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0531:不実証広告規制合憲判決

 誇大広告を取り締まる景品表示法。その不実証広告規制は、文字どおり「実証されていない内容の広告に対する規制」で、消費者行政の強力な武器だ。

 通常、行政による不利益処分をする際は、行政側が処分対象者の違法性を立証する必要がある。そうでなければ、難癖を付けて「違法だ!」と決めつける暗黒社会になってしまう(どこやらの国みたいに)。だから、行政側がきっちりと違法性を指摘して行政処分をし、相手側に不服があれば行救済制度(不服審査・抗告訴訟)によって戦う道がある。その過程で行政の立証不足が判明すれば行政庁は敗訴の憂き目に遭う。そうならないように、十分な調査と論理を組み立てて不利益処分が行われる。

 不実証広告規制は、その原則を逆転させ、処分対象者側に立証責任を負わせるものだ。これは、日々大量に広告が氾濫する中であらかじめ具体的に「これは違法」という線引きを示すことが不可能である状況において、それでもなお誇大広告によって消費者を不当に誘引することの不適正を防止するための、いわば特例的規定であるといえる。

 逆に事業者側からいえば、とても恐い規制だ。自分では合理的根拠があると胸を張っていても行政が認めてくれなければアウトだからだ。もっとも、少なからぬ違反事業者は到底理屈ともいえぬ理屈で虚偽広告を行っており、まさにそうした広告を取り締まるためにこそ有効な手法といえる。では、不利益処分を受けてなお「合理的根拠はある!」と主張したい場合はどうすればいいか。行政救済制度だ。

 だいにち堂の健康食品広告が謳う内容に根拠がなかったとして行政処分(措置命令という)が下りたのが5年前。当初からだいにち堂側は争う姿勢を示していて、業界紙も業者側に立った報道を行っていた。その後の訴訟の進展は追っていなかったが、昨日、最高裁の判決が出た。事業者の敗訴確定だ。

 事業者は、今回の広告は不実証広告規制を適用対象外だとして二審まで争って敗訴が続き、最高裁では不実証広告規制そのものが表現の自由・営業の自由を侵害する憲法違反であるとして上告していたようだ。それに対する判決文は2頁あまりの簡潔なものだ。

「事業者との商品等の取引について自主的かつ合理的な選択を阻害されないという一般消費者の利益をより迅速に保護することを目的とするものであると解されるところ,この目的が公共の福祉に合致することは明らかである。」

 消費者行政の強力な武器である不実証広告規制が、立証責任を相手に負わせる特殊なものであるとしても公益性があると認められたわけだ。

 もちろん、だからといって恣意的に濫用していいものではない。上記消費者庁解説ページに「不実証広告規制に関する指針」が公表されており、この指針に順った運用がなされている。事業者はこの土俵の上で勝負できる広告を考える必要がある。

 この件は、消費者問題に取り組む川村哲二弁護士のブログで知った。更新は頻繁ではないが過去記事にも有益な考察があるので、消費者法に関心のある向きにはウォッチをお勧めしたい。

 あ、もちろん、小説「やくみん! お役所民族誌」でも不実証広告規制は活用するよ。香守家の物語の、おそらくはクライマックス近くで。

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積218h45m/合格目安3,000時間まであと2,782時間】
ノー勉強デー。週ナカ家業デーをこなして帰宅し夕食後、妻の布団(無人)に潜り込んだらあまりの気持ちよさに二時間あまり眠ってしまったのが敗因。いい匂い。みんな、パートナーの匂い、好きだよね?(父しゃん目線)

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『重神機パンドーラ』第1話、放送時に録り溜めたものをようやく視聴。あまり集中して観れなかったので雰囲気レベルだが、サテライト作品らしい魅力があるな。『王様ランキング』第20話、うー、本当に凄い。これだけシンプルにこれだけ心に響く物語を作れたら、表現者冥利に尽きるだろうなあ。『ハコヅメ! 交番女子の逆襲』アニメ版第9話、もう高値安定。『東京24区』第2話、家事の前日譚が示される。

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