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特定臨床研究

臨床研究を計画するときに、都道府県に申請する必要はありますか?

臨床研究を計画する際、都道府県に直接申請する必要は基本的にはありません。ただし、臨床研究の内容や実施場所に応じて、以下の点に留意する必要があります。

  1. 倫理委員会の承認: 臨床研究を実施する際には、通常、研究を行う医療機関や研究機関の倫理委員会の審査と承認が必要です。倫理委員会では、研究の倫理性や患者の安全性、インフォームドコンセントの適切性などが審査されます。

  2. 治験の場合: 新薬や新しい医療機器の臨床試験(治験)を行う場合は、厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)への申請と承認が必要です。また、治験を行う医療機関が都道府県立である場合、都道府県との調整が必要となることがあります。

  3. 感染症法の遵守: 感染症に関する研究を行う場合、感染症法に基づく届出が必要な場合があります。これは、特定の病原体を扱う研究に関連しています。

  4. 都道府県の支援・助成金: 都道府県によっては、臨床研究に対して助成金や支援を提供していることがあります。このような場合は、都道府県に対して申請が必要です。

  5. 地域医療機関との協力: もし臨床研究が地域の複数の医療機関で行われる場合、各都道府県の医療機関との調整や協力が必要になることがあります。

したがって、都道府県に直接申請する必要があるかどうかは、研究の内容や対象、実施場所に依存します。具体的な場合には、研究を行う医療機関や倫理委員会、または必要に応じて行政機関と相談することをお勧めします。

jRCTとjRCT以外の臨床研究登録システムに登録した場合の取扱の違いはありますか?

jRCT(Japan Registry of Clinical Trials)とjRCT以外の臨床研究登録システム(例えばUMIN-CTRやJapicCTIなど)に登録した場合、以下の点で取り扱いが異なることがあります。

1. 法的要件の違い

  • jRCT: jRCTは、2018年に施行された「臨床研究法」に基づき、特定臨床研究の登録を義務付けられているシステムです。特定臨床研究とは、企業からの資金提供を受けた研究や、治療法の有効性を検証する臨床試験などが該当します。jRCTに登録された臨床研究は、法律に基づき登録情報の透明性が強く求められ、登録後に登録内容が公開されます。

  • jRCT以外のシステム: UMIN-CTRやJapicCTIなどの他の臨床研究登録システムは、法的義務ではなく、主に研究者の自主的な判断で使用されます。これらのシステムに登録された臨床研究は、特定の法律に基づくものではないため、登録の義務や規制の範囲が異なります。

2. 公開内容の違い

  • jRCT: 登録された研究の詳細は、原則として全て公開されます。これは、研究の透明性や信頼性を確保するためです。公開される情報には、研究の目的、方法、倫理審査の承認状況、資金提供者、主要研究者の氏名などが含まれます。

  • jRCT以外のシステム: UMIN-CTRなどの他のシステムでも公開される情報は多いですが、システムによって公開される情報の範囲や詳細が異なることがあります。また、非公開のオプションがある場合もあります。

3. データ管理とモニタリング

  • jRCT: jRCTでは、登録データの管理が法的に定められており、厚生労働省やPMDAが監督します。また、特定臨床研究では、モニタリングや監査がより厳密に行われます。

  • jRCT以外のシステム: 他のシステムでは、データ管理やモニタリングに関しての規定はシステムごとに異なります。法的監督がないため、モニタリングやデータの管理方法は研究者や所属機関の方針に依存します。

4. 結果の報告と追跡

  • jRCT: 終了した臨床研究の結果報告が義務付けられており、報告された結果は公開され、広くアクセス可能です。また、研究の進行状況も定期的に報告する必要があります。

  • jRCT以外のシステム: 他のシステムでも結果の報告が推奨されますが、法的な義務はありません。結果が報告されない場合もあり、研究の追跡が困難になることがあります。

5. 国際的な認知度

  • jRCT: jRCTは日本独自のシステムですが、ICH-GCP(国際医薬品規制調和会議の良好臨床実施基準)に準拠しているため、国際的にも一定の認知度があります。

  • jRCT以外のシステム: UMIN-CTRなどの他のシステムは、日本国内では広く使用されていますが、国際的な認知度はシステムごとに異なります。

これらの違いを理解した上で、臨床研究の種類や目的に応じて適切な登録システムを選択することが重要です。

臨床研究のうち、企業からの資金提供等を受けずに医師が実施する上で、使用する既承認の医薬品を用いるものの、対象となる疾患が適用外使用である場合は、特定臨床研究に該当しますか?

