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キムさんがあら恋でドラムを叩いた最後の夜~2015.3.28 池下CLUB UPSET

キムさんがあら恋でドラムを叩いた最後の夜について。
何かしら書き残しておこうと思ってパソコンを立ち上げてみたものの、なんとなく頭がぼんやりとしていて筆が進まないでいた。脱退という事実を自分の中で消化しきれていないことがいちばんの理由だとは思うんだけど。ライブの余韻を引き継いだままアルバムを再生すれば、耳元で当たり前のようにキムさんがドカドカ叩いているんだから、数日たった今だって気軽に悶絶することができるわけで。おそらく新体制によるライブを体感するまでは実感が湧いてこないままなんだろう。

自分があの夜のライブで何を感じたのかを書かなければいけないわけではない。だけど、様々な事情によって最後に立ち会えなかった人も多くいるなかで、少なくとも自分はその場所にいたんだから、文章の巧拙は無視してでも書くべきだろうという大いなる勘違いだけを頼りに書いてみることにする。

池下CLUB UPSETはビルの5階にあるライブハウスである。『Fly』のサビで感極まって、奇声をあげながら窓から飛び降りるという羽を持たない人間による命がけのヲタ芸を敢行するにはうってつけの場所ではあったが、今回のセットリストでは外されていたので、残念ながらそれは未遂に終わってしまったことは今だから書ける話である。

(※画像は池下CLUB UPSET)
転換の時はいつもと比べると少しおどけたような仕草が多かったイケショーさんに萌えつつも、メンバーそれぞれの表情はとてもリラックスしているように思えた。ジャージ姿で黙々とセッティングするキムさんの姿を見ながら、

(´-`).。oO(キムさんはお揃いの衣装よりも、本当はジャージ姿のままドラムを叩きたかったんだろうな…方向性の違いって音楽的なものじゃなかったのかもしれないな…

なんていうクソくだらねー妄想に浸る余裕もこの時点ではまだあった。

1曲目は『テン』
ベースから始まるイントロのフレーズを聴きながら、演者でもないのに俄然集中力が高まってくる。終わりの始まりである。ドラムの一打一打をしっかりと胸に刻み込みながら、序盤はねっとりとした視線をキムさんに向けていた。とはいえ、生ぬるさの極みとも言えるセンチメンタルな感情はそう長くは続かなかった。スイッチの入ったコーハンがギターを思いっきり歪ませてきたのを合図に空気が一変する。ドラムの重たい打撃音で開かれた世界の先で、打ち込まれたエレクトロな音階がじわじわと発酵する。緊張感を煽るシンバルも、呪詛のようなテルミンの音色も、怪獣の足音のようなギターやベースまでも、オール全て俺の闘争本能に火をつけてくる。オマエは何と戦うつもりなんだとツッコまれたら、んなもんクソみてえな日常に決まってんだろーが!って啖呵キメながら、そんな無粋なこと言うヤツに対して殴る蹴るの暴行を働くので悪しからず。まあ、とにかく血が滾るっつーこと。

2曲目は『nothing』
一打一打ものすごく気持ちをこめてスネアドラムを叩いていたキムさんの姿がすごく印象に残っている。いろんな思いが溢れ狂っているようにも感じた。中盤に訪れるドラムが「ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコッドーン!」からの鍵盤ハーモニカが「プァーパーパーパーパーパーパー」のところ。その瞬間、あら恋から後光が射していたので幸せすぎて笑いながら号泣する羽目になった。またひとつ、自分にとって大切なドラマが生まれた。泣いたことを美談にしたいわけではない。今後この曲を聴いて打ち震える要素がひとつ加わったということである。

3曲目『カナタ』4曲目『Res』
披露される機会の多いこの2曲に関しては、とくに感慨にふけるわけでもなく、いつものようにその圧倒的な爆音を全身で受け止めて、根こそぎ体力を奪われながらも全肯定を決してやめない地獄のぶつかり稽古を敢行。いつ聴いても俺の受け身の取り方は変わらないので、去年書いたエントリーをコピペしておく。

『カナタ』のイントロ(ダーダーダーダー)を聴くと無条件に、首よもげろ!!と言わんばかり全身で頷く。鳴っている音に対してヘドバンじゃなくて全肯定としての頷き。案の定、開始数分で首に甚大なダメージを負う。なんとか平静を装おうとクールダウンに努めたいところなんだけど、サビ前にコーハンが「ザリーン!!」ってギター弾くじゃん。あれで完全にスイッチ入っちゃうんだわ。で、結局ダーダーダーダーで首がもげる。

