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倫理委員会:IRB

倫理委員会(IRB)の役割は何でしょうか?

倫理委員会(Institutional Review Board、IRB)の役割は、臨床研究や人を対象とした研究が倫理的に適切かつ法的に適合しているかを審査・監督することです。具体的には、以下のような役割があります:

  1. 倫理的な適合性の審査:研究が参加者の権利、安全、福祉を保護するために倫理的に適切であるかを確認します。これには、参加者の同意手続きが適切かどうかの確認も含まれます。

  2. 研究計画の評価:研究計画やプロトコルを評価し、リスクと利益のバランスが適切であるか、また研究目的が正当であるかを判断します。

  3. インフォームド・コンセントの確認:参加者が研究の目的、手順、リスク、利益について十分な情報を得て、自発的に同意を与えているかどうかを確認します。

  4. 継続的な監視:研究の進行中も定期的に監視し、予期せぬリスクや問題が発生した場合に対応します。

  5. 規制遵守の確保:研究が国内外の法規制やガイドラインに従っているかを確認します。これには、米国では45 CFR 46(通称「コモンルール」)などの規定が含まれます。

  6. 報告義務の遂行:研究結果や進捗状況、倫理的問題に関する報告を適切に行うよう指導し、必要に応じて関連機関への報告を行います。

IRBは、研究の倫理的側面を独立して審査することで、研究参加者の保護と研究の信頼性を確保する重要な役割を果たしています。

IRBの構成メンバーは、どのように定義されていますか?

IRB(倫理委員会)の構成メンバーは、多様な視点と専門知識を確保するために以下のように定義されています:

  1. 科学的専門家:医師、研究者、生物学者など、研究の科学的側面について評価できる専門家が含まれます。彼らは研究の設計、方法、リスク評価に関する知識を提供します。

  2. 非科学的専門家:弁護士、倫理学者、社会科学者など、科学以外の視点から研究の倫理的側面を評価する専門家が含まれます。彼らは、法的および社会的な影響についての洞察を提供します。

  3. 地域住民代表:研究機関に関係のない一般市民が含まれます。彼らは研究参加者の視点を代表し、研究の一般的な社会的受容性や参加者の利益について評価します。

  4. 多様な背景と性別:IRBは、多様な背景と性別のメンバーを含むように構成されます。これは、異なる視点と経験が反映されることを保証するためです。

米国の規定(45 CFR 46)によれば、IRBは少なくとも5人のメンバーで構成され、そのうち少なくとも1人は科学的専門家、1人は非科学的専門家でなければなりません。また、IRBのメンバーは、性別、文化、専門分野において多様でなければならず、特定の利害関係を持つメンバー(研究に直接関与する人など)が過半数を占めてはならないとされています。

これにより、IRBは研究の倫理的・科学的な評価をバランスよく行い、研究参加者の権利と安全を守ることができるのです。

日本ではどうでしょう?

日本におけるIRB(倫理委員会)の構成メンバーについては、以下のように定義されています。日本でも、倫理的な適正を確保するために多様な専門知識と視点を持つメンバーで構成されることが求められています。

日本のIRB構成メンバーの基本要件

  1. 科学的専門家

    • 医師、看護師、薬剤師、研究者など、研究の科学的・医学的側面について評価できる専門家が含まれます。

    • これには臨床試験や基礎研究に関する知識を持つ者が求められます。

  2. 非科学的専門家

    • 法律家、倫理学者、社会科学者、宗教家など、科学以外の視点から研究の倫理的側面を評価する専門家が含まれます。

    • これにより、法的、社会的、倫理的な問題についての多様な意見を取り入れることができます。

  3. 一般市民(地域住民代表)

