見出し画像

勝井祐二×U-zhaan×原田郁子 ランチライブ 雑感

チケットが完売していた今回のランチライブ。俺は比較的早めに買っていたので特に焦ることもなく、いつもと同じような時間に会場である下北沢440に向かったんだけど、店周辺には開場を待つガッツリ前売組も、当日券が発売するかは未定という告知がされていたものの、ワンチャンスに賭けるべく列をなす当日ブッコミ組もすでに結構な人数がいることに驚いた。なによりいつも以上に客層が若い。常日頃から「発狂・悶絶・地獄・殺伐・鬼」の形容詞がチョー似合うようなライブばっかり行っている俺がおおよそ関わることを許されない眩しすぎる集団に底知れぬ恐怖を抱いていたことは内緒だけど。

入り口に掲示されている出演者が記載されている看板や、出番を待つ楽器が置かれたステージの写真を撮っている人も多く見かけたし、パスタをフライにしたオツマミ「とまらん棒」をガリガリかじりながら「やべえ、これほんととまんねー」って発狂している男の子の感じとかも含めて、開演前からみんなウキウキしているのが伝わってきてすごくいい雰囲気だった。

で、開演。
勝井祐二、U-zhaan・・・原田郁子!!
別にシークレットゲストでもなんでもなく、むしろ出るのを知っててここに来てるんだけど、やっぱり俺にとっては驚愕でしかない。だって郁子ちゃんだぜ。常日頃から「発狂・悶絶・(以下略)」な俺が間違っても対面することを許されない存在じゃん。実際にクラムボンのライブを観たことはないし(2010年のサマソニで観ようと思ってたんだけど、一つ前のたむらぱんでメロディ酔いしてしまって敵前逃亡した前科あり)過去に客演とかではお会いしたことはあるんだけど、ちゃんと観てしまうことで俺の全てが浄化死しちゃうんじゃねえかっつー意味不明な不安はあった。

それはさておき。
たしか1曲目が「charm point」だったかな。いつにも増してU-zhannの叩くリズムに気持ちが乗っかってるなー、飛ばしてるなーって思いながら聴いてたんだけど、これは曲が終わってから話してたことなんだけど、どうやら準備していたタブラのコードが「A C D E」の4つだったのに、曲中に「B」があったので慌てて取り替えたみたいなことがあったようで。あらかじめ決められていたセットリストを郁子ちゃんが無視したのかどうかはわからないんだけど、思いもよらないタイミングでの即興性を余儀なくされてしっかりと凌ぐU-zhaanが素晴らしかった。

その後だったか、郁子ちゃんが「タブラの音がよく聴こえなかったから、もっと叩いて。早く叩いて」みたいな無茶振り。挑発にのったU-zhaanがすげえ早いテンポを軽く披露するも、郁子ちゃん曰く「何も浮かばない(笑)」両者の気持ちがすれ違ったまま即興演奏になだれ込んだ。先手を取ったU-zhaanがまたしても早いテンポで叩き出す。異なるリズムをルーパーで三層に重ねたうえにリアルタイムで同期。40本の指が暴れ狂って創出した鬼極悪なグルーヴの僅かな隙間に、勝井さんがアコースティックバイオリンで勇猛果敢に突っ込んできた。おおよそポピュラリティーの欠片も見当たらない尖り狂った展開を受けた郁子ちゃんがどうするのかと思ってたら、

キーボードで・・・
ごっさファンキーなベースライン…Σ(゚д゚lll)

これがまた思いのほかコシのある低音で、音に俄然厚みが増してきた。ある程度の小節を費やすことで郁子ちゃんは尖り狂った展開を体内に取り込んでいたのかもしれない。そうでなくとも聴いているこちらの心はだんだん解れてきた、のを見透かされたのかどうかわからないけど、抜群のタイミングで郁子ちゃんったら、

はなればなれ 歌っとる…Σ(゚д゚lll)

ガチな即興がポップに染め上げられた瞬間を目撃してゾクゾクと震えた。例えるなら、「プロレスとはシュートスタイルを超えたものであり、相手の技を全て受け、なおかつ勝つという主義主張の下で成り立っている」ジャイアント馬場が提唱した王道プロレスそのものである。

弾いてみたいという理由で新大久保で買ったギターを構えて郁子ちゃんがフィッシュマンズの曲を演奏していたんだけど、どこか少し頼りない音に勝井さんがピチカートで優しく寄り添ってるのとかチョー萌えたし、終盤にはアルペジオを放棄して本体をぽんぽこ叩き出す郁子ちゃんの可愛さもヤバかった。

クラムボンやソロ活動をちゃんと追っていない俺が言うのも野暮いとは思うんだけど、郁子ちゃんの表現の仕方って不純なものが一切ないっつーか。気持ちと声(指や表情も含めて)が最短距離で繋がっているっつーか。郁子ちゃんそのものが音楽っつーか。なんかそんな印象を受けた。

アンコールは「バイタルサイン」ベースとドラムが肝であるこの曲をタブラとバイオリンでゴリ押し。やたら忙しいリズムを刻むU-zhaanと弓の毛をぶっちぎるほどの熱量で弾き狂っている勝井さん。そのど真ん中で歌う郁子ちゃん。ひたすら最高だった。

終演後、友達がU-zhaanのCDを買うというので先に外に出て待っていた。なんかサインも貰えたらしい。で、買って出てきたお客さんがみんな大事そうにCDを持って、見せ合いっこして、なんならカレーの匂いとかもちゃんと確かめてたりするのがすごく微笑ましかった。きっといい思い出になるんだろうな。喜びを他の誰かと分かりあう!それだけがこの世の中を熱くする!なんてどこかの誰かも言ってたし、いっそ440の前の通りの名前も変えたほうがいいんじゃねえのかなんて考えたりもするけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?