの対応など、技術力・デザイン力で競い合う状況が存在する。つまりDreamweaverは、他のAdobe製品と同様に、そのようなプロの利用を想定した高機能ソフトウェアだといえる。プロ用ソフトをハイアマチュアが使うのも、PhotoshopやIllustratoruなど他のAdobe製品との共通点だ。

 Adobeはサブスクリプション制を取り、ソフトウェアは随時更新される。それに対して学習書はいちいち対応して増補することはコスト的に不可能だ。電書なら印刷コストは掛からないが、著者の作業がそう簡単には追いつかない。だから、こうしたソフトウェアの学習書は一度発行されると数年にわたって使われる事が多い。

 それが、昨年発行の本書が今だにDreamweaver日本語学習書群の中で最新刊に位置づけられる理由だろう。


■2.私のHP作成歴と現在の状況

 私がパソコン通信を始めたのは学生時代の平成2年、理系の先輩に勧められてNIFTY-Serveに参加した。全国の見知らぬ人と、自分の趣味であったり専門であったりについて、とことんディープに話し合える。その魅力にはまった。今のひとたちはそれが当たり前なのだけれど、当時は本当に革新的だったのだ。

 やがて就職し、平成8年にインターネットに手を染めて間もなく、自分でもHPを作りたいと考えるようになった。上述のように最初はテキストエディターでHTMLを手打ちして、アップロードし見え方を確認しては、「うまく行った!」「あれなんかおかしいな」と一喜一憂する。その手間自体が楽しかった。だから最初はHTMLエディタなんて必要無いと思っていたけれど、サイトを複数運営し更新を重ねるようになると、HTMLエディタの効率性はどうしても必要になった。

 当時Macromediaという会社があった。webアニメーション作成ソフトFlashで大いに人気を博した会社だ。私も初期のFlashでいろいろと遊び、自分のHPに無駄なアニメーションを組み込んでいた。無駄is楽しい。その流れで、同じMacromediaのHTMLエディタを使い始めた──これが私のDreamweaverとの出会いだった。直感的にサイトを構築できるし、細かいところはHTMLを直接いじればいい。これは便利なソフトだなあ、と重宝したものだ。

 しかし、やがて仕事と子育てでサイト運営の余裕がなくなり、平成18年頃には手を引いた。MacromediaはAdobeに吸収されFlashもDreamweaverもAdobe製品として機能更新が続けられた。そして、一時代を築いたFlashは、もはやブラウザによるサポートもなくなり、たまーに古いサイトでFlashコンテンツを見掛けても表示されず切なくなる。それだけ時間が経ったということだ。

 そして今。私は家業のサイトを作らねばならない──いや「ねばならない」わけではない。「作りたい」のだ。平成15年前後に作っていて、平成18年頃に閉じたサイトは、その後もオリジナルドメインを維持して(維持費は自腹だ)きた。これをあらためて復興したいと思いながら、これまでは公務員としての日常があったため余裕がなかった。早期退職をした今、ようやくそのための時間を生み出すことがそれほど難しくはなくなったわけだ。

 しかし15年という年月は、サイトの仕組みも、Dreamweaverの機能やインターフェイスも、全く別の複雑なものに変えてしまった。そもそも昔はCSSなど使わなかったので、そこからの話になる。幾度かトライしたけれど入口で躓いたまま日々が過ぎていった。

 今年のうちにどうにかしたい。そう思ってAmazonで最新の学習書を選んだ。それが本書だ。


■3.本書の流れと適した読者

 多くの学習書と同じように、本書はDreamweaverを操作しながらミニサイトをローカルにひとつ立ち上げるものだ。図版は豊富だし、特に最初の方はくどいほど操作の手順を説明しているので、操作に迷うことはない。元となる記事のテキストデータや画像データはダウンロードして利用できる。

 最初はシンプルで歪なデザインだったものが、一手一手手ほどきを受け、みるみる整った姿に変化していく。ああ、面白い。素材をこんな風に磨いていくのだな。そのような喜びがあり、実は今日一日で丸々本書一冊をこなした。それだけに集中したならば半日(四時間)でも出来るだろう。

 上記のとおり私は昔のDreamweaverを使ったことがあり、HTML周りの仕組みもある程度頭に残っている。そして、リハビリのためのトレーニングをしたいと思っていた。

 そのような状況の人間にとって、本書はとても具合が良かった。サイトを元素材から完成形にまで一歩一歩磨き上げていく、その直線的な構造はまさに今の私が「まずは」欲していたものだった。本書を一冊とおして操作することで、このソフトの勘所のようなものはなんとなく掴めた。なので本書を終えた後、作りかけてうまく行かず断念していた家業サイトデータをいじってみた。入口のところはさっと整った。時間をかければ本書の内容をヒントに細部の調整も出来そうと感じている。

 しかし、本書は読者に経験を積ませる手引き書であって、良くも悪くも「参考書」ではない。ひとつひとつのHTMLタグがどういう意味を持つのかは、流れの中では最低限の説明しかなく、巻末に一応はまとめられている。しかし、作業と同時に理解を深めることは、想定されていない。「こうするとこうなる」は分かっても「なぜこうなる」の理屈の説明がかなり省略されているのだ。つまり、読者の基礎的な知識や経験を前提としたトレーニングブックなのだといえる。だから、私には適していた。だから、適さない人もいるだろうな、と思った。

 本書は標題に「これからはじめる」と冠している。これは「Dreamweaverの利用をこれから始める人向け」という意味で、正しい。「サイト作成そのものをこれから(ゼロから)始める人向け」では、決してない。そこがひとつ注意すべきだろう。

 一方で、世の中の入門者向けソフトウェア学習書は「そんな事は分かってるからもっと先を教えてくれよ」といいたくなるほど入り口を丁寧に解説するものが多い。さもなくば、いきなり中級以上の応用編で「まてまてよく理解できんのだが」と戸惑うか。どちらも今の私には適していない。

 考えてみれば、HTMLの基礎とか、目的に特化したハウツー情報は、ネットにいくらでもある。分からないことはそれを参照すれば済む。一冊の本の中にあれもこれも盛り込むのではなく、講師が隣にいてひとつひとつ手順を教えてくれるような経験型テキストに特化した本書は、ある意味では正解なのかも知れない。

 本書は私にはベストチョイスだった。ここから先は、別の逆引き的な本で試行錯誤しながら身につけていくとしよう。

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積148h08m/合格目安3,000時間まであと2,852時間】
上記のとおりDreamweaverで遊んでいたのでノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『交響詩篇エウレカセブン』第39~40話、39話は久しぶりの息抜き回。40話から世界の秘密に触れていくからね。『王様ランキング』第3話、冷酷に見えたヒリングが実は、という展開に初見の次男が「実はいい人だったのか」と反応。うん、とうちゃんも原作読んだときにそう思った。こういう展開が上手いんだよな。ベビンとアピスの戦闘、アニメーションとして見事に原作を補完している。『先輩がウザい後輩の話』第3話、サンタさん……。『青天を衝け』第24話、フランスでは薩摩と騒動、そんでその間に本国では大政奉還。大変だあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?