    • 研究機関に直接関係のない一般市民が含まれます。

    • これにより、研究参加者の視点を反映し、一般的な社会的受容性や参加者の利益について評価することができます。

  4. 多様な背景と性別

    • IRBは、性別や専門分野において多様なメンバーで構成される必要があります。

    • 異なる視点や経験を持つメンバーが含まれることで、バランスの取れた審査が行われることを保証します。

日本の規定とガイドライン

日本におけるIRBの構成は、主に以下のようなガイドラインや規定に基づいています。

  1. 厚生労働省のガイドライン

    • 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」など、厚生労働省が定めるガイドラインに基づいています。

    • これらのガイドラインは、研究の倫理的・法的適合性を確保するための具体的な基準を示しています。

  2. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のガイドライン

    • 医薬品や医療機器の臨床試験に関するガイドラインが含まれます。

    • これにより、治験における倫理的配慮が強化されています。

実施上の留意点

  • 独立性の確保

    • IRBのメンバーは、研究に直接関与しない者も含むようにして、審査の独立性を確保する必要があります。

  • 継続的な教育と訓練

    • IRBのメンバーは、継続的に教育と訓練を受け、最新の倫理的・法的知識を習得することが求められます。

日本におけるIRBは、研究参加者の権利と安全を守るために、国際的な基準に準じて構成され、多様な視点と専門知識を取り入れることが重視されています。

日本では、宗教家として僧侶が入ることがありますが、欧米ではユダヤ教やイスラム教の宗教関係者が入ることもあるのでしょうか?

欧米においても、IRB(倫理委員会)のメンバーには多様な背景を持つ人物が含まれることが推奨されています。そのため、ユダヤ教やイスラム教の宗教関係者がIRBのメンバーとして参加することは十分にあり得ます。以下に、宗教関係者の役割や意義について説明します。

宗教関係者の役割

  1. 倫理的視点の提供

    • 宗教関係者は、宗教的倫理や価値観に基づいて研究の倫理的側面を評価します。

    • これにより、宗教的な背景を持つ参加者の視点を反映することができます。

  2. 文化的多様性の促進

    • 多様な宗教的背景を持つメンバーが参加することで、文化的多様性を促進し、さまざまな価値観を取り入れることができます。

    • これにより、研究が異なる文化や宗教的背景を持つ人々にも受け入れられやすくなります。

  3. 社会的受容性の評価

    • 宗教関係者は、研究が社会的に受け入れられるかどうかを評価する際に重要な視点を提供します。

    • これは特に、研究が宗教的信念や慣習に影響を与える場合に重要です。

欧米における実際の例

  • ユダヤ教のラビ

    • 一部のIRBには、ユダヤ教のラビがメンバーとして参加している例があります。彼らは、ユダヤ教の倫理観に基づいて研究の評価を行います。

  • イスラム教の指導者(イマーム)

    • イスラム教徒の多い地域や大学などでは、イスラム教の指導者がIRBに参加していることもあります。彼らはイスラム教の価値観に基づいて倫理的な助言を提供します。

実施上の注意点

  • 多様性のバランス

    • 宗教関係者を含むIRBの構成は、他の専門家や一般市民とバランスを取ることが重要です。

  • 教育と訓練

    • 宗教関係者も他のメンバーと同様に、IRBの役割に関する教育と訓練を受けることが求められます。

結論

欧米でも、日本と同様に、宗教関係者がIRBのメンバーとして参加することはあります。これにより、多様な倫理的・文化的視点を取り入れることができ、研究の倫理的適正をより広範に評価することが可能となります。

倫理委員会は、医学的、科学的側面の評価も含まれるのでしょうか?

