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渋さ知らズという名の交差点にて

なんとなく気になったので今年行ったライブ本数を数えてみたら、10月1日時点で104本になっていた。昨年よりもペースがゆっくりなので、年初に掲げた「今年は在宅!!」という目標がそこそこ守られている(ような気がする)
で、さらに掘り下げて。誰をどのくらい観ているのかも数えてみた。ランキングは以下のとおりである。

1位 勝井祐二・・・16回
2位 スガダイロー・・・14回
3位 オータケコーハン・・・10回
4位 不破大輔、立花秀輝・・・9回
6位 芳垣安洋・・・8回
7位 U-zhaan、山本精一・・・7回
9位 大友良英、坂田明、T.美川・・・6回
12位 吉田隆一、石橋英子、あら恋・・・5回
15位 七尾旅人、ヒラノノゾミ、ファーストサマーウイカ・・・4回

大好きだったBiSが解散したので、もうこれで平日にバーチャル親族を次々に病院送りにして有給休暇を無理矢理とらないで済むと安心していた矢先に、渋さ知らズが新宿ピットインで再びライブ活動をするということを知った。どーせ平日だから行けないよなとどこか他人事な気持ちでいたが詳細を一応確認した。

10月2日(木)渋さ知らズ25周年企画大作戦 其ノ弍
【出演者】
不破大輔、北陽一郎、梅津和時、林栄一、立花秀輝、泉邦宏、小埜涼子、登敬三、広沢リマ哲、吉田隆一、中根信博、斉藤社長良一、大友良英、ヒゴヒロシ、太田惠資、勝井祐二、山田あずさ、山口コーイチ、スガダイロー、芳垣安洋、植村昌弘、ぺろ 他

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俺が大好きなアーティストばっかじゃねえか…Σ(゚д゚lll)

揃いに揃った完璧なメンツ。怒りにチケーもんが煮えくりかえった。
「月初にどーやって会社休めっつーんだよ!!」
「思いつく限りのバーチャル親族は全員退院させちゃったぞ!!」

ガタガタ言っても行きたいもんはしょーがない。有給休暇はどー考えても無理だがせめて早退だけは勝ち取ろうと考えた。で、結局社長に理由も言わず鬼神妙フェイスからの今世紀最大の土下座ぶっこんでなんとか会社を抜け出すことに成功。飯も食わずにピットインに向かった。

この日のライブは同窓会という趣旨である。かつて在籍していたが今は離れてそれぞれの活動に専念している者たちが25周年に華を添えるべく集まったというもの。前述した出演者で現在も定期的に参加しているのは不破大輔、北陽一郎、立花秀輝、山口コーイチ、ぺろくらいである。逆に言えばこれだけの素晴らしいアーティストたちが時期は違えど渋さ知らズで演奏していたんだなと思うと無性にエモくなったりもする。

俺が思う渋さ知らズの魅力というのは、腕は確かだが一癖ある演奏陣、大掛かりな舞台装飾、艶やかなキャバレーダンサー、蠢く暗黒舞踏、お調子組合の変拍子が撒き散らす混沌を不破さんが全て受け入れて、懸命にダンドって、強力無比なユニゾンに昇華された時に全方位から生きる喜びを感じとって、下手したら俺の人生さえも肯定してくれてるという錯覚に溺れてギャーーー!!みたいなところなんだけど、結論を先に書くと今回はそういう魅力は薄かった。

休憩時間。入口付近に勝井さんがいたので少しだけお話をさせてもらった。
俺「勝井さーん!今日チョー楽しいっすね!!最高っすね!!」
勝井「・・・そう?」
俺「えっ?勝井さん楽しくないんすか?…Σ(゚д゚lll)」
勝井「・・・いつもこんな感じじゃない?」
俺「・・・」

もしかしてあんまり楽しんでないのかなと思って、少ししょんぼりしながら席に戻った。でも今にして思えばなんとなくその気持ちの一端がわかるような気もしている。

今回のライブを自分なりに総括するならば、渋さ知らズという交差点で久しぶりにすれ違った者たちが今の自分はこんな感じですよっていう挨拶を交わしているようなものだったということである。全出演者、誰にソロを回しても極上の一発をキメてくるので鳥肌の立つ回数が尋常じゃなかった。立ち過ぎて来世の俺に鳥フラグが完全にたった。

