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美緒48歳は何故「生きていけない」と泣くほど生きたいのか?

今年、2024年に流行したネットミームと言えば

"美緒48歳"は欠かせない存在だろう。

美緒48歳ラストシーン

これは榎本由美さんの漫画「セルフ・ネグレクト」に登場する「田南美緒」という女性の事である

彼女は30年間ひきこもりを続け
歩行が困難なほど太り
最終的には過保護に世話をやいてくれていた母親が死に、親戚にも見放される。

漫画の話は「配偶者なし、子供なし、生活能力なし」という文字と共に美緒の「生きていけないよおおお」という台詞で幕を閉じる


このラストのコマにインパクトがあったのか
今年2024年の秋にSNSで画像が流行し、たちまちネットミーム化した。


大喜利のような使い方がされる一方で
このネタが多くの反応を集める事になったのは
「他人事とは思えない」という気持ちを覚えたユーザーが多かった為でもある様だ


これは同じく今年2024年に「風呂キャンセル界隈」というワードが流行語として浸透した背景にもリンクしている。

「風呂キャンセル界隈」とは風呂に入ることを面倒くさがる、あるいは嫌がってキャンセルする人々を指す言葉であり

ネットで拡散されるや否や、たちまちテレビやメディアでも取り上げられる事が増え

この言葉が流行すると共に「意外にも世の中は風呂キャンセルする人口が多い」という現状が浮かび上がってきた。


美緒ほどの極端な重度の引きこもり、社会性の無さ、セルフネグレクトまではいかずとも

・風呂キャンセルしがち
・自分は社不(社会不適合)だと思う
・オタク気質で人付き合いが苦手
・外に出て遊ぶより家に引きこもっていたい


という現代人はかなり多いらしく

そんな中でこの"美緒48歳"は
まるで未来の自分を見ている様だ」と恐怖を覚えつつも共感を集めているようだ。


そんな美緒48歳について、私が少し疑問に思っているのが

美緒は、そのような絶望的現状に身を置きつつも
「生きていけない」と泣き叫ぶほど「生きたい」気持ちが強いのか?
という事だ。

何故「死にたい」ではなく「生きていけない」という言葉が出てくるのか私には凄く不思議であった。


本来であれば美緒の様な状況に置かれた場合
多くの人は自分の今まで歩んできた生き方や選択が間違っていたと自分を責めたりするものだと思うし

「自分なんて居ない方がマシだ」
「自分が存在するだけで人に迷惑をかけてしまう」
「自分なんて死んだ方が良い」


と思う部分が少なからずあるはずだが
しかし、美緒にその様な思考があるとは思えない。

「生きていけない」と嘆くほど
"そんな姿、状況でもまだ生きたい気持ちがあるのか?"と言いたくなる

30年間引きこもり続け、バケモノの様な容姿で
天涯孤独で、誰も手を差し伸べるのを嫌がるほど世間から見放された美緒は

いったいどこに、これ以上まだ生き続けるという原動力を見出しているのか?


思うに、美緒は深く物事を考え込む力が欠落しており、人間というより、本能的な欲求で動いてる"生存本能が強い動物"といったところだろう

危機的な状況にある自分を冷静に見つめ直すことができず、ただ「食べたい」「寝たい」みたいな衝動に従って生きて来た結果があの贅肉ダルマ体型に繋がっていると言える


環境や育ちによっては、自己反省や「死にたい」という抽象的な感情を抱く能力が育たないこともあるらしい。

美緒は母親に過保護に育てられたが故に、そういった感情が育たなかったのだろう

だから自分の現状を受け入れる力もなければ、それを抜け出す力もない。
ただただ、本能のままに「生きてる」のだ
いろんなものを貪り食って太ってるのも、ストレスの逃げ場がそこしかないのかもしれない。


だが、ある意味そんな「考える力がない」ことが、美緒にとっては救いになっている部分もある。
もし、もっと賢くて現実を理解できるなら今の自分を見てもっと苦しむはずなのだ。

自分を責めるという感情からも逃れられているのはある意味で幸せである。
自己認識が浅いから、現状がどれだけヤバいか気付けず「こんな自分はダメだ」と思わない分、生きてることに対する罪悪感も薄いのだ。

一方で、頭のいい人や感受性が強い人は、現実を直視しすぎて「自分が存在してるだけで迷惑だ」とか「この状況を変えられない自分なんて無価値だ」と、どんどん自分を追い詰め鬱になる傾向にある。

現代社会の若者はこの傾向が強く、考えすぎるがゆえに、うつ病になったり希死念慮を抱く子が多い。

皮肉なものだが、頭の悪さや鈍感さが美緒から「死にたい」という発想を奪い「生きていけない」という、誰かの助けを借りてでも
まだこの世に存在していたいという思考に繋がるのだと思った。

苦しむ力がないというのは、ある意味で最強だ。
逆に考えすぎる人間ほど、その賢さや感受性が自分を蝕む刃になってしまう。

奇しくも美緒から人間の生存本能について学ぶ事になってしまった。

現代社会を生きる人々は、美緒のような悲惨な末路を辿らぬ様、反面教師にしつつも

ある意味では美緒の"自分を責めずに図々しくこの世にしがみつく"ような動物的本能は多少見習っても良いのかもしれない。

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