『Res』では、天上の神が「多幸感」って書いてあるふりかけのビンを鬼の形相で振り狂ってんじゃねえかっていうくらい完璧な旋律が空から降ってきて、目の前にはひたすら明るい世界が広がっていて、きゃほー言いながら突っ込んで行った先に待ち受けている「デレデ、デレデ、デレデ、デレデ、デレデ」で再び首がもげる。もげ落ちる。「首の強い者は世界を制する」とは、カール・ゴッチがアントニオ猪木に送った言葉らしいんだけど、それにならって俺もこれからは寝る前にブリッジしようかと思い始めている。っていうか、このエピソードすげえ嘘くさいけど。

5曲目は『back』
2011年3月20日に新代田FEVERで聴いた『back』を思い出していた。その前にもあら恋のライブは観ていたけれど、あの時あの瞬間ほど自分の中で必要とする音楽に出会えたと思ったことはない。あの日を境に日本の何かは変わってしまったけれど、それでも歯を食いしばって生きていかなきゃいけないんだという覚悟が自分のなかではっきりと芽生えた。もちろんあの状況下におけるメンバー全員の演奏が素晴らしかったのは言うまでもないが、やっぱり力強いドラムに後押しされた感じは間違いなくあると思っている。そんなこともあって必要以上に身構えながらキムさんの最後の演奏を聴いた。いつもにくらべると少しリズムがもったりしてるかなという気がしないでもないが、最後にしっかりと心に刻みつけることができて本当によかった。

アンコールは『ラセン』
聴きたい曲は他にもたくさんあったけど、良い意味でトドメを刺されるならばこの曲しかないと思っていた。全身に708あるという経絡秘孔を爆音でひたすらブッコんでくる殺戮の調べ。重く煙たいリアルタイムDUB処理セッションを経てから鳴らされるイントロの時点ですでに肉体の爆裂は確定した。血の流れが異常促進しているのを感じながら、最前の柵に何度も胸や肘をぶつけながら、喉から血を流しながら、俺は俺なりの断末魔の叫びをあげた。それはもう隣にいた連れに「うざい!」と罵られるほどであったが、んなこたぁどーだっていいのだ…!うそ。ごめんなさい…Σ(゚д゚lll)

IMAIKE GO NOWがサーキットイベントである以上、もっと万人向けなパフォーマンスをしても良かったのかもしれないけど、俺にはバンドがお客さんに向けた演奏に終始するのではなく、どちらかというと自分たちが現体制での最後の演奏をガッツリ楽しもうとしているように見えた。キムさんのドラムが熱を帯びて躍動しだすと、きまって他のメンバーが誇らしげに彼を指さしたり、そうでなくとも背中越しに体感する爆裂打撃音の凄まじさに思わず笑顔もこぼれてくるのだろう。

必ずしもフロアにいるお客さんの全てがあら恋のバンドヒストリーを理解しているとは思わないし、持ち時間の短さもあって魅力の全てを提示できたとも思っていない。それでも俺はあんなに楽しそうに、誇らしげに演奏する彼らの姿を観ることができて本当に嬉しかった。

「10年間ありがとうございました。これからもあら恋をよろしくお願いします!」

演奏が終了してから、最後の挨拶をするキムさんの表情に悲壮感は全くなくて、むしろ晴れやかな笑顔を見せていた。ライブ全体をとおしてみても、必要以上に感傷的にならずに済んだのは彼の人柄によるところもあったのだと思う。いい顔してたな本当に。

終演後にしたツイート

翌朝のツイート

キムさんの今後に関しては、こーもりさんの書いた記事を参照するといいかと。ちょっとしたインタビューや写真なんかも掲載されているので是非どーぞ。

個人的には「俺たちの手にDUBを取り戻す!」とか怪気炎をあげながら樹音くん(ex.TAMTAM)と新バンドを結成するというようなプロレス的アングルを期待している。で、あら恋とTAMTAMに喧嘩ふっかけて、どさくさに紛れて三つ巴で試合やっちゃおうぜ…Σ(゚д゚lll)

それはさておき。
今後もドラムを叩いていくのであれば、いずれまたその演奏をライブハウスで聴ける日がくるのかもしれない。再会できた時には乾杯でもしたいっすなー。でもきっと少しくらい言ってしまうかもしれない。
\ふざけんなー!あら恋やめんじゃねー!/
とか。脱退に対してまだ消化しきれない部分もあるんだけど、そんなモヤモヤもいつか笑い話になるくらい、新体制のあら恋も、キムさんの新生活もガンガンいこうぜ!←ドラクエ的な

キムさん、10年間お疲れさまでした。

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