アダンソン

去年の秋、居間で同じ蜘蛛をよく見かけた。

踏んだら嫌なので、毎回お外に逃していた。

しかしそいつは、執拗に戻ってくる。頭にきて検索したところ、アダンソンハエトリという種で「室内のコバエなどを餌にする益虫」だとあった。

部屋の中が狩場だったのだ。悪いことをしたなあと反省した。

以降「アダンソン」と愛称を与えられた蜘蛛は、つまみ出されることなく、見かけるたびに「よっ」と一方的に挨拶するまでの仲になった。

今年も彼が来るのを待っている。

※短文バトル6「部屋」

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