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vol.2 インタビュー : 的野 哲子

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的野 哲子 | Matono Satoko
2000年 岡山県出身
2023年 京都精華大学 芸術学部 造形学科 テキスタイル専攻 卒業
2024年 京都精華大学大学院 芸術研究科 博士前期課程 染織領域 1年次 在籍

Q
ご自身のルーツについて教えてください。

A
美術との出会いに関しては、今となってはそうなのかもなと思うことになります。私の生まれが岡山の備前市というところなんですけど、祖父のお友達で備前焼作家の方がいて、私が幼い頃から、祖父が趣味で置物をつくっているのを身近に見ていたり、祖父が土を触っているところに遊びに行くと、「なんか作るか?」と言ってくれて、私は、「うん、作りたい!」みたいな思い出があります。それが、今になって思うことなんですが、祖父は作家さんではなかったけれど、初めの工芸とか美術の世界との出会いはこのタイミングだったのかもしれないなと思ったり。
それ以降は例えば、高校時代も高校生活はすごく思い出深くて大切な時間を過ごしたなと思うんですが、学校の授業で学ぶ科目にどうしても興味が持てなくて、自ら意欲的に学びにいけず...。その中で高校時代は入っていた部活が写真部と茶道部だったんですけど、写真部で尾道に遠征をして他の部員たちと撮影会をしたり、茶道部で学校外のお茶会に参加させていただいて、本格的なお手前を教わったり。部活動に入ったことをきっかけに、私は、こういう芸術や文化に興味があるなと思い始めました。私は、高校卒業後は大学進学が目標だったので、そろそろ受験する大学を定めなければというタイミングで、建築に興味を持っていて、建築が学べる大学を受験しようと考えて受験に必要な内容を調べている時に、当時受験を志していた大学は、実技が必要っていうことに気づいて、受験の時にデッサンとか色彩構成とかがあるんだということ知って、それまで基礎的なデッサンの知識も何もなかったので、画塾に通わせて学ばせてもらえることになり、その通っていた画塾で芸術の世界の広さといろどりにすごく衝撃を受けました。それと同時に「私は、この道に進みたい。」と思ったことが、明確に芸術の道に足を踏み入れた瞬間で、ルーツに当たる出来事だと思います。


Q
どのような視点から興味を持ちましたか?

A
何気なく生活している中で、身の回りにある椅子とか机とか洋服とかもそうなんですけど、そうゆうものの部分部分に対して、純粋にこの曲線かっこいいなとか、素材がなんとなくたまらないなとか、そうゆう思いから派生して、こんな素敵なものを自分が生み出せたら、なんて喜ばしいだろうと思っていたんです。進路を決めるほど成長するまでも文字を書いたり、絵を描いたり、工作をしたりは苦しいと思ったことがないほど自分が取り組んでいて好きな行為でした。だから、 物を作るということを学べる、尚且つ、自分の周りの人たちからも反対や心配を受けにくい分野が、当時の私にとっては建築だったので、芸術に関連する分野の中でも建築へ一番初めは興味を持ちましたね。

A
画塾はどうしても絵の技術を学ぶところなので、どのように芸術に対しての視野を広げていったのかなと気になりました。

Q
私の場合は、通ってた画塾が大学受験に向けてデッサンとか色彩構成を中心にバリバリやるだけではなくて、いろんな視点から自分の思考を育てることを重視してくれて。そのスタイルが私にはすごく合っていて、芸術の中でもどんな分野があるかを主体的に探れる環境を整えて下さっていたので、自分が憧れる作家さんがその時に見使ったり、そこからその作家さんの考えを調べて知って自分の思考と重ね合わせてみたり、芸術関係以外の分野も含め、それこそ数えきれないあらゆる視点から、自分のペースで、できるだけ自分の興味のあるものに触れていくことで、自分のできる限りの視野を広げていきました。

Q
どのような作品を作ってるのか教えてください。

A
この世界、この地球を創り出している、『あらゆる作用の存在』を意識しながら、そのあらゆる作用と自分の中にある『次元を超えた世界の存在』とが関係し合っていることに視点を置き、その思考から出てくるイメージを造形として表現しようと制作をしています。

Q
ちなみに的野さん自身は具象と抽象のどちらで制作していますか?