はい、倫理委員会(IRB)は、倫理的側面だけでなく、医学的および科学的側面の評価も含まれています。以下にその具体的な評価内容について説明します。

医学的評価

  1. リスクと利益の評価

    • 研究が参加者に与えるリスクと期待される利益を評価します。リスクが過大でないか、利益がリスクを上回るかどうかを判断します。

  2. 安全性の評価

    • 研究における介入や治療が参加者にとって安全であるかを確認します。これには、既存のデータや前臨床試験の結果も含まれます。

  3. 適切なモニタリング

    • 研究中に参加者の安全を監視するための計画が適切に整備されているかを確認します。これには、有害事象の報告体制や緊急時の対応策が含まれます。

科学的評価

  1. 研究デザインの妥当性

    • 研究のデザインが科学的に妥当であり、研究の目的を達成するのに適しているかを評価します。これには、研究方法、サンプルサイズ、統計解析計画が含まれます。

  2. 実施可能性

    • 研究が実際に実施可能かどうかを評価します。これは、資金、設備、研究者の経験と能力などに基づいて判断されます。

  3. データの信頼性

    • 研究データが信頼できるものであるか、研究結果が再現性を持つものであるかを評価します。データの収集方法や管理方法が適切であるかも重要なポイントです。

倫理的評価

  1. インフォームド・コンセント

    • 参加者が研究の目的、手順、リスク、利益を十分に理解し、自由意思で参加するかどうかを確認します。インフォームド・コンセント文書が適切に作成されているかも評価します。

  2. 参加者の権利の保護

    • 研究が参加者の権利、尊厳、プライバシーを尊重しているかを確認します。特に脆弱な集団(子供、高齢者、精神疾患患者など)に対する保護措置が取られているかが重視されます。

  3. 公正性

    • 研究が公正に実施されているか、参加者の選定が偏りなく行われているかを確認します。

総合評価

倫理委員会は、医学的、科学的、倫理的な観点から総合的に研究を評価し、研究の適正さを判断します。この多面的な評価により、研究参加者の安全と権利が保護されるとともに、研究が科学的に有用で信頼できるものとなることを確保します。

IRBのメンバーは多様な専門知識を持つ人々で構成されており、これにより各側面の評価がバランスよく行われます。科学的専門家、倫理学者、法律家、一般市民などが含まれることで、さまざまな視点から研究が審査されます。

IRBの評決はどのようにして決定されますか?

IRB(倫理委員会)の評決は、慎重な審査と協議を経て決定されます。以下は一般的なプロセスです:

1. 事前審査

  • 資料の配布:研究プロトコル、インフォームド・コンセント文書、リスク評価などの関連資料が事前にIRBメンバーに配布されます。

  • 予備評価:各メンバーは資料を読み、初期評価を行います。

2. IRB会議

  • 定期会議:IRBは定期的に会議を開催し、提出された研究計画を審議します。会議は通常、対面またはオンラインで行われます。

  • 議長の役割:IRBの議長(または指定されたメンバー)が会議を主導し、議題を進行します。

  • 研究者の説明:場合によっては、研究者が参加し、研究計画の概要や目的、方法について説明し、質問に答えることがあります。

3. 協議と討論

  • 審議:IRBメンバーは研究計画の倫理的側面について討論します。リスクと利益のバランス、参加者の保護、インフォームド・コンセントの適切性などが評価されます。

  • 意見の収集:各メンバーの意見を収集し、重要なポイントや懸念事項について議論します。

4. 決定

  • 投票:通常、最終的な決定は投票によって行われます。投票の方法は以下の通りです:

    • 賛成:研究計画がそのまま承認される。

    • 条件付き承認:特定の条件や修正が行われることを前提に承認される。

    • 保留:さらに詳細な情報や修正が必要である場合、承認が保留される。

    • 否認:研究計画が倫理的に問題があると判断される場合、否認される。

  • 過半数の賛成:決定は通常、過半数の賛成によって行われますが、重要な決定の場合には特別な規定が設けられていることもあります。

5. 通知とフォローアップ

  • 結果の通知:研究者に対して、IRBの決定とその理由が公式に通知されます。条件付き承認や保留の場合、必要な修正点や追加情報も通知されます。

  • フォローアップ:研究の進行状況を監視し、定期的な報告を求めることで、継続的に倫理的な遵守を確認します。

特記事項

  • コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反):IRBメンバーに利益相反がある場合、そのメンバーは該当する審査から除外されることが求められます。

