献血
この前彼女にフラれた。
リアリティのある感想を言うと、1番辛いのは彼女の写真を消している時だなあというのと、友達と話している時に別に自分から言い出すことではないなあということだ。
そんな感じで死にたかったので、少しでも人のためになることをしようと思い、フラれた次の日に献血ルームに行った。
前日の雪は雨に変わり、道端の氷を溶かしていった。僕は献血ルームの入り口の傘立てに傘を置くと受付に向かった。
ロビーには老人が点在していた。きっと善良な老人に違いない。あのお爺もフラれたのかな、とか思うと楽しくなってきた。
献血に来るのは2度目だったのでことはスムーズに運んだ。受付を終えると早速可動式の椅子に促される。
「前回来ていただいた際に気分が悪くなったと言うことで、今回も気分が悪くなったらすぐに仰ってください。また献血後に気分が悪くなった際はすぐにしゃがんでくださいね」
要は立ったままふらつくと頭を打って命の危険があるので、すぐにしゃがめと言うことだった。
合理的だなあと思ったりして15分ぐらい経つと採血は終わった。
いつのまにか元カノのことを考えていた。
前回は献血後すぐに吐き気がしたのだが、今回は平気で、少し歩いても気分は快調だった。
一応はロビーで安静にして、そろそろ帰っていいよとなった。
僕は立ち上がり、心機一転の清々しさのようなものを感じる。
これで今年の厄は終わっただろう。
今年のおみくじ「半凶」だったけどすぐ伏線回収されたなあ。
「半凶」ってなんなんだろう。もう半分は。「半狂」の方がかっこいいかもなあ。
首に下げていたナースコールを受付で返す。
傘を手に取り、エレベーターに乗ろうとした。
傘がない。
いや、確かに持ってきたはずだ。
第一献血に行くような、善良な老人たちが傘を盗むなど夢想だにしなかった。
まずい、凶が侵食してくる。
もう半分の吉をもとめて、受付のお姉さんに聞く。
「傘ないんですけど、なんとかなりませんか?」
「申し訳ないです、無理ですねえ」
目元は少しだけ元カノに似ていた。気のせいか。
そうですか。
うん。
僕は頭を抱えて、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
追記
フラれた次の日にこの漫談が仕上がったけど、はっきり言って異常
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