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0916:書評抜粋/梨木香歩『西の魔女が死んだ』

今日、映画版『西の魔女が死んだ』を視聴した。……ふわああ、すごい。終盤おばあちゃんとの喧嘩の辺りからもう涙が零れて仕方なかった。主人公格だけでなく全ての役者さんが見事にハマっている。静かに感性を追う映像、演出も素敵だ。原作を読んだのはもう二十年以上前で正直あまり覚えていない。しかしこの映画が丁寧に丁寧に描くものは原作の鮮烈な印象を蘇らせてくれるように感じた。

以前書評を書いたような、と思って探してみたら、二十年以上前の同人誌掲載原稿に含まれていた。以下、1999年に執筆した当該箇所を抜粋掲載する。

 梨木香歩『西の魔女が死んだ』(小学館)は、そうしたファンタジーが人に力を与える様を描く優れた児童文学だ。主人公まいは中学入学後まもなく、他の女の子たちの陰湿な仲間意識に疲れ、登校拒否を起こして田舎の祖母の元にあずけられた。学校でも家庭でも自分の居場所を見失ったまいを、祖母は肯定し勇気づけ、そしてある夜、自分たちの家系は魔女の力を受け継いでいるのだと告げる。それからまいの魔法修行が始まるのだが、その修行とは「まず、早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」こと。豊かな自然の中での一ヶ月余りのまいの生活は、しかし、心をくしゃくしゃにする悲しい出来事で終わりを迎える。それから二年。祖母の訃報に駆けつけるまいを迎えたものは……。タイトルなどから予想される超常的な設定や出来事は、実は何もない。物語はごく日常的な風景の中でごく日常的な人と人との触れ合いを描き続ける。魔女や魔法や不思議な出来事は、祖母の思い出話の中だけで語られ、それが本当にあったことなのかどうかは何も示されない。そんな「魔法の話」を通して語られているのは、喜びや哀しみや怒りや慈しみなどの、人が生きるという事の根本に関わる情緒的経験である。祖母はまいに魔法というファンタジーを与える事で、自分の心の中に起きている出来事を見つめる目を育ててゆくのだ。この紛れもない傑作を是非多くの人に読んでもらいたいと思う。

 F式BOOK NAVI 第四回 幻想の掌

--------以下noteの平常日記要素

■本日のやくみん進捗
カクヨムで第一話(47)公開。うーん、ここ、どうなんだろう。ドラフト時点からほとんど修正してないのだけど、元々どうも据わりが悪い気がしている。動画を作るのはいいのよ、ただ、その内容とか前準備とか、描写がちっとも締まらない。後日きっちり見直ししないと。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積327h35m/合格目安3,000時間まであと2,673時間】
講義動画流し聴き、勉強時間に含めず。

■本日摂取したオタク成分
『西の魔女が死んだ』上記のとおり。『吸血鬼すぐ死ぬ2』第10話、今回もわろた。「ちんこ見る?」はやくみんで使うかどうするか迷っていたネタだ。文脈次第だな。『ヴィンランド・サガSEASON2』第14話、本当に凄い物語だ。まずもって原作の力、そしてそれを時間芸術のアニメーションとして見事に表現したスタッフの力。

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