  • 透明性の確保:審査過程や決定理由の透明性を保つため、詳細な記録が保持されます。

このように、IRBの評決は多角的な視点からの審査と協議を経て慎重に行われ、研究参加者の権利と安全を最優先に考えた決定がなされます。

全会一致でなくて良かったですね。

はい、全会一致でなくても決定ができる点は、IRBの柔軟性と効率性を確保するために重要です。以下はその理由と意義です:

全会一致でない場合の意義

  1. 効率的な意思決定

    • 全会一致を必要とすると、意見の相違がある場合に決定が遅れる可能性があります。過半数の賛成で決定できることで、審査プロセスが迅速に進み、研究の開始や進行が遅れることを防ぎます。

  2. 多様な意見の尊重

    • 多様な背景や専門知識を持つメンバーが集まるIRBでは、すべてのメンバーが完全に同意することは難しい場合があります。過半数の賛成で決定することで、多様な意見を反映しつつも、実際的な結論に到達することができます。

  3. バランスの取れた審査

    • 全会一致を求めると、少数意見が過度に影響力を持つ可能性があります。過半数の賛成で決定することで、バランスの取れた審査が可能となり、多数のメンバーの意見が適切に反映されます。

具体例

  • 議論と妥協

    • メンバー間で意見が分かれる場合も、建設的な議論と妥協を通じて最適な決定に近づけることができます。

  • 再審査の機会

    • 条件付き承認や保留の決定がなされた場合、研究者はIRBの指摘に基づいて計画を修正し、再審査を受けることができます。これにより、最終的により良い研究計画が承認される可能性が高まります。

実施上の注意点

  • 透明性と記録保持

    • 投票結果や議論の内容を詳細に記録することで、決定の透明性と正当性を確保します。

  • 利益相反の管理

    • 利益相反があるメンバーは審査から除外されるなど、公平性を保つための対策が重要です。

このように、全会一致ではなく過半数の賛成で決定できるシステムは、IRBの柔軟性と実効性を高めるために重要な要素です。

年に一回の継続審査も義務でしょうか?

はい、年に一回の継続審査(継続審査または定期審査)は多くの国や地域で義務付けられています。これは、研究が進行中においても倫理的に適正であることを確認し、参加者の権利や安全が保護されていることを保証するための重要なプロセスです。

継続審査の義務とその理由

  1. 法規制とガイドライン

    • 多くの国の法規制やガイドライン(例えば、アメリカの45 CFR 46やICH-GCP、EUの指令など)は、IRBが研究の進行状況を定期的に監視し、少なくとも年に一度継続審査を行うことを義務付けています。

    • 日本においても、厚生労働省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」などで継続審査が求められています。

