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通学路

小学生の頃、通学路には緑のベストを着たおじさんおばさんがいた。

その大切さに気づくのは少し大人になってからだった。

小学2年生。

ようやく集団登校で1年生ポジション(班長の真後ろ)から逃れることができ

ようやく名札も標準サイズまで小さくなり

ようやくランドセルから黄色いカバーを外せるようになったばかりだった(私と同じ小学校の人だけ楽しかったらいいです)。



さて、小2の私は通学路に怪しい人影を見つけた。


おじさんだった。

ここで怪しむべきなのは、そのおじさんが緑のベストを着ていないということだった。

これだけなら、『親御さんかな?』という思考に至ってもおかしくはない。

私がそう考えなかったのにはもちろん理由がある。

おじさんは小学生の列を、盆栽を見るみたいに眺めていた。

ヤバである。

親御なら我が子を送れば終わりでいいはずであり、わざわざ直立不動で居座る道理は、無い。

そうこうしていると、我々の班はおじさんの前まで来てしまっていた。

すると突然、なぜか満足げな顔をしたおじさんが口を開いたのだ。


「うーん、繊細な目をしているな。」


激ヤバである。

「せんっさいな」という溜め方から、子供の純朴さに理想を抱く恐怖を感じる。

というか、小学生を見て最初の感想がそれなら、それはもうほとんど罪みたいなもんだった。

なにか不穏だ、と思った次の瞬間。

『おはようございまーす!』

我々の班とおじさんの間に割って入るように、緑のおじさんが挨拶をかましてきた。

その日は占いとか見てなかったかもしれないけれど、多分ラッキーカラーは緑だったのだと思う。

大人になった今だからこそ、あの時の緑のおじさんに感謝の思いを持てるようになった。


ありがとーーーー!!!!


緑のおじさん!!!!!


おばさんも!!!!!!!


あなたのおかげで僕たちは!!!!!



いまでも!!!





繊細な目をしています!!!!!!!!!!!

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