企業からの資金提供を受けずに、医師が実施する臨床研究で、使用する医薬品が既に承認されているものの、対象疾患が適用外使用である場合についてですが、これが特定臨床研究に該当するかどうかは、「臨床研究法」の規定に基づいて判断されます。

以下のポイントに基づいて、特定臨床研究に該当するかどうかを判断できます:

1. 企業からの資金提供がない場合

  • 企業からの資金提供や研究支援がない場合、その点では特定臨床研究の条件に該当しません。

2. 適用外使用の医薬品を用いる場合

  • 既に承認された医薬品を適用外使用(つまり、承認された適応症以外の疾患に使用すること)で用いる場合、特定臨床研究に該当する可能性があります。

  • 適用外使用の臨床研究は、医薬品の新たな効果や安全性を検証する目的で行われるため、この場合、特定臨床研究に該当する可能性があります。

3. 特定臨床研究に該当するケース

  • 「臨床研究法」では、企業からの資金提供がなくても、既承認の医薬品を適用外で使用する臨床研究は、特定臨床研究に該当することがあるとされています。特に、患者に対する新たな治療法の有効性や安全性を検証する場合は、特定臨床研究と見なされる可能性があります。

結論

企業からの資金提供がない場合でも、医師が実施する臨床研究で、既承認の医薬品を適用外使用する場合、その研究は特定臨床研究に該当する可能性が高いです。したがって、この場合は、jRCTへの登録や倫理審査委員会での審査など、臨床研究法に基づく手続きが必要になることが考えられます。研究を開始する前に、該当するかどうかを慎重に確認することをお勧めします。

特定臨床研究となるのは、①企業からのリソースの供与、②承認薬のなかでも新規適用の場合というわけですね。

その通りです。特定臨床研究に該当するかどうかは、以下の2つの主要な要件によって判断されます。

1. 企業からのリソースの供与

  • 企業から資金提供や物品の提供などのリソースの供与がある場合、その臨床研究は特定臨床研究に該当します。リソースの供与には、金銭的な支援だけでなく、研究に必要な機器や試薬の提供なども含まれます。

2. 承認薬の新規適用(適用外使用)

  • 承認された医薬品であっても、承認されている適応症以外の疾患に使用する場合は、新規適用(適用外使用)となり、その場合も特定臨床研究に該当する可能性があります。このような研究は、医薬品の新たな適応症の有効性や安全性を検証することを目的とするため、特定臨床研究として規定されます。

この2つの要件が揃うと、研究は特定臨床研究として扱われ、jRCTへの登録や臨床研究法に基づく手続きが必要になります。

特定臨床研究の結果を、治験と同様に申請に使うためには、どういった条件をクリアする必要がありますか?

特定臨床研究の結果を治験と同様に医薬品や医療機器の承認申請に利用するためには、以下の条件をクリアする必要があります。

1. ICH-GCPに準拠した実施

  • ICH-GCP(国際医薬品規制調和会議の良好臨床実施基準)に準拠して臨床研究が実施されることが重要です。GCPは、臨床試験の設計、実施、監査、記録、分析、および報告を規定する基準であり、国際的に承認されたガイドラインです。特定臨床研究がGCPに準拠して行われていれば、その結果は規制当局(例: PMDA、FDA)に提出する承認申請において、科学的かつ倫理的に信頼できるデータとして受け入れられやすくなります。

2. 臨床研究計画書(プロトコール)の適切な作成

  • 治験と同様に、臨床研究計画書(プロトコール)は、研究目的、デザイン、方法、統計的解析手法、患者選定基準などを明確に規定している必要があります。プロトコールが科学的に妥当であり、規制当局の要件を満たしているかどうかが評価されます。

