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北島三郎 最終公演 雑感 (2014.9.27)

昭和43年の初演以来、46年間続いた座長公演の集大成とも言える本公演の開催が発表された時にわずか数秒で行くことを決意した。公演自体は来年1月まで続くんだけど、東京で観られるのは今月までなので、自分にとっては最初で最後の北島三郎。期待に鼻を膨らませながら明治座に向かった。

ロビーに飾られた無数の大漁旗、壁面に描かれるサブちゃんの様々な名場面コラージュ、金色の銅像。どれもが凄まじい濃さで襲いかかってくるので、席に辿り着くまでにHPをガリガリ削られる。場内は携帯電話が圏外なので、開演までの間は客席を観察。やけに高そうなお弁当を食べているおじいちゃんもいれば、オペラグラスのベストな倍率設定に心血を注ぐおばあちゃんもいる。競馬場の指定席みたいな印象を受けたことは今だから書ける話だ。

ほぼ定刻に暗転。緞帳が上がって第一部の芝居『国定忠治』が始まる。いわゆる「赤城の山も今宵限り・・・」以降の話。俠客・国定忠治(北島三郎)が捕方から12年逃げ回ってる間に、自分の娘・お千代(水町レイコ)が年頃を迎える。造酒屋の跡取り息子との祝言の日が間近に迫ってたっつーのに、クソみたいな役人がお千代が忠治の娘だってことをバラして破談に追い込もうとする。自分のせいで娘が結婚できないとかマジ辛いから、自ら先方に出向いて鬼の土下座で懇願するも聞き入れてもらえず。やべえ、どうしよう・・・っていう抜群のタイミングで土地の腹黒い親分一家が店に嫌がらせにきたので、ここぞとばかりに忠治が剣術でハイパー鬼シンプルに皆殺し。狂乱の殺戮アピールが功を奏して破談を免れてハッピーエンドみたいなとても心温まる話であった。逃げ回る先々で偽名(木こりの与作とか)を名乗るサブちゃんチョーかわいいし、そもそも水町レイコってサブちゃんの実の娘じゃねえか…Σ(゚д゚lll)

大満足で第一部終了。休憩時間(35分)突入。暇なので物販コーナーに立ち寄る。饅頭、ラーメン、湯呑み、ジャンパーなどハイセンスなアイテムが飛ぶように売れていた。欲しいものはいろいろとあったが、第二部で自らの退路を塞ぐべくペンライトを4本購入。止まるな、やるしかねえんだ。そういえば同じエリアで開催されていた北海道物産展のおばちゃんに謎の漬物を強制試食させられて気の利いた感想を言えなかったことを今思い出した。なんかごめんなさい。

第二部『北島三郎、魂の唄を…』開演。

【第一景】
♪風雪ながれ旅
♪年輪
♪還暦
♪山
♪川
♪竹
♪男橋
♪兄弟仁義
♪男一代

緞帳が上がって視線に飛び込んできたのはガッツリ電飾が施された地獄のステージ。「北島」っていたるところに書いてある。オヤジに従順忠実、翻弄も重々承知の最強バンド「サウンド・ビクトリー」がゴリッゴリの演奏を叩きつけるそのグルーヴのど真ん中でサブちゃんがシャウト。

「アイヤー!アイヤー!津軽!八戸!大湊!」

言葉の意味はよくわかんないけどとにかくすげえ唄がうまい……Σ(゚д゚lll)

ちなみにバンド編成は、指揮者(尺八、フルート兼任)、サックス×4、トロンボーン×4、トランペット×4、パーカッション、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、バイオリン×3、コントラバス、コーラス×6(♂♀各3)である。完全に殺しにきてる。ただでさえ圧凄まじいっつーのに、個々のメンバーもALLイカレてる。尺八のスリリングな入り方(とくに兄弟仁義)尋常じゃねえし、出オチ専用マシーンであるはずのビブラスラップの圧倒的説得力とかマジ神懸かってる。情念を加速させるティンパニのおぞましさもヤバい。

で、どの曲も1番だけドバーッと唄って終わる。もったいねええええ!!!!もっと聴きてえよおおおお!!!!と悶絶するも、サブちゃんはそれを許さず次に唄う曲紹介まで自分でこなしていくという磐石なゲームメイク(私もだんだん白髪が増えてきました。できものもあります。しかしこれら全ては私の財産です。私の年輪かと思います→♪年輪)鬼の矢継ぎ早。快速東京にも似たハイスピード感に振り落とされないよう懸命にしがみつくことに必死だった。

【第二景】
♪剣山
♪片道切符
♪父子の誓い
♪男鹿半島
♪白夜の狼

このパートは全てサブちゃんの弟子であり義理の息子でもある北山たけしのソロコーナーである。北島三郎現場新参の俺は一瞬戸惑ったが、流れに身を任せることにした。俺は3階席から観てたので間違いないんだけど、彼の登場と同時にペンライトの光の数が明らかに増した。さっきまで「サブちゃーん!」って声援を送っていたおばさまたちが彼の登場と同時にギアを一段あげてきた。ペンライトを無軌道に振り狂い「たけちゃーん!!」と叫ぶ姿がとても私欲にまみれていて美しかった。情熱を高く掲げるのに年齢もジャンルも関係ない。微笑ましく眺めていたら、たけちゃんが狂信的グルーピーの一団にむけてノーモーションからの投げキッス一閃。許容量の限界を超えた爆レスでグルーピーが殲滅した瞬間を目撃した。たけちゃん……Σ(゚д゚lll)

