読むべき本

 最近、古本屋とか本屋とかに行って買うだけ買って全然読んでないので、読むべき本をここに書いておく。
 読み終わったら追記して感想とかくっつけておく。
 新たに本を買ったときも、読むつもりで買った本であるならば、なるたけ追加しておく。
 俺が死ぬまでにはこのページから未読本がなくなっていることを祈る。


1. 『短編集 こばなしけんたろう 改訂版』 小林賢太郎

2. 『NOVA 2023年 夏号』

3. 『NOVA 8』☆2024/02/09 読了

 大森望氏が責任編集となったSFアンソロジー。
 飛浩隆「#銀の匙」「曠野にて」、松尾由美「落としもの」、片瀬二郎「00:00:00.01pm」、あたりが面白かった。東浩紀「オールトの天使」だけは、続き物の第四話にして最終話、とのことなので仕方なく読まずに飛ばした(つまり厳密には読了していない……NOVAシリーズの2、3、5をさっさと手に入れなければならぬ)。

 飛浩隆「#銀の匙」「曠野にて」は、Cassyなる記述支援システム(?)によって自らの行動・思考その他をぜんぶ「書き出す」ことができるようになった最初期の世界において、アリス・ウォンなる天才詩人が産まれ育つ過程を描く。
 わりあいわかりやすい言葉で難解な技術を描き出す文体が好き。この手の言語SFだと、テクノロジーが言語の領域を扱うことをひどく気色の悪いことのように描いてみたりすることが多い気がするが、その点フラットな視点から描かれていて、変に考えすぎることもなくすらすら読めた。「曠野にて」では、文章作成バトルとかいうややこしそうな展開を直感的かつ視覚的な情景に落とし込みつつ、起こる事象のスケール感まで明らかにしてしまう、ガジェットの組み立て方が面白かった。
 こないだ神林長平の「言壺」を読み、SF作家たちが言葉なるものに向ける謎の感情について考えたが、この作品もちょっと似ているかもしれない。
 「NOVA 1」に掲載された「白生の夢」の前日譚であると解説にあって、はて、「NOVA 1」は一年前くらいに読んだことがあった筈、と思って本棚から引っ張り出してみると確かに載っていた。内容は全然覚えていなかったので、読み返さなくちゃなぁ、とか考えつつぱらぱら流し読みしていると、アリス・ウォンの死ぬ場面が目に留まり、だいぶ気分が沈んだ。生まれたときから見守ってきた(?)人間が凄惨に死ぬのを見せられるのは悲しい。
 松尾由美「落としもの」では、主人公が海岸で眼鏡を拾ったところから思わぬ方向に思索が飛んでゆく。人間でないものの視点に立って見た世界を描くのはSFの常套手段だが、やっぱりそういうの好きだなと思った。懐かしげな雰囲気が好き。
 片瀬二郎「00:00:00.01pm」は時間が「停止」した世界に閉じ込められた男を描くホラーSF。突然わけわかめの状況に放り込まれるという点で「変身」じみた不条理感もあり、自分の置かれた状況を主人公が徐々に理解してゆくじっとりとした恐怖が好みだった。中終盤の展開はちょっとグロテスクすぎるかとも思ったが、それを経た主人公の心情の変化が前向きだったので読後感はわりと爽やか。

 山田正紀「雲の中の悪魔」は、カバーの袖の部分で「超高濃度本格SF」「長編10冊分のSF成分が凝縮された超弩級の脱獄SF」などと名指しで紹介されていた通り、おそらくこの本のメインを張っているだろう中編SFだったが、なるほどSF成分が濃すぎた。さまざまな物理用語が次々と飛び出すたび、あー、えーっと、これはあれで、えーと、あーと、きいたことはあるんだけどな、などと悩んでしまい、さらにはそれらを振り回すガジェットがわんさかと登場し続けるものだから、完全に脳みそがパンクして、七転八倒、寝落ちに寝落ちを重ね、苦悶の表情を浮かべながら読む羽目になった。「NOVA 8」を読むのにかかった時間の8割くらいはこの作品を読むのに使った気がする。仮にも大学で理科を勉強している身として、己の勉強不足とSF力(ぢから)不足を思い知らされ、悔しい!

