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0930:心理圧が人を不正に走らせる

今日は枚方市職員二名の懲戒処分の報にしばし目を奪われた。一人は2億円余りの予算計上を失念してしまい発覚を恐れて原課からの要求データを削除した三十代係長、もう一人は事務が遅れがちだったため上司の印鑑を偽造して決裁処理を繰り返した五十代主任だ。

これまでにも幾度か公務員の不祥事について記事で取り上げてきたが、同じ不祥事でも横領や痴漢など個人的欲望を満たす事件については、特段心は動かない。しかし今回のような「類型」の事件に接すると、私は胸がぎゅっと苦しくなる。

みなさんにとって、彼らの行動は理解不能なものだろうか。実際に自分がやるかどうかではない。そのような不合理な行動に至る心の動きを、ありありと想像できるか。私は、できてしまうのだ。それに近い心の動きは幾度も経験しているから。

今回処分された人々は、上司・同僚に対して自分のミスをさらけ出すことに、極めて大きな心理的抵抗を感じていた筈だ。もちろん、そのストレスに耐えて周囲に相談し善後策を講じることが、社会人には求められる。それがどうしても出来ない時、高まった圧力は別の出口を求めることになる。それがデータの削除であり、印鑑の偽造だったわけだ。

連想したのは、風物詩のように繰り返し発生する、年賀状を配達し切れずに捨ててしまうアルバイトの事件だ。これも「配り切れません、どうしましょう」と上司に相談することに強い心理的抵抗を持つ人が、犯してしまう罪と考えている。

こうした心理に共感する私は、彼らは事件発覚前よりも発覚してからの方が心理的には楽になれたのではないかと推測する。不正を働いてまで隠したかった/避けたかった「圧力」が、発覚によって解消したのだから。

ストレス耐性の強度は、人によって違う。周囲に相談してリカバリするコミュ力も、同じだ。色々な人がいるのが組織であり社会であるならば、こうした事件は必ずいつかどこかで繰り返される。そのような前提で、対策にはふたつの方向がある。

ひとつは、不正不当な事務を早期に発見修正するために、チェック体制を強化すること。それは必要なことだが、事務の煩瑣化と業務量の増加を意味する。忘れてはならないのは、体制を厳しくすればするほど担当者の心理的圧力は高まり、逆に隠蔽に走らせかねないことだ。107名の死亡者と562名の負傷者を出したJR福知山線脱線事故は、ミスをした運転士に懲罰的日勤教育が行われていたことが背景にある。

だからこそ、もうひとつの方向──ミスを周囲に相談しやすい空気を組織内に作ることが重要になる。それがあれば、心理圧は正しく導かれ、不正が起きる前に組織としてリカバリを果たすことが可能になる。

私も現役公務員時代、ミスや遺漏に気付いた時はドキドキした。でもここはきちんと善後策をとらねばと思い、相談するようにしていた。ただ、一部の人からは、ミスや相談自体を非難され、一人で解決せよという態度を取られた。ミスをした立場上反論は控えたけれど、この人には人間集団管理の視点がないのだな、と残念に思ったものだ。

チェック体制と、人間関係。その両輪を整えることが組織を勁くすると、私は思うんだ。

……あ、意識してなかったけど、これ執筆中の公務員小説「やくみん! お役所民族誌」で書く価値あるな。ちょっと覚えとこう。

--------以下noteの平常日記要素

■本日のやくみん進捗
ノータッチ

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積328h13m/合格目安3,000時間まであと2,672時間】
講義動画を流し聴き(時間には含めず)。隙間時間に勉強リハビリで田中会社法を読み始める。38分だけだけど、タイムログが進んだのは数ヶ月ぶり。

■本日摂取したオタク成分
『フィギュア17』第6~8話、小学生の演劇にしちゃ演出に力入ってるな。『推しの子』第3話、ふわあやっぱすげえ。芸能界を描くシナリオの本物感。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第16話、こ、これもまた凄い。第2クール冒頭で第1クールラストのアレがなかったことのようにスカされた、それがここでこう来たか。物語全体の様々な種明かしをしつつ、おかあさんの狂気に周囲が巻き込まれていく。これ、超重要回だな。『どうする家康』第15話、関ヶ原での小早川秀秋の立ち位置に家康が立つという創作。歴史好きにはアウトかも知らんけど私は面白く観た。『コタローは1人暮らし』アニメ版第6話、コタローの重たい背景が次第に明らかになる。『愛してるっていっておくね』何気に観始めたけど叙情的過ぎて。

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