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0353:公務員経験27年のおっさんが素で行政書士試験過去問に取り組んでみた結果

 たまたまTwitterで行政書士試験を受ける方に声を掛けられたのをきっかけとして書き始めた「司法書士と行政書士」が、えらく長くなってしまった。過去記事は以下の3回だ。

 昨日は特認制度(一定の公務員経験のある人が無試験で資格登録できる仕組み)について解説をし、同制度に一定の批判があることを踏まえて、「公務員が素で資格試験を受験したら、合格水準に達するか」という問いを投げかけた。今日はシリーズ最終回として、我が身で行政書士試験過去問に取り組んでみた結果を報告したい。


■1.準備段階

 今回は直近の本試験である令和2年度試験問題に取り組むこととした。まず過去問の入手が必要になる。

 司法書士試験過去問が法務省HPに掲載されているのと同様に、行政書士試験の過去問は、行政書士法4条1項の指定試験期間である一般財団法人行政書士試験研究センター(以下「センター」という。)のHPに6年分が掲載されている。

 ここから昨年度の試験問題を入手したが、なんとHPに(問題1・5・58~60については著作権の関係から掲載しておりません。)とあるではないか。後で分かったが、これらは長文穴埋めや文章順序の問題で、既存の文章が使われている。なので、著作権法第36条の規定を受けるわけだ。

著作権法
(試験問題としての複製等)
第三十六条 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 営利試験は2項で除外されるとして、公的試験は1項の適用を受け、「検定の目的上必要と認められる限度において」著作権者の許諾なく試験に用いることができる。事後に試験問題を公表することは、その「限度」を超え、許諾を要する。だから問題を丸ごと削除しているわけだ。

 だめじゃーん、これじゃ試しに何点取れるか分かんないじゃーん。

 仕方が無いので地元で一番大きな書店に足を向け、過去問を探した。何冊も見つかったけれど、受験するわけじゃなくて試しに1年分解いてみたいだけなので、一番価格の安い過去問集を選んだ。

 土日は家業デーなので実家に向かい、しばし家業を片付けた後で取り組むこととした。


■2.前提状況

 センターHPには、行政書士試験の内容について次のように説明されている。

試験科目と内容等
「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)
憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題し、法令については、試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題します。
「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)
政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解

 これに対する私の学習歴は、大まか次のとおりだ。

・某県職員として27年勤務し、この3月末で早期退職
・学部の専攻は法律・行政と無関係。公務員試験勉強は3ヶ月ほど通信講座に取り組んだ泥縄
・内地留学で13年前に行政法修士号取得、その後は体系的な学習はしていない
・司法書士試験は入門講座的なコース(伊藤塾のステップアップ編)を一周ざらっと終えたところ
・行政書士試験の過去問は今回が初見

 内地留学で探求した行政法知識は、今やすっかり錆び付いている。司法書士試験勉強とかぶるのは憲法、民法、商法だ。後は公務員経験で蓄積したものと、一般教養(読書好き)として蓄積したもので、挑むことになる。

 これが一般的な公務員と言えるかどうかは、正直分からない。法務知識という点では、上には上がいるし、下には下がいる。


■3.取り組み姿勢

 記述式は採点が困難と予想されたため、全60問中3問(300点満点中60点)は始めから除外することとした。残りの択一のみで勝負だ。

 解答は紙ではなく、エクセルへの入力とした。正答との照合と集計が容易だし、問題集を汚したくなかったからだ。正答はセンターHPにHTML表形式で公表されているものをデータ接続でエクセルに取り込み、整形した。もちろん、自分が解答した後の作業なので、カンニングは生じていない。

 本試験は3時間一気集中。でもそんなヘヴィなことは面倒くさい(おい)。概ね20問ずつで軽くコーヒーブレークを入れ、その間はストップウォッチを止めた。

 解答は第一問から順に行った。本試験の場合は、迷った設問に印を付けておいて、最後の残り時間でもう一度検討し直して決断するのが(少なくとも私の場合は)定石だ。しかし、それもまた面倒くさい(2度目のおい)。問題を読んで、解答をエクセルに入力して、次へ進む。最後まで到達したら、そこでお終い。