4. 『NOVA 6』

5. 『百合小説コレクション wiz』

6. 『ゲイ短編小説集』

 おまえ百合小説読んだならこれも読めよォ! と言われて押し付けられた。

7. 『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』 アンドレ・ブルトン

 おまえ円城塔好きならシュルレアリスムやれよォ! と言われて押し付けられた。

8. 『大江健三郎自選短篇』 大江健三郎

 この分厚さで1400円なら安いだろォ! と言われて押し付けられた。

9. 『死』 ポール・ショシャール

   →関連?  『生命とは何か』 金子邦彦
      →関連? 『ストロガッツ 非線形ダイナミクスとカオス』 

10. 『シティ・マラソンズ』 三浦しおん/あさのあつこ/近藤史恵

 走る小説を読もうかなと思って買った。

11. 『あと少し、もう少し』 瀬尾まいこ

 走る小説を読もうかなと思って買った。

12. 『きみの友だち』 重松清

 学校の小説を読もうかなと思って買った。

13. 『ウは宇宙ヤバいのウ! 新版』 宮澤伊織

14. 『ヒト夜の永い夢』 柴田勝家

15. 『走馬灯のセトリは考えておいて』 柴田勝家

16. 『予知夢』 東野圭吾

17. 『掃除機探偵の推理と冒険』 そえだ信

18. 『一九八四年』 ジョージ・オーウェル

19. 『なめらかな世界と、その敵』 伴名練

 なめらかな世界と、その敵、は読んだ。
 ゼロ年代の臨界点、というタイトルを見て、ゼロ年代なんか知らねえよ……と思い、そこから先を読んでない。

20. 『金星の蟲』 酉島伝法

金星の蟲・環刑錮・ブロッコリー神殿、は読んだ。

21. 『ハーモニー』 伊藤計劃

22. 『プロローグ』 円城塔☆2024/01/31 読了

 円城塔といえばとりとめのないことをひたすら喋りまくった挙句最後のあたりにエモっぽい情景をばらまいて目くらましをしてドヒュンと逃げ去ってしまう作家である。この『プロローグ』は「私小説」とか「日記のようなもの」とかいうやつらしく、ジャンルの特性も相まって、そのような円城塔の特徴が極めて強く表れている。要するに、全体通してなんだったのかはよくわからない。「『エピローグ』を書いている裏で、円城塔はこんなことを考えていました」的なものとして読んだ。榎室南緒とかイザナミ・システムとか、『エピローグ』にも出てきた存在がちらちら顔を見せる。
 ラジカセを担いで浜辺を歩く男はもはやアメリカにはおらんとかいう話がもっともショッキングだった。ラジカセを担いで浜辺を歩く男のいないマイアミがどうしてマイアミだろう? それじゃオキアミとかわりゃせん。
 形態素解析システム「MeCab」が登場したのは懐かしく思った。高校二年のころだったと思うが、任意の日本語の文章を入力すると「クソデカ羅生門」ふうにして返してくる、というプログラムを夏休みの課題として提出したことがある。「クソデカ羅生門」とは、かの名作「羅生門」の本文に数多の強調語を挿入し、クソデカと化した怪文書である。

ある日の超暮方(ほぼ夜)の事である。一人の下人が、クソデカい羅生門の完全な真下で雨やみを気持ち悪いほどずっと待ちまくっていた。

 馬鹿みたいに広い門の真下には、この大男のほかに全然誰もいない。ただ、所々丹塗のびっくりするくらい剥げた、信じられないほど大きな円柱に、象くらいある蟋蟀が一匹とまっている。クソデカ羅生門が、大河のように広い朱雀大路にある以上は、この狂った男のほかにも、激・雨やみをする巨大市女笠や爆裂揉烏帽子が、もう二三百人はありそうなものである。それが、この珍妙男のほかには全然誰もマジで全くいない。

クソデカ羅生門

 文章を単語ごとに分解し、各品詞ごとにあらかじめ作っておいた「クソデカ強調語データベース」からランダムなものを挿入していく、というだけの簡素なもので、MeCabは文章を分解してクソデカ強調語を差し込む位置を特定するために使った。いまではこんなもの、ChatGPTに「これをクソデカ羅生門ふうにしてください」と言って終わりだろう。そこらへんの小学生だってできる。いまの円城塔が似たような連載を持ったら、ChatGPTと戯れて何かし始めるのだろうか?
 とにかく、こんなことを日ごろから考えて生きてるんならそりゃあんなもんも書くわな、といった本である。

23. 『四畳半神話大系』 森見登美彦

24. 『夢一夜・火星人記録』 北杜夫

25. 『告白』 湊かなえ

26. 『寺田寅彦 随筆集』 寺田寅彦

27. 『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』 高野史緒

28. 『猫は宇宙で丸くなる』



2024/02/01 購入分

29. 『ロボットには尻尾がない』ヘンリー・カットナー

30.『静かな終末』眉村卓

31.『果しなき流れの果に』小松左京

32.『零號琴 上/下』飛浩隆☆(上)2024/02/25 読了 ☆(下)