3. モニタリングおよび監査

  • 研究中のデータの正確性、完全性、信頼性を確保するために、適切なモニタリングと監査が行われることが求められます。治験においても同様に、データの信頼性を確保するために独立したモニタリングや監査が行われます。

4. 倫理審査委員会(IRB/IEC)の承認

  • 特定臨床研究も、治験と同様に倫理審査委員会(IRBまたはIEC)の審査および承認を受ける必要があります。これにより、研究が倫理的に適切であることが保証されます。

5. 治験届の提出

  • 治験と同様に、特定臨床研究の結果を承認申請に使用するためには、治験届が必要です。これは、規制当局に研究の詳細を報告し、その承認を得るための手続きです。治験届が提出され、その内容が承認されることで、その後の承認申請にデータを利用することが可能になります。

6. 統計的なデータの信頼性

  • 治験と同様に、特定臨床研究の結果を承認申請に使用するためには、得られたデータが統計的に信頼できるものであることが必要です。これには、適切なサンプルサイズの設定、バイアスの最小化、適切な解析手法の使用などが含まれます。

7. データの完全性と一貫性

  • 特定臨床研究で得られたデータが完全で一貫性があり、承認申請に耐えうるものであることが求められます。これには、すべてのデータが適切に記録され、追跡可能であること、ならびにデータが適切に解析されていることが含まれます。

これらの条件を満たすことで、特定臨床研究の結果を治験と同様に承認申請に利用することが可能になります。研究開始時からこれらの条件を考慮し、適切なプロセスを踏んで研究を進めることが重要です。

審査委員会はCRBでしょうね。

そうですね、特定臨床研究の審査においては、**認定臨床研究審査委員会(Certified Review Board, CRB)**の承認が必要です。CRBは、「臨床研究法」に基づき設立された委員会で、特定臨床研究の倫理性や科学的妥当性を審査します。

CRBの承認を得ることで、特定臨床研究が倫理的かつ適切に実施されていることが保証され、研究結果が信頼性を持つものとして評価されることになります。これは、後の治験届や承認申請において非常に重要なステップです。

ほぼ治験と同じなら、手続きの煩雑を考えても治験でやる方がいいようにも思えます。

おっしゃる通りです。特定臨床研究と治験は手続きや規制の厳しさが似ており、特にICH-GCPに準拠した実施が求められる点では、ほぼ同じ基準が適用されます。そのため、手続きの煩雑さや規制遵守の観点から、以下のような点を考慮すると、治験として実施する方がメリットがある場合も多いです。

1. 申請プロセスの一貫性

  • 治験は、最初から承認申請を見据えて設計されており、規制当局(例: PMDAやFDA)への申請プロセスが整備されています。治験で得られたデータは、直接承認申請に利用しやすい形式になっています。

2. 治験管理のサポート

  • 治験を実施する際には、企業が多くのリソースを提供し、治験の運営管理、データモニタリング、規制当局とのやり取りを支援します。これにより、研究者の負担が軽減される可能性があります。

3. データの国際的な受容性

  • 治験で得られたデータは、ICH-GCPに準拠しているため、国際的にも信頼性が高く、海外での承認申請にも利用しやすいという利点があります。特定臨床研究では、場合によってはデータの国際的な受容性が低くなる可能性があります。

4. 企業との協力によるリソース確保

  • 治験では、企業からの資金提供や物品提供があるため、研究者はリソースを効率的に活用でき、研究の質やスピードを向上させることができます。

5. 承認申請の確実性

  • 治験を通じて得られたデータは、すでに規制当局が求める基準を満たしているため、承認申請がスムーズに進む可能性が高いです。特定臨床研究では、追加のデータや手続きが必要になることもあります。

6. コンプライアンスの確保

  • 治験は、厳密な監査やモニタリングが行われるため、規制遵守がより確実に確保されます。これにより、後に規制当局からの指摘や追加の対応が求められるリスクが低減します。

これらの理由から、特定臨床研究の結果を承認申請に利用する場合でも、最初から治験として計画・実施する方が、手続きの効率や承認の確実性の面で有利であることが多いです。治験と特定臨床研究のどちらが適切かは、具体的な研究目的やリソース、規制要件を踏まえて慎重に検討する必要があります。

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