芳垣×植村ツインドラム。このツインドラムを体感してしまったらちょっともう戻れない。野生と理性が同居する究極体。グルーヴに導かれるまま一生溺れていたくなる。もはや覚醒剤と大差ない。この先またしばらく観れる機会もなさそうなので、いっそ記憶から消してしまいたい。あんな演奏は幻だったと思いたい。それぐらい圧倒的だった。死にたい。

太田×勝井ツインバイオリン。太田さんの異国の雄大な大地を感じさせる音に対して勝井さんは光の速さでギャラクシーな領域にぶっ飛んでいくスピード感のある音。両雄並び立つと互いの哲学の違いが浮き彫りになって聞き応えがハンパない。

乱打戦におけるヒゴヒロシの存在感も凄まじい。第二部で勝井×芳垣というデュオの場面があった。二人がギリギリのところまでせめぎ合いすぎて、もはや誰も入っていけない聖域のような空間が出来上がってたんだけど、ヒゴさんのベースは唯一入っていって二人の勝負をさらに熱く引き上げる名レフェリーのような活躍をみせていた。

ダイローさんは要所でいつもどおりの狂鍵っぷりは堪能できたものの演奏するよりも賑やかしに徹していた時間のほうが長かった。ピアノの弦が早々に切れて演奏できなかったという噂はTwitterで見たけれども詳細は不明。「瞬か」五番勝負においてコンドルズの近藤さんにあれほど踊ることを強要されても踊らなかったダイローさんがこの日はピアノの椅子の上に立って自ら率先して踊り狂ってたのが強く印象に残った。あと、持ち前の行儀の悪さ…Σ(゚д゚lll)

あずささんの鉄琴強打、小埜さんのキレ、立花さんの安定感、梅津・林両レジェンドの重厚感、社長の温度感、大友さんのノイズギター、スローな動きで艶かしさを表現するぺろさん、親指立てながら溶鉱炉に沈んでいく吉田さんなど、悶絶した瞬間は枚挙にいとまがない。不破さんのダンドリはいつも以上に高い集中力をまとっていて、ジョンゾーンズコブラにおけるプロンプターばりの細かい指示を出して世界を司っていたことも見逃せなかった。

ただ全員がユニゾンでテーマを鳴らすところになると、ソロで見られた爆発力の影はうすく感じた。なんか借りてきた猫のようにかしこまった感じというか、ぎこちない感じというか。いつもの渋さ知らズのようなダイナミズムを俺は感じることはできなかった。でも考えてみれば当然かもしれない。今はもうみんな別の活動の方に重きをおいている人たちなのだから。渋さ知らズとして楽しかったというより、それぞれの演奏者のいまを体感することがひたすら楽しかった。

今回のライブは出演者の豪華さもあって、久々に渋さ知らズを観にきた人もすごくたくさんいたように思うけど、これはあくまで一夜限りのスペシャルなものなのでまた機会を作って今の渋さ知らズもどうか観てもらいたいと思う。今の渋さ知らズだってすごいんだから。小編成の不破ワークスも含めて。

終演後、電車を待っていたらホームで勝井さんを見かけたのでテンションがおかしいまま再びご挨拶をした。

俺「勝井さーん!今日チョー楽しかったっす!最高でした!」←しつこい
勝井「・・・俺も楽しかったよ」

\ヤッター!/…Σ(゚д゚lll)

その後もハイパーどさくさに紛れて同じ電車に乗って、いろんなお話をしてくれたことは自分にとって夢のようなひと時であった。俺がいちばん推してるアーティストをわずかな時間とはいえ独り占めしてたんだ。これ、アイドルでやったら何十万円積めばいいのか見当もつかねえ…Σ(゚д゚lll)なぜか北島三郎の話とかしてるし。とはいえ、はたから見れば異様な光景であったとは思う。知っている人が見たら、ROVOの勝井さんがなんでBiSの研究員と一緒に電車に乗ってんだよって…Σ(゚д゚lll)俺、IDOLパーカー着てたから。お疲れのところ本当に申し訳なかったです。ちなみに、乗っていた電車が自分の家とは反対方向に向かっていたことを勝井さんに教えてもらったことは人生最大の失態として、きっと一生忘れないと思う。緊張しすぎ…Σ(゚д゚lll)

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