A
どちらかというと抽象的な作品を制作してると言えると思います。私の表現したい「作用」は存在している状態で、それを人がなんらかの形で触れていたとしても、実感がなかったり、直接的に触れられるものでない可能性があります。それらの作用を私の中で解釈して、私たちの目や体や心で触れられる形に表現したくて、今は抽象的な表現の仕方で制作をしています。

Q
どのような思いで制作に取り組んでいるのかを教えてください。

A
制作している時は、その時間がとてつもなく特別で、自分の中にあるものがたくさん飛び出てきて滲み出てきて、出てきたものが混じり合って見たことのないようなものに変化したり理科の実験の化学変化に近いような感覚で取り組んでいます。制作に区切りがついた時には、作品を観てくださる方が純粋に楽しい明るい気持ちになってもらえたりとか、癒されたり。作品を観ていただいてる時間が束の間でも、自分の大切な時間として過ごしてもらえたらいいなと思いながら制作をしています。

Q
今後制作を進めていく上で、大きな作品を作るだとか、大作を作るとなった時にも、同じ考え方やスタンスを貫きますか?

A
根本的な考え方は、揺らぐことはないと思います。大きな作品も大作も自分の制作に変わりはないので。ただ、変化していくことも大切なことだと私は思っています。以前はこう考えていたけど、今はこう考えている。みたいなことはあっていいと思うし、それは言うなれば、新たな栄養を吸収したことで大きくなるので、脱皮して、でもその皮はしっかり食べて体の栄養に蓄える。のような自分を磨き高め深める行為だと思うんです。だから、核にあるものははきっと変化しないのだろうけれど、その周りにどんどん層が積み重なって肉付けされていき塊は大きくなります。その塊は「私」であり、私のなかの宇宙の「惑星」でもあります。その私=惑星はいつしかまた核となってさらに大きくなっていく。今は、そんな風に考えています。

Q
アートに関わる魅力について教えてください。

A
私の場合は、色んな人と関わるのがすごく好きで、ほんとにたわいもないお話をはじめ、私の作品を見ていただいた時のご感想だったりとか、アートの場の存在から広がる交流一つ一つが唯一無二であるところが、アートに関わる魅力だと思っています。一つの分野に限らず、本当に数えきれないほどの分野や人、もの、環境などを含め、さまざまな作用との交流を経験できるところが私にとってはかけがえのないものになっています。


Q
これまで行った展示や個展について教えてください。

A
大学院生になって、さまざまな展示の機会をいただきました。その中でも個展といえば、去年初めて『地球人による集合X』という個展を開催しました。その際は自分の作品を展示させていただくのはもちろん、それと同時にワークショップをして、来てくださった方に触れられる思い出として何かものに残していただけたらいいなと思って、気軽に生活に取り入れてもらえるのではないかと考えた巾着袋を活用し、私が制作で用いる技法をほとんど同じ形で体験してもらい、オリジナルの巾着袋を作ってもらうという企画も取り入れました。また展示した作品は、とにかくその時の自分の中で表現したいというものに、壮大なイメージがあったので、過去の中では一番大きなサイズである、W8m×H2.5mのサイズの作品を制作し、その作品も含めて会場に地球人=的野の作品たちが集合したかのような意味を込めて、個展を開催しました。


Q
アーティストとして的野さん自身が目指していることを教えてください。

A
実は自分はアーティストですって言えない自分がいるので、アーティストとしてというか人間的野としてになってしまいますが、いろんな方たちと交流させていただきながら、少しでも穏やかな時間を過ごせる方が増えるような環境をつくる一部になれたらいいなと思ってます。そのために、正直に目の前のことに向き合いながら、少しずつ少しでもそういう存在になれるよう、過ごしていきます。


Q
今後他の表現方法や挑戦してみたいことを教えてください。

A
私としては、今後普段芸術に触れる機会のない方や少ない方とも作品や展示を通して交流させていただく機会を増やしたいと考えています。それこそ野外展示を含む、公共空間に展示することに挑戦したいですし、そのような自分の希望に沿って、展示環境を変えることのできない環境と向き合いながら、展示を考えたいです。表現方法としては、現時点では、シルクスクリーンの技法を応用したオープンスクリーンという技法を自らの中では絵画技法と捉えて、平面作品を制作していますが、明かに立体として自分のイメージが表現できるような方法も今後探求していき、表現方法も広げていきたいと考えています。


インタビュアー : 岩永 稜央

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