  2. 研究の進行状況の確認

    • 継続審査では、研究が計画通りに進行しているか、また当初のリスク評価や利益評価に変更がないかを確認します。

    • 新たなリスクが発生した場合や計画の変更が必要な場合には、適切な対応が取られることを保証します。

  3. 参加者の安全と権利の保護

    • 継続審査により、研究参加者の安全と権利が常に守られていることを確認します。

    • インフォームド・コンセントのプロセスが適切に行われているか、参加者に対する説明が十分であるかなども評価されます。

継続審査のプロセス

  1. 年次報告書の提出

    • 研究者は、IRBに対して年次報告書を提出します。この報告書には、研究の進行状況、参加者の募集状況、発生した問題や有害事象、計画の変更点などが含まれます。

  2. IRBによる評価

    • 提出された年次報告書を基に、IRBは研究の進行状況を評価します。必要に応じて、追加情報を求めることもあります。

    • 評価の結果、研究が継続可能であるかどうかを判断します。問題がある場合には、修正や中止を求めることもあります。

  3. 継続承認

    • IRBが継続を承認した場合、研究は次の継続審査まで進行を続けることができます。承認は通常1年間有効です。

特記事項

  • リスクの再評価:継続審査の際には、当初のリスク評価に基づいて新たな情報を取り入れ、リスクと利益のバランスが適切であるかを再評価します。

  • 監査と訪問:必要に応じて、IRBは現地訪問や監査を実施し、研究が適正に実施されていることを確認します。

このように、年に一回の継続審査は、研究が倫理的に適正であり、参加者の権利と安全が常に守られていることを確認するための重要な手段です。

研究者が参加する場合と参加出来ない場合がありますね。

はい、IRB(倫理委員会)の審査会議において、研究者が参加できる場合とできない場合があります。これは、透明性と公平性を確保しつつ、効果的な審査を行うための措置です。以下に、研究者が参加する場合と参加できない場合の違いや理由について説明します。

研究者が参加できる場合

  1. 研究計画の説明

    • 研究者は、研究計画の概要や目的、方法、期待される結果についてIRBメンバーに直接説明することができます。

    • 研究の具体的な内容や背景、研究に対する深い理解を提供することで、IRBがより正確な評価を行えるようにします。

  2. 質疑応答

    • IRBメンバーが研究計画に関して質問や懸念を持っている場合、研究者はその場で直接回答し、説明を行います。

    • これにより、IRBの理解が深まり、誤解や不明点が解消される可能性が高まります。

  3. 透明性の確保

    • 研究者が参加することで、審査プロセスの透明性が高まり、研究者自身もIRBの懸念や要求を直接理解することができます。

研究者が参加できない場合

  1. 利益相反の回避

    • 研究者が審査の議論や決定プロセスに影響を与えることを避けるため、最終的な投票や決定の際には研究者の参加が制限されることがあります。

    • これにより、IRBメンバーが独立した判断を下せる環境が確保されます。

  2. 公平性の維持

    • 研究者が参加している場合、他のメンバーに対する影響力が生じる可能性があります。これを防ぐために、重要な決定や投票の際には研究者の参加を制限することがあります。

  3. 独立性の確保

    • IRBは独立した機関として、研究計画の倫理的適正を客観的に評価する役割を果たします。研究者が参加しないことで、独立性がより確保されます。

実施上のプロセス

  1. 事前説明

    • 研究者は事前にIRBに対して研究計画を提出し、必要に応じて説明会に参加します。この際に、IRBメンバーからの質問に答えることが求められます。

  2. 非公開の議論

    • 研究者が説明を終えた後、IRBメンバーは非公開で議論を行います。この際に研究者は参加せず、メンバー間で自由に意見交換が行われます。

  3. 最終決定

    • 非公開の議論を経て、IRBは最終的な決定を下します。決定内容は研究者に正式に通知されます。

まとめ

研究者がIRBの審査会議に参加することで、研究の理解が深まり、透明性が高まる一方で、最終的な決定や投票の際には独立性と公平性を確保するために参加が制限される場合があります。これにより、IRBはバランスの取れた審査プロセスを維持し、研究の倫理的適正を確保することができます。

臨床研究の登録が義務づけられたのはいつからでしょうか?

臨床研究の登録が義務づけられたのは、主に2000年代の初頭から中盤にかけての出来事です。以下に、具体的なタイムラインと主要な出来事を示します。

1. 世界的な動向

2000年

  • ClinicalTrials.govの開始:米国では、米国国立衛生研究所(NIH)がClinicalTrials.govを開設しました。このウェブサイトは、臨床試験情報の登録と公開を目的としています。

2005年

  • ICMJEの要件:国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)は、すべての臨床試験を公開することを求める声明を発表しました。この声明によって、多くの主要な医学雑誌が、臨床試験の登録を論文の掲載条件としました。

2. 米国

2007年

  • FDA Amendments Act:米国では、食品医薬品局(FDA)改正法(FDAAA)が成立し、2008年から施行されました。この法律により、特定の臨床試験(主にフェーズ2~4の薬剤および装置に関する試験)の登録が義務付けられました。

