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切腹ピストルズ VS 中村達也 桜座にて

今から2ヶ月ほど前の話。何がきっかけかは忘れたけど、切腹ピストルズと中村達也のライブが開催されることを知った。舞台は甲府桜座。しかも当日は自分の誕生日。良い意味でトドメを刺される好機である。疾きこと風の如くチケットを予約したことは言うまでもない。

甲府に着いたのがそれなりに早かったのでしばらく駅周辺を散歩した。とはいえ、観光名所のようなところに行くのではなく、ひたすら裏道や路地裏を徘徊するようなある種のミステリーツアーである。秋晴れの空の下で、昭和の面影がエゲツない建物、死体を投げ捨てても一週間はバレないであろう茂り狂った草むら、目つきの悪い猫ちゃん、マイルドセブンしか売ってないタバコ屋などを見かけてはツッコミをいれるような他愛のない暇つぶしはそれなりに楽しかった(ような気がする)あと、どこからでも富士山が見えるのがすごくいい。

そんな個人的なことはさておき。一見とくに接点のないように見える切腹ピストルズと中村達也。俺が知らなかっただけかもしれないが、ちゃんとした縁があったようで。それについては以下のリンクを参照。すごくいい話。

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=607548686037728&id=418137611645504

中に入ると薄暗いステージの中央にドラムセットが置かれている。その佇まいがすでにヤバい。なんというか無言で語りかけてくるんじゃねえか?という謎の錯覚に陥る。もしくは桜座マジック。楽器ってなんか物語感ある。

最初に中村達也が登場。ブルーザー・ブロディを彷彿とさせる髪型に唖然とする。こんな髪型だったっけ…Σ(゚д゚lll)それはさておき。ロック、パンク、ジャズ、スカ、プログレなどいろんなジャンルの音楽に貪欲に触れることで濃くしてきた血が破天荒かつ荒ぶったドラミングで大量に噴き出しているかのような圧巻のソロパフォーマンスを披露。強烈な打撃によってスティックのチップが二本とも早々に砕け散っていたし、死に急ぐバスドラの加速もまたかなり早い段階から俺を崖端に追い込んだ。「ワオーン」なんてニホンオオカミの鳴き声(またの名をブロディシャウト)を真似たりするお茶目な一面も見せたりしながらも、全体的には実にヒリヒリした演奏だった。

ほどなくして切腹ピストルズが呼び込まれていきなりセッションが始まった。平太鼓が四人、小太鼓が一人、篠笛が二人、鉦と三味線が一人ずつ。ドラムセットを取り囲んで一気呵成に爆裂打撃開始。数をものともしない中村達也のドラミングを軸に、内臓に響く平太鼓の重低音に意識が昏迷しながら、それでも微かに聞こえる篠笛の響きの清らかさに溺れながら、だけど扇動的すぎる鉦の音で怒りにチケーもんが煮えくり返って暴れ狂いたくなるという無茶苦茶な精神状態になって俺が壊れた。いまここで鳴っている音に夢中になっていたし、それ以外のことを顧みる余裕なんて全くなかった。ガッツリご静聴スタイルが基本の桜座において空中を座布団が飛び交い、大人も子供もすげえいい笑顔で踊り狂っている。汗をかいている。きっとみんな呼び起こされていたのであろう。野性的な、本能的な何かを。

桜座という場所は行ったことのある人であればわかると思うが素晴らしい音場である。設備がどうとかではなくて、音の響きがちょっと他では味わえない独特のものがあると言ったらいいのか。それは天井の高さだったり、床がホールのような板張りではないことだったりすることが起因してるのかもしれないけど、んなこたぁどーだっていいのだ。趣は理屈を凌駕するんだよ。と同時に、かつての桜座は芝居小屋であった。芝居という大衆芸能で多くの人々の関心を集めていた頃から数えること数十年。野良着姿の粋な男たちによる共演はきっとジャンルは違えど人々を楽しませるという部分では同一線上にあるものだと勝手に解釈して今でも鬼愉悦に浸っている。ふふふ。

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