【第三景】
♪函館の女
♪橋
♪母
♪父親
♪ふたり咲き
♪百年の蝉
♪人道

光沢のある初号機のような鮮やかな紫のスーツに着替えてサブちゃんが再び登場。このパートは正直「函館の女」くらいしか知らないのであまり印象にないんだけど、「人道」の時に、天井から「人道」と書かれた巨大な電飾扇子がおりてきてなんかエモい気持ちになった気がする。

【第四景】
♪銀座の恋の物語

舞台転換の場つなぎとして機能した北山たけしと水町レイコによる大人のスナックカラオケ。たけちゃんの唄い方が卑猥でよろしい。

【第五景】
♪路遥か(北島三郎×北山たけし デュエット)
♪有明海(北山たけし)
♪髙尾山(北島三郎)
♪帰ろかな(北島三郎)

北山たけしも単体で聴くと唄がうまいなと思っていたけど、さすがにサブちゃんと一緒に唄うとなると分が悪い。テクニックは十分備わってるんだけど、声から人間が滲み出てこないっつーか。でもサブちゃんは彼のことをしっかりライバルとして見ているんだなと思った。事あるごとに「俺の方がまだ唄がうまいな」とか「あなたが売れると私が助かる」とか挑発芸ぶっこんでたし、デュエットでも格の違いを残酷なまでに見せつけた。同じ土俵に立つならばたとえ義理の息子でも潰しにかかる。紅白歌合戦を卒業しても、座長公演が終わるとしても、自らの芸道をこれからも一歩一歩進み続ける覚悟の一端を垣間見た気がして震えた。

天下取るのは 昔から

人の助けと 時の運

夢のでかさは 心の広さ

初心忘れず 登って来いと

教え見守る あゝ髙尾山

・・・改めて読むとすげえじわじわくる。

【第六景】
♪北の漁場

「さあ今日も仕事だあ!!漁に出るぞおおお!!」

「おおーー!!」

銭のおもさを 数えても

帰るあてはない

二百浬を ギリギリに

網をかけてゆく

海の男にゃヨ 怒濤(なみ)が華になる

北の漁場はヨ 男の死に場所さ

船の先端でサブちゃん魂の熱唱!!!

脳内麻薬ドバドバ溢れてきて狂乱のハッピー状態突入。かつてないほどのブチギレ。頭ぐわんぐわん。事前購入した4本のペンライトをウォーズマンのベアークローばりに装着して3階席からの超高角度指差しも僭越ながらキメさせていただいた。

【第七景】
ダンス・ナンバー2014
太鼓演奏(北山たけし+TAO)

舞台転換の間、花笠祭りと阿波踊りとねぶた祭りの掛け声をミックスしたトランステクノみたいな曲で踊り子が提灯片手に踊り狂うゴキゲンな催し物と、北山たけし+TAOによる太鼓演奏があった。とくに感想がないのは単に自分が賢者タイムだったからである。

【第八景】
♪まつり

もはや幕が上がることが怖くなっていた。ここまでイヤってほど凄味を見せつけられてきたし、この後で七尾旅人のライブに行くことも考えたらここで死ぬわけにはいかないという危機感もあった。だけどもう遅かった。殺人兵器の準備は完全に整っていた。呪術的な打楽器のリズムに背中を押されて恐る恐る歩きだす。地を這うようなサックスの低い旋律をサディスティックに切り裂くビブラスラップの咆哮。バッキバキにきまったチョッパーで後頭部を殴られながら目にした光景。

舞台上にひしめく総勢130人の出演者が群舞をきめるど真ん中に

超巨大な武者兜の生首戦車!!!!…Σ(゚д゚lll)

両サイドに陣取る歌舞伎連獅子像!!!!…Σ(゚д゚lll)

兜の上には…サブちゃん!!!!…Σ(゚д゚lll)

全てを凌駕する問答無用のラスボス感!!!!光の速さで血が逆流して脳味噌ガッツリエクスプロージョン!!!!俺、死んだ。死んだはずだった。あとはゆっくりと三途の川でも渡ろうねって感じだったんだけど、兜戦車がゆっくりと動き出した次の瞬間、俺はこの地獄がまだ続くことを悟る。

兜がパカッと割れて…Σ(゚д゚lll)

そこに乗っていた金のしゃちほことサブちゃんが…Σ(゚д゚lll)

煙を吐き出しながらグイーンと前に迫り出してきた…Σ(゚д゚lll)

観客席の上を飛び回るサブちゃん、桜吹雪、銀テープ、レーザービームの波状攻撃と合わせて明治座が歓喜と興奮で大爆発した。幸せエナジーが最高に漲った動乱。最後の大サビでサブちゃんは歌詞を少し変えてこう唄う。

「これが〜北島〜まつり〜だよ〜〜〜!!!!」

ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!…Σ(゚д゚lll)

これが!!!!北島!!!!まつり!!!!ですか!!!!

最高かよ…Σ(゚д゚lll)

公演終了後にサブちゃんの挨拶があった。

「この舞台、正直(お金)かかってますよ。しかしこの舞台を作ったのは私ではありません。お客様が払ってくれたお金でできた、お客様が作ってくれた舞台です。そして私たち全員がご飯を食べさせていただいている。改めて、ごちそうさまでした」

素晴らしい芸事を観ることができて心の底から嬉しく思っている。惜しむらくはもっと早くもっと多く北島三郎を体感したかったということである。

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