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GOK Festival 2015雑感(2015.5.5)

5月3日~5月5日にかけてGOK SOUND主催によるフェスが開催された。いままでに数多くの名盤を世に生み出してきた同社のスタジオで、実際にレコーディングをした経験のあるアーティストたちによる産地直演という趣旨も興味深かったけれど、単純に普段なかなか入る機会のない、しかもそれがただのスタジオとかじゃなくてGOKとあらば行くしかねえだろっつーことで最終日に行ってきた。個人的にすげえ楽しかったので来年も開催されることを期待しながら雑感を書いてみることにした。

まず参考までに当日のタイムテーブルを貼っておく。

見てもらえばわかると思うけど、長丁場のイベントである。最初にこれを見た時はしんどそうな印象を受けた。ライブハウスと違ってスタジオである以上、人をたくさん入れるような想定はなされていないだろうから、ちょっと疲れた時の逃げ場の有無や動線の心配を少しだけしていた。まあ、この点に関しては単純に入退場が自由だったのでとくに問題なし。

スタジオで聴く音はとにかく迫力が凄くて、絶えず耳にビシビシ突き刺さってきた。分離がいいのかどうかわかんないけど、やたら個々の楽器の音を明確に聴き分けることができたのは全てのアーティストのライブで共通していた点である。間違いなく音はいいんだけど、良くも悪くも濃い音なのでずっと聴き続けていると耳疲れはした。

以下、自分の観たアーティストについての感想。

●THE SILENCE

馬頭將噐さんが率いるサイケバンド。新譜は発売日にソッコー買ったけどライブを観るのは初めて。CDを聴いて感じていた印象を根こそぎなぎ倒すほど骨太でヘヴィなグルーヴ。いつどこで見ても岡野さんのドラミングは腕の確かさは勿論のこと、叩き方そのものがとんでもなくかっこよくてヤバい。サイケデリックな音像の中で立ち振る舞う隆一さんというのもレアだと思うんだけど、バリサクとフルートの二刀流で存分に個性を発揮していた。っていうか顔を真っ赤にして身をよじらせながらフルートを吹いている姿にたいへん萌えさせていただいた。

ちなみに隆一さんは夜にドルフィーで板橋文夫さんとの演奏があるために、終演後すぐに会場を後にすることになったんだけど、出口のところでJOJOさんに自分のバリサクのケースを見せて「JOJOさん!これまどマギ!まどマギ!」って自慢し狂っていた。その時のJOJOさんのなんとも言えぬ苦笑を間近で拝見することになってしまってなんだかとてもエモい気持ちになった。

●非常階段

なんかもうすごいベタなこと書くけど圧倒的にかっこよかった。打ちのめされた。前述したように音の分離の良さもあって自分がいつも以上に各メンバーの鳴らす音を明確に聴き分けられたことも大きかったんだけど。バンドの演奏スタイルも、互いが互いの表現をしっかりと受け止めて、そこから湧き出た感情を極めて冷静に己の演奏に落とし込んでいるようにも見えた。絶え間なく交感されていく雑音が気がつけばとんでもなく凶暴な世界を形成することになってしまったもんだからこっちもこっちで発狂するしかなくなっちゃって心が完全に壊れた。非常階段と言えば過激なパフォーマンスだったり、アートなんてクソくらえ的なエンターテイメント性が語られることが多いんだろうけど、やっぱり核の部分って聴く者全ての耳をつんざくような強烈なノイズなんだなって思ったし、自分がノイズを聴いている或いは体感している時に一番魂を鷲づかみにされるのは非常階段の4人が鳴らすものであるという確信をよりいっそう強めた。

●mn

それまで使用していたLスタジオ(55畳)ではなくBスタジオ(20畳)での公開ライブレコーディング。ちなみに美川さんがライブを振り返って以下のようなツイートをされていた。

