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あの娘山本精一がノイズギター鳴らしたらどんな死に方するだろう

創造性の高い前衛的な音楽、アートパフォーマンスが仙川の町中で渦巻くとされる「JAZZ ART せんがわ」に行ってきた。仙川駅の改札を出た瞬間、子供たちがジャズバンドと舞踏家とわちゃわちゃ戯れている光景が目に飛び込んできてソッコーでこのイベントの性質を理解した。これ絶対楽しいやつだ。この日の昼間は下北沢で勝井祐二のランチライブに行っていたので仙川を周遊する時間がほとんどなかったことが少し残念。来年はもっと早くから参加していろんな所を回ってみたいと思う。

観てきたプログラムは坂本弘道ディレクション [legs]
友川カズキ+山本精一+坂本弘道+ペットボトル人間という異色の組み合わせ。冒頭で坂本さんからライブの流れについて説明があった。ここでも一応その流れに沿ったかたちで書いていくことにする。

【PET BOTTLE NINGEN】
今年になって存在を知って、CD聴いてみたら一発でハマったニューヨーク在住のバンド。インプロ、ジャズ、マスロックのごった煮のようなサウンドで、案の定というかジョン・ゾーンが主宰しているレーベルからアルバムをリリースしている…とここまで真面目に書いているものの、読んでいる人の気持ちもなんとなくわかる。わかるよ。ツッコミたい人がいるのすごいわかる。俺も最初はそうだったし。この後まだ文章を続ける予定だから、今のうちに芽を摘んどく。

「人間」ってつくバンド多すぎ…Σ(゚д゚lll)

取り敢えず俺が知ってる人間を挙げておくので(バンド名クリックで)各自お好きな人間をご覧ください。

人間椅子挫・人間某人間THEラブ人間ぐしゃ人間人間クラブ人間ロケット六畳人間のなか悟空&人間国宝BO NINGENNINGEN OKPET BOTTLE NINGEN←new!

話を戻して。一人の吉田と二人のデイヴで構成されるペットボトル人間。ド頭一音目からフリーキーなシャウトかます吉田さんの空間切り裂き系アルトサックス。太い!エグい!遠慮がない!デイヴのギターはタッピングを駆使してマスロックの扉ガンガン開いてくるし、デイヴのドラミングは、ロックの荒々しさとジャズのきめ細やかさを無理なく同居させている。極めてスリリングな音の攻防を堪能するには持ち時間が少なすぎた。3曲ほどで終了。

【山本精一】
序盤はフィードバックだけで地獄の敷地面積を広げるだけ広げておいて、誰もが逃げることすら諦めるくらい気力を根絶やしにしてから、左腕はネックの摩擦上等で六本の弦をひたすら暴力的にしごき倒す。右腕はタッピングを超えてもはや打撃の類。ときおりスプレー缶でゴリッゴリに弦を押さえつける感じとかギロチンチョーク級の危なさ。完全に殺しにきてる。張り詰めた緊張感のなか恐怖を感じる間もなく、身構えることもできず、無慈悲かつ無様にぶっ殺された。全ての感性が死んだ。時間にして10分弱。精一さん自身は60分くらい演奏している感じだったと話していた。冗談でもなんでもないと思った。精一さんの音に込める集中力の尋常ならざる高さに実際流れている時間が追いついていけなかったということだ。精一さんの凄さの底が全く見える気がしない。

【友川カズキ】
歌手・詩人・画家・競輪愛好家・酒豪。これらの肩書きだけでも十分に人として信頼できる。実際に生で観るのは初めてだったんだけど、実に素晴らしい年の取り方をされてるというか、達観の権化のような人だった。唄っている時も合間のMCでさえも他人がどう思うかとかどこ吹く風とばかりに気にすることなく勝ちパターンを積み上げていくっつーか。せっかくなので友川さんが共演者に対して放った珠玉の暴言を紹介しておく。

・(坂本さんに対して)「あんた、ヤクザ?」

・(ペットボトル人間に対して)「外国人はキ◯タマがデカイから勝てる気が全くしない。その分はテクニックでね…カバーしますけどね…」

・(精一さんに対して)「山本さんの名前は知ってました。山崎春美さんの本によく出てくるから。あと、灰野敬二とか。不良みたいなのとばっかり付き合ってて。ASKAさんより彼らを先に逮捕しないと。ASKAさんは真面目に覚醒剤やってただけなんだから。換気扇五個もつけて…」

・(総合プロデューサー巻上さんに対して)「会ったの何年ぶり?えっ?38年ぶり?・・・・・・死ねよ〜(笑)」

本人曰く「似ているようで違う曲」「たくさん駄曲がある」「覚醒剤をやっていないから全く売れない」という自身の持ち曲はどれも情念が渦巻いていて非常に濃い。絶叫しながら掻き鳴らされるギターの音も硬い。全員でセッションしても埋没することなく強烈な存在感を放ってるとかどれだけ強いんだこの歌たちは。自分の好みかと言われると正直まだなんとも言えないんだけど、終わって数日たった今でもなんかシミのように心の中に残っているので、改めていろんな曲を聴いてみようと思う。っていうか、GEZANと共演するやつチョー観たい……Σ(゚д゚lll)

【坂本弘道】
ペットボトル人間に気をつかい、精一さんに振り回されて、友川さんにヤクザ扱いされるという身も心のズタボロな当プログラムのディレクター。チェロ演奏で情感を増幅させたり、心持ち小規模な火花を散らしたりと見せ場はあったものの、途中で弦が切れてしまい、弦の先端が頭にぷすぷす刺さったりしてる姿と、ステージに持ってきたまではいいが、使う機会が全くなく終演後も寂しそうに床に転がっていた電マがエモの極み。次にお会いできる時はいつものように派手に殺してくれることを期待しつつ。こんなに亜空間なプログラムを見せてくれてありがとうございました。ガッツリ楽しかったです。

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