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落書き③


天神ノ森

 自分にハレとケを最初に教えてくれたのは椎名林檎か磯崎新だったか。大学生当時お気に入りの考えだったが今は懐疑的だ。
 幼稚園、小学校、中学校時代、毎年天神祭に行っていた。大阪で天神というと天満の天神さんだが、自分にとっては西成区の天神ノ森という小さな駅近くの天満宮の祭りだった。
 祭りが近づくと太鼓の練習の音が聞こえ、1日前になると的屋が準備をし、境内では入念なリハが行われており、よく見学に行った。そんな感じで祭りの日と日常は自分にとって特別性もなく境界なくつながっていた。毎年水仙の花が咲いたら次に梅の花の季節が来るようなもん。終業式から2、3日で祭りが始まるのだ。御神楽もガラポンでポテチか洗剤が当たるのも、花火のバラ売りも、スーパーボールすくいも毎年重なり、たまたまくじ引きでアドミラルクイーン(デュエルマスターズのカード。強い。)を当てたのが一回限りなくらいだ。
 父の田舎は山でもなく、海でもなく、遠州の砂丘だったが、自分は何回でも「進研ゼミの夏休み特集」や「ZONEのsecret base」「white berry の夏休み」のベタな原風景に帰ることができる。発展のない季節。日本の歴史とやらも雅楽なんかより久石譲の曲で潜れた気になる人も多いだろう。
 大学、社会人と次第に祭りからは離れた。県外での一人暮らしが始まったからだ。感覚的には通学路が変わり毎年見ていた金木犀を見なくなったような感覚。しかし毎年の意味のない反復がつづく。今も祭りが行われているか知らないが、7月24日が来ると祭りの思い出は勝手に咲くのだ。

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