開演する時にスタッフの方から、お客さんはスタジオに入って体感してもいいし、ミックスルームに入って聴いていてもいいという指示があって。だからスタジオを選択したのが4人ということであって総数ではないということは強調しておきますね。それにmnの音楽性とスタジオの狭さを考えればミックスルームの方が安全であることは小学生でもわかることですし…Σ(゚д゚lll)

で、俺は何の迷いもなくスタジオを選択。美川さんの卓を挟んですぐ俺みたいな究極の地獄に座っていた。ほどなくして開演。

ギィィィィャァァァアァァ!!!!…Σ(゚д゚lll)

グゥゥゥゥオォォーー!!!!!!…Σ(゚д゚lll)

超絶至近距離から放たれるゴリッゴリにキンキンとした雑音の波状攻撃で耳から血が噴き出しそうなほど甚大なダメージを受ける。条件反射で耳を塞ぎたくなるんだけど、やっぱり雑音の中にも音楽表現がちゃんとあるからギリギリのところでやっぱり好奇心に勝てず自ら前のめりになって自殺を望んでしまう。破滅願望っつーか、悪循環っつーか。

10分ほどで演奏は終了。その場でレコーディングした音をモニターヘッドホンで聴いてみるという面白企画に突入。これはなかなか体験できることではないのでわくわくしながら音が出るのを待ってたんだけど、いざ再生されたらわずか数秒で、

ギィィィィャァァァアァァ!!!!…Σ(゚д゚lll)

グゥゥゥゥオォォーー!!!!!!…Σ(゚д゚lll)

繰り返される地獄!!!!!!!!…Σ(゚д゚lll)

録音された音の臨場感がエゲつなくて。薄れ行く意識の中でスピーカーの中にアタマ突っ込んだらこんな感じで死ねるのかななんてちょっと思った。演奏→再生を3セット。まさに地獄のハイレゾ体験。これほどまでに殺傷能力の高いポータブルオーディオがあったら俺ソッコー買うわ…Σ(゚д゚lll)いやー、ほんと楽しかった。

●壊れかけのテープレコーダーズ

mnで派手に耳を殺られてしまったのでちゃんと彼らの音楽を聴けるか一瞬心配になったんだけど、およそ3年ぶりに観た彼らのライブはあの頃と同様かそれ以上の情熱の高さを掲げたまま、バンドのダイナミズムは比較にならないほど強力なものになってるし、アンサンブルは気持ちいいし、すごく嬉しい気持ちになった。一音一音に感情がしっかりと乗っていて、その熱がしっかりとこちらにも伝わってきて拳を硬く握ってしまう局面が何度もあった。コモリくんのSGすごくいい音が鳴ってた。

立地的な兼ね合いもあって俺が観たのはここまで。最後にこのフェスが今後も継続してくれることを期待して、実際に参加して感じた良かった点と気になった点を書いておく。

●良かった点

・公開ライブレコーディング
スタジオならではの売りになるコンテンツ。参加していてすごく楽しかったので継続希望。

・入退場自由
スタジオの音が長時間聴いていると耳疲れする感じはあったので息抜きも兼ねられるのはありがたい。スタジオの目の前に緑が生い茂り狂ってる公園があるので休憩する時はオススメ。

・物販CDにつけているポップ
GOK SOUNDで録音された作品という殺し文句は非常に気が利いていていいと思った。

●気になった点

・事前告知
出演アーティストの質の高さや魅力的な場所での開催のわりに客足に結びついていないように思った。GOK SOUNDのHPや告知ツイートはあったにしても詳細やセールスポイントがあまり伝わっていないような気がする。

・スタジオならではのコンテンツ
必ずしもライブだけではなく、例えばレコーディングにまつわるトーク(代表作の制作秘話だったりレコーディング作業の工程説明だったり)があってもいいと思うし、いろんな部屋を簡単に見学させてくれるのも楽しいかと。

\次回の開催、楽しみにしてまーす!/


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