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もしも岡部洋一(ROVO)が縦横無尽に謎の打楽器を叩き狂ったら - 実験 岡部洋一 雑感

ROVOやOrquesta Libreなどで活躍しているパーカッションの岡部洋一さんが共演していそうでしていないゲストを迎えてのライブ企画「実験 岡部洋一」に行ってきた。

前述のバンドなどで何回も岡部さんの演奏を聴いてはいるものの、あくまでいち演奏家という立ち位置のものばかりである。それがこの企画では純然たる主役である。ってことは、演奏を存分に堪能できることは勿論のこと、下手したら岡部さんが何か喋るかもしれない。いままで一度だって聴いたことのない肉声を聴ける好機である。行かない手はない。

それともうひとつ。今回行こうと思ったきっかけとして「実験 岡部洋一」のツイッターアカウントの存在がある。日々の投稿を読んでいるだけで、岡部さんの好きなパンや肉の部位、使っているLINEスタンプが明らかになったことはさておき、ゲストの丁寧な紹介や、ライブに向けての意気込みなどが非常に微笑ましい温度感でなされていて、この企画に対しての愛をすごく感じていたのが大きかった。もともとプロレスファンでもある自分にとっては、こういう風に当日までに機運を盛り上げてくれる要素だったり、運営される方の熱量だったりを感じることは喜びのひとつなのである。

会場であるゲーテ座は日本最初の西洋式劇場を記念して造られたホールであるらしく、山手の丘に建つ岩崎博物館のサロン的な雰囲気を大切にしているとのこと。館内に入って目に飛び込んできた青い照明に照らされたグランドピアノと打楽器の要塞。なるほど気品がだだ漏れである。

開演時間を少し過ぎたあたりで両者が登場。岡部さんがマイクを握る。

「本日はありがとうございました…」

終わっちゃった…Σ(゚д゚lll)

サロン的な雰囲気を登場してわずか数秒でぶち壊すという波乱の幕開け。言い間違えを決して認めずに演奏前から本日の感想戦へとなだれ込んだことでこの後も時空は歪みっぱなしのままであった。

今回のゲストである林正樹さんとの演奏は、Tipo CABEZAを彷彿とさせるピアノとパーカッションのしなやかな共演。林さんの心がぴょんぴょんするような明るい打鍵は、師匠のひとりでもある佐藤允彦さんの影響を強く感じさせるものだったように思う。自作曲の旋律が非常に美しいから聴いていて心地よさがエグイ。うっかりすると没入→究極のトランス状態(寝る)に陥りそうにもなるんだけど、そこは岡部さんが許してくれるはずもない。単刀直入にいって岡部さんヤバスギル。それはずーっと前から知ってた。知ってたつもりだったけど、一挙手一投足をじっくりと味わえるデュオ編成だとそのヤバさが剥き出しにされる。

椅子兼用のカホンに腰をおろして、ジャンベ、シンバル、ウィンドチャイム、金物各種で構成された打楽器の要塞を縦横無尽に乱打するにとどまらず、笛を吹きだしたり、スリットドラムをポコポコ鳴らしたり、ビリンバウを巧みに操ったり。殺りたい放題ってきっとこういうことだ。ちなみに、ビリンバウって得意気に書いてるけど、ライブを観てる時は俺全然わかってなかったから。なんだあの巨大な弓は!謎すぎる!ってバカみたいなリアクションしかできなかったから。で、あまりにも悔しいから終演後に立ち寄った中華料理屋で一心不乱にgoogleし狂った。だけど手がかりが皆無だから調べようがない。

ヤケクソになって検索窓に「弦を叩いて 鳴らす」ってぶっこんで画像検索した時にこの画像にたどり着いた自分を褒めてあげたい。これだよこれ。

第二部で岡部さんが手持ち鍋のような金物をブラシでしばき倒してるのも鬼だった。茶碗を箸でチンチン鳴らしながら催促する行儀悪さの権化みたいな某ネコのアスキーアートも、岡部さんくらいリズミカルに叩けるならば見方もかわるんだろうな。嗚呼、俺もそうなってみたい。

アンコールを含めて全ての演奏が終了した後に、言い忘れたことがあったとのことで岡部さんだけがぬるりと再登場。この日のライブの煽りとして、数日前から前述のツイッターアカウントがカウントダウン告知をしていたことに触れていた。詳しくは以下を参照。

とんかつ、やきとん、しゃぶしゃぶ。

「これがそれぞれどのお店のものかわかる人?」

知らねえよ…Σ(゚д゚lll)

わかった人には商品をあげようと思ってたのに…って岡部さんしょんぼりしてたけど、誰だって告知にそんな伏線が張られてるなんて思わねえ。いや、違う。これは呑気にタイムラインを読み流している現代人にとっての警鐘なんだ。たぶん。で、結局お客さん全員と岡部さんがジャンケンをして勝った人1名に贈られるという森山威男スタイルが採用されることになった。俺は光の速さで負けたけど、勝った人は謎の打楽器(カネゴンの頭部みたいなかたちをした親指ピアノっぽいやつ)を貰えていてすげえうらやましかった。いいなー。

初めて行った「実験 岡部洋一」は最高に満たされるものであった。無限に湧き出るリズムで溺れ死ぬ快楽に勝るものなし。

ちょっと話が脱線するけど、
勝井祐二→各種ソロ活動、KOMA
山本精一→各種ソロ活動、MOST
原田仁→ボイスソロ
益子樹→KOMA
芳垣安洋→Orquesta Libre、Orquesta Nudge!Nudge!、emergency!
岡部洋一→Orquestra Libre、Orquesta Nudge!Nudge!、ソロ活動←new
こんな感じで各メンバーの課外活動というかある意味では本職を実際に体感してきたけど、どれも本当に素晴らしいものである。

【結論】集合体としてのROVO超ヤバい。

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