3. 日本

2003年

  • UMIN-CTRの開設:日本では、大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)による臨床試験登録システム(UMIN Clinical Trials Registry)が開設されました。この時点で、一部の臨床研究の自主的な登録が推奨されていました。

2006年

  • 法的要件の導入:厚生労働省は、臨床試験の登録を促進するためのガイドラインを発表し、特定の臨床試験の登録を義務付けるようになりました。

2015年

  • 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」:この指針により、臨床研究の登録がさらに明確に義務付けられました。研究者はUMIN-CTRやJPRN(Japan Primary Registries Network)などの適切な登録機関に試験を登録することが求められるようになりました。

4. 欧州連合(EU)

2001年

  • EU指令2001/20/EC:臨床試験の登録と報告の要件を含む指令が発行されました。この指令は、臨床試験の透明性と情報公開を促進するための最初のステップとなりました。

2011年

  • EU Clinical Trials Registerの開始:欧州連合は、臨床試験の公開登録を行うためのEU Clinical Trials Registerを開始しました。

まとめ

臨床研究の登録の義務化は、2000年代初頭から中盤にかけて、特に主要な規制機関や学術団体の取り組みによって進展しました。これにより、臨床試験の透明性が向上し、研究結果の公開が促進されるようになりました。各国や地域での具体的な義務化のタイミングは異なりますが、グローバルな動向としては、2005年のICMJEの声明と2007年のFDAAAの成立が大きな節目となっています。

登録せずに行われた臨床研究にリスクや不利益はありますか?

はい、臨床研究を登録せずに行うことにはいくつかのリスクや不利益があります。以下にその主要なポイントを説明します。

1. 倫理的リスク

参加者の保護の欠如

  • 登録されていない臨床研究は、適切な倫理審査を受けていない可能性があります。これにより、参加者の安全や権利が十分に保護されないリスクが高まります。

透明性の欠如

  • 研究が登録されていない場合、研究の目的、方法、結果などが公開されないため、透明性が欠如します。これにより、研究の信頼性や公正性が疑われる可能性があります。

2. 法的および規制上のリスク

法令違反

  • 多くの国では臨床研究の登録が法的に義務付けられています。登録せずに研究を行うことは、法令違反となり、法的な制裁を受ける可能性があります。

規制機関からの制裁

  • FDAやEMAなどの規制機関は、未登録の臨床試験に対して罰金やその他の制裁措置を課すことがあります。これは、企業や研究者にとって重大な財務的リスクとなります。

3. 科学的リスク

データの信頼性の低下

  • 登録されていない研究は、他の研究者や医療機関からの検証や再現性の確認が困難になります。これにより、研究結果の信頼性が低下します。

出版の制約

  • 多くの医学雑誌は、ICMJEのガイドラインに従い、未登録の臨床試験の論文を掲載しません。これにより、研究結果の公表が制限され、学術的な評価や認知が得られなくなる可能性があります。

4. 社会的および経済的リスク

公共の信頼の喪失

  • 登録されていない研究は、一般市民や患者、研究コミュニティからの信頼を失う可能性があります。これにより、将来的な研究への参加者募集が難しくなるかもしれません。

資金提供の制約

  • 多くの資金提供機関やスポンサーは、研究が適切に登録され、倫理的に実施されることを条件として資金を提供します。登録されていない研究は、資金提供を受けられないリスクがあります。

5. 道義的リスク

倫理的責任の不履行

  • 研究者には、研究参加者の安全と権利を守る倫理的責任があります。登録されていない研究は、この責任を果たしていないと見なされる可能性があります。

利益相反のリスク

  • 未登録の研究では、利益相反が十分に管理されない可能性があります。これにより、研究結果が歪曲されるリスクが高まります。

まとめ

臨床研究を登録せずに行うことには多くのリスクと不利益が伴います。これらのリスクを回避し、研究の透明性、信頼性、倫理性を確保するために、臨床研究の登録は非常に重要です。研究者は、法的義務や倫理的責任を遵守し、研究の登録を適切に行うことが求められます。

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