トマスハーディーの小説のヒロインイメージ

19世紀のイギリスを代表する小説家・詩人のトマスハーディー。その小説はイギリスの田園風景を背景に、様々な物語が展開されます。今回は日本でも知られている作品3タイトルのヒロインのイメージを画と共に紹介します。

何故突然トマスハーディーか?ちょっと風邪で寝込んでいて、動画サイトで昔習ったピアノ曲などを振り返っていたのですが。ブルグミュラーの「帰郷」を思い出して、「そういえばハーディーにも全く同じタイトルの『帰郷』って作品あったな!」と連想ゲームの様につながったのです。ちなみに私は英文学科卒で、なおかつ卒論はハーディーの「Jude the obscure」を取り上げました。日本では「日陰者ジュード」と訳されていますね。

その前にハーディーと言うとやはり「結末が暗い、悲観主義的な内容」というイメージですよね。私は今でこそエコグラムとかすると「楽観的」しかも「かなりの」と出るのですが笑、同時にペシミズムに惹かれる性分でもあるのでしょうか。単純にハーディー作品が面白いと言うのもありますが。

さてまずは最初に思い浮かべた「帰郷」。こちらなかなか今日本語訳は入手出来ない状態でしょうか。しかし面白い作品ですし、ヒロインのタイプも他の作品とは一味違います。そのヒロインはユーステイシア。とにかく目力がすごいと何度も描写されています。あまりのすごさに「魔女」と言われてしまう程。そしてその目力や妖艶な雰囲気で男性を惑わすタイプの女性です。

田舎暮らしに飽き飽きしていて、パリやロンドンと言った都会に行きたいと願う、中身も外見も派手な彼女。彼女の名前は「ライ麦畑でつかまえて」そう、あのサリンジャーの名作に出てきます。主人公が「ユーステイシア、彼女は好きだな。」と言っています。そう、他のヒロインより野性味にあふれていて生気あふれる感じですね。

さて、日本では、いや世界でもハーディーで一番有名なのは「テス」でしょうか。まさに悲劇なんですが。この作品は主要人物が三者三様愚かな部分があり、説教をしたい気分です笑。なのでちょっとダメ出しをします。

まず一番ダメなのはやはりアレック。嫌がる女性を襲い、しかも妊娠させてしまう。これって若い頃読んだ時は1回の情事でそうなったのかと勘違いしていました。しかし良く読むと何度も繰り返されていたのですよね。弱い立場の女性としたら断われない。そんな状況を作ったアレックはまず最低人間です。

そして後にテスと結婚するエンジェル。名前こそエンジェルだし前半はそんな雰囲気。しかしテスの過去を知ると急変。彼女を置いて南米へ行ってしまいます。まあ、純粋で処女だと思っていたかわいい彼女が、実は他人に犯されていて、子供まで生んでいたなんて知ったら、そりゃ純真な男性はショックだとは思いますが。でも本当に彼女を愛していたら、彼女の傷やマイナス面すらも包み込めるはず。その度量が彼にはなかった。いい子ちゃんタイプですね。

そしてテス。彼女は美しい外見と豊満な肉体の持ち主。しかし若干頭脳が足りなかった印象。結婚式の夜、母親の指示通り、過去なんて打ち明けなければ良かったんですよ。言わなくてもいいことは言わなくても良し!ホワイトライ=白い嘘ってやつです。みんなの幸せの為ならそれもあり。しかし純真すぎる彼女はバカ正直に話してしまうんですよね~。ああ、バカバカ!

さて、その結婚式、二人がサインするときテスがミスをするんですよね。これって「ベルサイユのばら」で、ルイ16世とマリーアントワネットが結婚するときも同様の事が起きていますよね。小節やマンガなどの世界ではこのインクのシミは、不吉な未来を暗示する定番ものですね。事実このカップルはどちらも不幸な道へ・・・。

結局欲望の塊男のアレックに目を付けられてしまい、また包容力なしのエンジェルと結婚したために、最終的に悲劇のヒロインとなってしまったテス。男運がなかったってことでしょうか。アレックがのうのうと罪も受けないままなのは、当時の貴族社会だと仕方ないですが、ムカつきました!

さて、「日陰者ジュード」。こちら主人公のスーは大変知性があり賢い女性として描かれています。しかし謎のフェミニズム思考の持ち主でもある。いい年した若い男女が二人きりで暮らしていると言うのに、相手の男性に性行為を禁ずると言う荒業?をして、最初の同棲相手は病気もあって死亡。結婚した男性もそれで苦しむ。主人公のジュードにも最初同じ主張をしていたものの、ライバルの肉感あふれるアラベラに負けじと、ついに行為へ。まあ賢いと言っても結局はごく普通の女性心理の持ち主でした。

中盤以降は子供が起こす事件からジュードもスーも滅亡の道に進むことになります。しかし、自分も10代~20代前半位でこの作品を読むと、スーの主張もわからなくもないのです。その年代の女性からしたら、男性の性欲なんて理解不能ですからね。しかし今振り返ってみたら、スーは普段は女性扱いしないでと論理的な事を言っていますが、いざ苦しくなると自分の女の面を出す、つまり感情に訴えて相手を説き伏せる、まあいかにも女らしい人物なのでした笑。今考えると嫌なヒロインですね。

まあ主人公ジュードはタイトル通り、学問の道を目指しているのに、アラベラの肉体的魅力に取りつかれて結局結婚する羽目になるなど、爪が甘い人物。スーとも一時は夢の様な生活を送るも、それは短くして終わった。まさに「哀れ」の一言です。

いやぁ、こうして改めて書き起こしてみても暗いですね。悲劇ばかり。でも作品としてはとても面白いです。私はフランス文学学科とどちらに進もうか悩んだんですよね。フランス文学だとアレクサンドル・デュマとか、ユーゴーとか、スタンダールなんて「赤と黒」「パルムの僧院」など本当に面白いので。でもイギリス文学も面白いです。オースティンとかもいいです。ディケンズは「オリバー・ツイスト」「デビット・コパフィールド」辺りは長かったけど、私はそこまで面白く感じませんでしたが。

イメージ画を別にアップします。文章に組み込めないのは、私がそのやり方を知らないからです笑。ちなみにイメージ画は当時の時代背景とか一切考慮していませんので、そこらへんはご了承下さい(服とか髪型とか)。

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