 以上により記述式を除く57問を解答し終えた所要時間は、1時間43分だった。


■4.採点結果

 行政書士試験の配点は次のようになっている

【配点】
五肢択一式@4点×54問=216点
多肢択一式@2点×4箇所×3問=24点
記述式@20点×3問=60点
合計=300点満点

 この配点に対する合格基準は次のとおり。

【合格基準】
法令等科目=244点中122点(5割)以上
一般知識科目=56点中24点(4.5割)以上
全体=300点中180点(6割)以上

 総合得点で6割以上取るだけでなく、法令等科目・一般知識科目それぞれに足切り点が設定されているところがポイントだ。

 さて、私の結果は……どぅるるるるるる(ドラムロール)。

【Fさんの結果】※法令等科目のうち記述式60点ノーカン
法令等科目=択一式184点中78点(4.2割)
一般知識科目=56点中48点(8.6割)
全体=240点中126点(5.3割)

 記述式が満点なら総合186点で合格基準を上回るが、記述式問題を眺めると満点を取れたとは思えないので、合格点には届かなかったと判断する。

 一般知識科目の得点率は高いが、そこは年の功だろう。法令等科目のうち、やはり錆び付いた行政法関係は半分以上失点していた。司法書士試験勉強で一周した筈の民法もボロボロで、ちっとも知識が定着してねーやと乾いた笑いが出た。逆に最近やったばかりの会社法周りは得点源だった。


■5.行政書士試験を解いてみた感想

 サクッと合格点を叩き出せていたらカッコ良かったのだけれど、そこまで甘くはなかった。しかし、少し勉強すれば行ける、という確実な感触は得られた。今後司法書士試験の学習をするうちに、自然と行政書士試験の法令等科目も合格ラインを超えていくだろう。

 この経験をもってすぐさま「特認行政書士制度は公務員の能力に見合っている/いない」と敷衍することは避けたい。ただ、少なくとも私自身は、将来特認行政書士として登録した際に仮に試験合格者から眉を顰められても、胸を張っていられると思った。

 今回のことで、初めて行政書士試験の内実に触れることができた。一般知識科目もあって試験範囲は幅広いが、捻った問題はあまり感じられず、基礎知識が物を言う試験と見た。知識がなくとも文意から正答にたどり着ける設問も複数あった(業務経験とリテラシーは必要)。司法書士試験はもっと捻りが効いてることを考えると、まず行政書士試験から学習を積んで後に司法書士試験に移行するという手法には、一定の理がある。行政法周りは司法書士試験範囲と重ならないが、公務員経験者であれば行政法は何かしら実務と絡んでくるものだから、特認年数未到達で受験を志した場合でも、勉強しやすいと思う。

 今年の行政書士試験日は11月14日。受験するみなさん、頑張って!

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積85h10m/合格目安3,000時間まであと2,915時間】
実績119分、本論編突入。ステップアップ編とはいろいろ勝手が異なるけど、面白い。T先生に比べてY先生は元が早口なのかな、倍速で聴き取りがたいところもある(慣れかもしれない)。条文を参照するようになり、六法を実家に置きっぱだったのでwikibooksを活用。実に便利だ。


■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『ガリレイドンナ』5~6話、貧富の格差の中で、幼き者も死ぬ時は死ぬ。ふわふわしてない物語作り。『孤独のグルメseason9』第1話、宮前平は妻が結婚前に住んでいた街。とんかつうまそー。それにしても本作も10年近くになるのか。元々原作コミック(谷口ジロー)が好きでドラマも観始めたんだけど、原作者久住さんがいるのでいくらでも続けられるんだな。『かげきしょうじょ』第11話、安定の面白さ。『月が導く異世界道中』第9話、面白い、けど、ちょっと展開の甘さはあるような。

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