写真_2

FUJI ROCK '14 三日目 雑感

連日のように紫外線に殺られながら、年波のビッグウェーブに抗いながら、ひたすら「貪欲」の二文字を旗に掲げてわんぱくに野山を駆けずり回った今年のフジロックもいよいよ最終日。とりあえず肉体疲労がエグい。以下の動画を参照してもらえばわかると思うけど、期間中はずっとこんな感じで動き回っていたわけで。いっそ腰にポケットピカチュウでもつけとけば良かったなって思う。


※以下、俺が観たライブ。バンド名クリックで参考動画どーぞ。

downy @ RED MARQUEE

硬質なバンドサウンドが織り成す緊張と爆発の連鎖が赤い天幕の下で巨大な闇と混沌を生み出す。音を浴びて蠢くことしかできない美的センスや色彩感覚が皆無な俺を青木ロビンのボーカルが美しいほうへと導いてくれる。ライブ中はずっと拳をかたく握り締めていた。突き上げるわけでもなく。演奏が映像に命を宿して、映像が演奏に意味を添える。どさくさに紛れて俺は横からのぞける苗場の曇り空も足して今をねじ込む。秋山さんは涼しい顔してスパンスパン変拍子キメてくるし、マッチョさんのベースは「げいんげいん」鳴ってるし。裕さんのギターは空間をサディスティックにザックザク切り裂いてとんでもないことになってた。彼らを野外で観たかったとも思うけど、拡散されずに凝縮した世界観を体感できたこともすごくよかった。

Blueside of lonesome with Ozaki Brothers @ 木道亭

毎週末ライブハウスに行って爆音を全身に浴びながら「うぉぉぉぉぉ!!もっと来いやああああ!!」ってエモまってるのも楽しいんだけど、森の中で丸太に腰掛けながらのんびりと耳を傾ける音楽としてブルーグラスやカントリーというのもなかなかのもの。ときどき風とか吹き抜けちゃったりしてんの。ヤバいっしょ。日本のブルーグラスのレジェンドと言われている尾崎兄弟は、その歴史を知らない俺にとってはいつまでもモテようとしているかわいらしいおじいちゃんに見えたけど、演奏を始めれば弟(81歳)の声はよく出ているし、兄(83歳)のギターもツボを抑えていて小気味いい。バックを支えるフィドル、バンジョー、マンドリン、ウッドベースも楽しさが滲みでていた。いい気持ちのまま終わるかなと思ってたら最後にバンジョーのおじさんが、「本当はこういうことしたら怒られちゃうんだけど・・・実はCDをこっそり持ってきてまして・・・よかったらその・・・この脱法CDを・・・」って宣伝してたの超エモかった。

OGRE YOU ASSHOLE @ WHITE STAGE

エリアど真ん中でステージも緑も完全に視界に入れたうえで観たオウガのライブ。圧巻だった。ベースとバスドラの鬼の重低音がボディーブローのように淡々と襲い掛かってくる。苦しくなってとっくに顎さがってんのに、アッパーパンチをキメることなくひたすらボディー連打してくんの。展開のなかでツインベース+ドラム編成になった時なんて俺はもう泡吹いてダウンして嗚呼10カウント数えられてるな・・・でもかすかに出戸くんのか細い声が聞こえるな・・・死にたい・・・って白旗あげてた。下手したら木々の緑も養分吸われてんじゃねえか。サイケデリックなボクシング体験ごちそうさまでした。あと、PAさんグッジョブ。

JOHN BUTTLER TRIO @ GAN-BAN SQUARE

当日急遽ねじ込まれたインストアっぽいミニライブ。半去勢的なアコースティック編成。小さめな音に耳を済ませて輪郭を楽しむ。カントリー、フォーク、ヒップホップな感じをうまいこと落とし込んでいて感心した。曲によってはレッチリっぽさあったけどそれはご愛嬌。

THE FLAMING LIPS @ GREEN STAGE

1曲目から紙吹雪がドッカーン。次々に出てくるゆるキャラの出オチ感。巨大風船の中に入って客の上をもぞもぞ移動。ドリーミーなポップスにスペーシーな演出。穢れを知らない純粋なバカが懸命に世界と繋がろうとする美しい儚さ。ウェインの奇行が気づけばコール&レスポンスに発展する奇跡。想像してみてよ。雨が降ってる苗場の夜、煌びやかな照明でステージがビカビカ光ってて、派手な衣装のモジャモジャ頭が、空手の黒帯をもってるヨシミちゃんに、僕を食い殺そうとするロボットを倒してよって唄う光景を。素敵さしかなくね?俺にとってはこれが観たかった光景だったんだよ。

JACK JOHNSON @ GREEN STAGE

リップスが多幸感を大放出した後。雨もじんわり降ったままでやたら寒い。彼の音楽性から考えるとどう考えても不利な順番ではあったと勝手に思っていたが、ライブが始まってみれば全然そんなことはなく素晴らしいステージングだった。やたら曲がいいし演奏も手堅いしジョンバトなどのゲスト投入も熱かった。だがしかし!そんな感動をも凌駕するほどに身体が雨で冷え切っていた。連れもしんどそうだったので後のことも考えて途中離脱。ちなみに、彼の曲は苗場から帰っている道中に聴いていて入り方が格段に増した。車窓に流れる景色とか見ながら聴いてると、なんというか俺が主人公のロードムービーを体感しているような妙な気持ちよさが出てきたっつーか。

LUCHA VAVOOM @ PALACE ARENA

アメリカ経由のルチャドール集団によるエンターテイメントプロレス。リングが従来のものより遥かに小さかったし、選手のレベルもさほど高くはなかったけれど、純粋に楽しかった。プロレスをあまり知らない人が多くいる会場で見せるプロレスとして善悪の構造がはっきりしていて、空中戦で驚きを与えられるルチャ・リブレは最適だと思う。LUCHA VAVOOMの特徴としては試合中にテーマ曲が鳴った時にはその曲を使っている選手が攻勢に転じるという亜空間な演出があげられる。

あと、ゲスト参戦していた菊タローが素晴らしすぎた。えべっ○んの頃からよく試合を観ていた選手だけど、この枠組に入ると全ての面で次元が違う。司会、リングアナ、実況、全てを兼務しながらシングルマッチを戦ってるのもすごいけど、その試合内容がもうインサイドワークの権化っつーか。9分53秒の間に昭和と平成のプロレス、ルチャ・リブレの根本を余すことなく表現したうえでやっぱり負けるっていう究極的な菊タロー劇場だった。フジロックの最後を締めくくるのにふさわしい至高の試合。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?