 怪獣が出てくる作品として勧められたので。
 文庫版上下巻。

(上)
 固有名詞の乱舞で頭がクラクラした。カタカナはまだよいとして、漢字だとすぐ読み方を忘れてしまうのでスムーズに読めなくなる。ところで、知らない漢字って虫みたいでちょっとキショいですよね。
 それはそれとしてすごくおもしろい。世界観は現実のそれから吹っ飛んでいるが、キャラクターたちのキャラが立っているので、それに引きずられる形でじわじわと吸い込まれてゆく。個人的には峨鵬丸が好き。
 スケールのでかい描写は圧巻。特に、この作品のメインテーマでもある楽器が演奏されるシーンは、文字から音は聞こえてこないはずなのに(そして、作中の描写としても無音であるのに)大音量の演奏が響き渡るコンサートホールにいるような、びりびりと痺れる感覚を覚えた。すげ〜。
 パロディネタが多いらしいがそこまで読み取れず。「フリギア」はプリキュアだろうか、「鉄靭」は鉄人28号だろうか、「美縟五聯」は、ゴレンジャー? いずれの作品も詳しくないのでどうとも言えぬ。
 「牛頭」たちは作中で「怪獣」とも呼ばれるけれども、ビジュアルは怪獣というより異形っぽい印象を受ける。

(下)
 下巻の大半は大假劇の上演(つまり、美玉鐘によって秘曲「零號琴」を演奏するシーン)から、それに伴う美縟滅亡までで占められている。
 上と共通した感想が多いが、とにかく各種描写のすさまじさには驚かされるばかりである。パロディについても、銀色の巨人「守倭しゅわ」だの巨大神像「五聯社ごれんじゃ」だのいう連中が出てきた辺りで、どうやら素直にわろておればいいらしいな、と了解した。
 固有名詞があまりにも多く、さらにその多くが漢字だったこともあり、終盤になるとさすがに混乱した。超迫力のシーンが連続するのはいいものの、それぞれがぶつ切りにされて直前の展開を打ち消しつつ新しい物体を引っ提げて矢継ぎ早に繰り出されるので、終いにはどれが何の話をしていて何がどうなっているのやらほとんどわからなくなってしまった。シンエヴァ観てたときの感覚がいちばん近い。それはそれでいいとしてパウル・フェアフーフェンには引導を渡してほしかった。
 とにかく激強(げきつよ)の描写力で有無を言わさず読者を引きずってゆく小説だった。ずるずると後日談を続けず、美縟が滅んでからはかんたんなエピローグだけくっつけて終わったのも良かった。

 最後に載っていた解説によれば、「牛頭」はゴジラ、「亞童」はアトムをモデルとし、これらは原子爆弾の衝撃を受けて日本で作られたコンテンツ、という共通点があるらしい(とすると「峨鵬丸」のデカ鼻は手塚治虫がよく描いてるアレなのかな)。そういう割には「牛頭」のデザインってゴジラっぽさゼロだったじゃんか、と思った。
 どうやらこれを読んだ私は原爆投下というトラウマに起源をもつことを忘れホニャホニャとSFを楽しんでおった状態から「目覚め」たらしい。へぇ。

2024/02/21 購入分

33.『玩具修理者』小林泰三 ☆2024/03/16 読了

 短編「玩具修理者」と長編「酔歩する男」を収録。生命と非生命の境界がどうこう、とか、波動関数がうんぬんで実在性がかんぬん、とか、理科の勉強をやっていてしばしば出会う、日常生活での常識や感覚から乖離した、あるいはそれを揺るがすような知識を、ギチギチと論理で縛り上げて恐怖と絡めて出してきたような感じ。

 特に「酔歩する男」が好き。もともと量子力学に対しては何かじっとりとした不快感を覚え続けており(暴言!)、SFとかで扱われていると「けッ」と思ってしまうことがあるのだが、その不快感をそのままホラーとして扱われると、きっちり怖い。
 時間的な地点を酔歩ランダムウォークしてゆく、というアイデアにはビックリしたが、それにとどまらず、別の方法によっても因果律と波動関数の壊れた世界の恐怖を突きつけ読者側の安心感にさえ手を伸ばしてくるのもまた、たいへん薄気味悪く、目眩を覚えた。常日頃「あれ、ここはこうだったのだっけ」となる全ての感覚の裏に潜んでこちらを伺ってくる。こういうSFをやってみたい。

34.『海を見る人』小林泰三

35.『赤いオーロラの街で』伊藤瑞彦

36.『七十四秒の旋律と孤独』久永実木彦

2024/03/16 借受分

37.『ない本、あります』能登祟

38.『鼻行類』ハラルト・シュテュンプケ ☆2024/03/21読了

(略)

39.『挫折を経て、猫は丸くなった。』天久聖一

2024/03/21 購入分

正確には19日~21日に旅行先で購入。その割には変な本とか買ってないな。

40.『幼年期の終り』アーサー・C・クラーク

41.『倚りかからず』茨木のり子

42.『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

43.『ローカル線で行こう!』真保裕一

44.『老人と海』アーネスト・ヘミングウェイ ☆2024/03/21読了

 アレクサンドル・ペトロフによる短編アニメ映画版を観たことがあったので、ストーリーはざっくり知っていた。
 巨大カジキマグロと戦う老人の描写の痛覚の描写が詳しくて、自分の掌まで擦り切れまくったような気がする。


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