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どうでもいい話



「あの〜、どうでもいい話なんですけど…」

義務教育の授業は進度がいちいち決められているので、演習問題を終えるとよく時間が余っていた。


小学5年生の頃の担任はそんな空き時間に、よく「どうでもいい話」を始めた。

先述の話出しから始まり、サッカー部の頃の話など多くは先生の子供の頃の話だった。


「あの〜、」


今日も始まった。周りの「授業したくない人たち」は既に歓喜の表情を浮かべている。


「どうでもいい話なんですけど…」

ウオォォォ!!

基本的に「どうでもいい話」が始まると授業は終わりになるので、生徒からは人気があった。

今思うと授業がプラスの印象で終わる、かなり良いシステムだと思う。


「俺がサッカー部の頃の話なんだけど、結構厳しい部活だったから、部室に変なもの持って来ちゃダメだったのね?


だけど同級生のやつがマックのハンバーガー持ってきて食べ始めて、その時に監督が部室に入ってきちゃって。


慌てて隠したんだけど監督が『なんか変な匂いしないか?』って気づいちゃって!


当時はよくあったんだけど、『全員並べ』って言われたの!ビンタするぞってことね」


やっぱり教師は話し慣れてるのだろうか、それなりに話がうまかった。


「それで並んだんだけど、部員に双子のやつがいたのね?そいつらがたまたま隣に並んでて、


監督が順番にビンタしていくのよ。


パァン!パァン!って。でもちろん俺もビンタされて、その双子もそれぞれビンタされたんだけど、めっちゃ顔似てたから、


 監督が同じ顔のやつ2回叩いたって錯覚して、その双子の後から1人二発ずつビンタしてったのよ!!!」


大爆笑だった。


実際この話は今の感覚でも面白いと思うし、当時の私も笑っていた。




ところで私は当時からお笑いが好きで、YouTubeで漫才の動画をよく見ていた。(今と違って倫理観もなく違法アップロードが主だった)


そして、たまたま一本の動画にたどり着いた。


「すべらない話①作業用」


もしかしたら見たことがある人もいるだろうが、エピソード番組『すべらない話』の音声のみをたくさん集めた動画だ。

動画の再生が始まる。イヤホンの中ではほっしゃんが喋っていた。

「あの〜」

「僕ソフトテニス部だったんですけど〜、


先輩に双子の方がいらっしゃったんですよ」

「そのときの先生がむちゃくちゃ厳しくて、練習中に全員並ばせたんですよ。


そんで1人ずつビンタしていったんですけど、たまたま双子が隣で並んでて、先生がビンタして行ったんですよ…」


「そしたら似てる顔を連続で叩いたもんだから…」


そこから先は聞くまでもなかった。


さて、そこから「どうでもいい話」を思い返して調べてみると、その半分ぐらいがすべらない話のものであることがわかった。


今考えればそんなに面白い話がポンポン出てくるわけもないし、小学生相手だししょうがないという考えだったのだろうと同情できる。


しかしそこから先の私はもう「どうでもいい話」を純粋に楽しめる体ではなかった。

つまり、どうしてもその話が「すべらない話」のパクリであるのか、それとも実体験なのかが気になってしまうのだ。


今日も、「どうでもいい話」が始まる。


「めちゃくちゃよく似てる弟がいるんですけど…向こうから来たら『え?俺!?ああ弟か』ってなるみたいな。

それでそいつと海水浴に行ったんですけど…

(中略)

…そしたら溺れかけて、海から上がってきたらアイツ、パンツにワカメ挟まってたのよ!!!」




この話はパクリでもないし、本当の話でもないな。



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