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取りまとめのムダが減るたった一つの問いかけ

まとめ ~要はこれだけ~
・照会の前に「どう取りまとめるのか」を聞く(自問する)。


前記事で「wordで報告させて、Excelで取りまとめるのはムダ」と書きました。


なぜ、部下はムダを生み出してしまうのか?

なぜ、部下はそんなムダを生み出してしまうか、には色々理由があるでしょう。
一番は「早く照会しなきゃ」。
でも、いくら早く照会をかけても、いくら回答が集まっても、取りまとめに時間がかかっていたら、意味ありません。

あるいは、「以前と同じでいいだろう」。
定型的な照会は、この部分が大きいでしょう。
「変えるのは面倒」「変えると何か言われそう」という発想があるでしょう。
でも、変えなきゃ変わんない。

そして何より「取りまとめの段取りを把握していない」。
「手元に情報が集まればなんとかなる」という発想。
情報さえあれば、後は「根性(手作業&残業)」で何とかなる、という発想。
それ、ダメです。

それを防ぐために、照会案が回ってきた際に、上司が掛けるたった一つの「問いかけ」があります。

ムダを減らすたった一つの問いかけ

それは
「どう取りまとめるの?」
です。

部下が即答できなければ・・・

問いかけられた部下は、当然、答えを考えます。
でも、多分、こんな答えが返ってくるのでは?
「回答が返ってきたら考えようと思っていました」

そんな回答だったら、あるいは即答できなければ、更にこう言います。
「とりまとめの段取りを書き出してごらん」

即答できたとしても、大雑把だったり、曖昧さがあれば、同じことを指示します。
そうすると、部下は、自分がいずれやるべき取りまとめ作業を細分化して考えることになります。
といっても、全然難しいことではありません。
パソコン操作の一つ一つを書き出すだけですから。

「1工程(操作)を1行で箇条書きにしてごらん」と指示しましょう。

具体例は、前記事のとおりですが、基本はこんな感じでしょう。

  1. メール受信する。

  2. 添付ファイルを開く(保存する)

  3. 貼り付け元を確認する。

  4. 貼り付け先を確認して、張り付ける。  
     *3,4は、項目(セル)ごとに細分化して記述。

  5. 回答がない所属をチェックして督促する。
    などなど。

3と4は繰り返しになる場合が多いでしょう(内容により細部は異なるはず。)。
「コピーして貼り付ける」ならまだいいのですが、
「回答様式を印刷して、それを見ながら手入力する」なんてことを書いてくることも、十分あり得ます。

部下がそれを持ってきたら・・・

部下が取りまとめ工程表(ベタ打ちで十分)を持ってきたら、それを見て、改善点を指摘します。
「この作業、こうすればなくせるんじゃない?」とか、
「この繰り返し作業、1回で出来ない?」
「エクセルに張り付けるなら、エクセルに入力してもらえば?」とか、
「張り付けるなら、同じ配列・書式にしておけば?」とか、
「サーバにファイル置いて、直接入力してもらえば」とか。

もちろん、照会する側(=取りまとめる側)の省力化だけでなく、照会を受ける側(=入力する側)にとっての省力化になる(=ストレスが減る、つまりミスも減る)工夫も指摘します。
「定型語はリスト化すれば? 手入力しなくていいし、表記のブレがなくなるから、集計しやすくなるよ」とか。
「(0で始まる)電話番号欄は、書式設定しといたら」
「入力方法の説明をコメント(メモ)に入れておいたら」とか。
「求めるデータ」が「求める形式」で入力表に入れてもらえれば、後処理が楽になります。逆に、後で直すのはとても面倒です。

もちろん、照会のための事前の準備に時間を掛けすぎてもいけません。
必要以上に様式を作りこむ必要もありません。
過剰品質は悪ですから。
(「事前にかける時間 < 全体で削減される時間」でないと意味がありません。)

でも、こういった問いかけから、新しい知識(スキル・テクニック)を習得したり、なによりも、作業工程を俯瞰する癖がつけられます。

1回では無理でも、何度もやっていくことで、段々とそれがあたりまえになっていくことでしょう。
これは、何もエクセルに限ったことではありません。
デスクワークって、大体は仕事(作業)の見積もり(工数と時間)が出来れば、半分は終わったようなものです。後はそれを実行するだけ。
「いかに正確な見積もりを出せるか」が、効率化と精度を上げるキモになります(見積が甘いと時間が足りなくなって、精度も落ちます。)。

「未来の自分が楽をするために」、どう工夫すべきか、「今」考える ~自問も効果的~

上司に聞かれる前に、自分で自分に「どう取りまとめるか」を問う(=自問する)のも効果的です。というか、本来それがスタートです。
段取りは同じ。
工程を書き出して、改善点を考える。
「未来の自分が楽をするために」、どう工夫すべきか、「今」考えるのです。

疑問を持てば解決の道は開ける

ただし、知識(スキル・テクニック)不足で思いつかないこともあるでしょう。
(例:全角・半角バラバラの電話番号を、半角に統一して手入力しなおすのに部署全体で数日かけている企業があったとか・・・。誰もASC関数を知らない、あるいは、機械的に処理できるのではという疑問すら持たなかったようです。)
そういうものは、やはり同僚・上席・上司からの助言が必要です。
でも、その前段で、「これ面倒だよな。何とかならないかな」という疑問を持つことがもっと大事です。
疑問さえ持てれば、あとは、大体の場合、解決の道があります。
周りに詳しい人がいなくても、今なら「WEBで調べる」手があります。
いきなりドンピシャの答えには辿り着けなくても、段々と解決策を見つける感覚が身に付きます。
大事なのは、「疑問」を持つこと。
あるいは「もっと楽できないかな」と思うことです。
(場合によっては、コストが大きすぎて、解決策が採用できないものもありますけれど。)

備考1

実際、エクセルで作られた結構なボリュームのアンケートが来たことがあります。
アンケートの担当者に「これ、どうまとめるつもり?」と聞いたら、
「アンケートが返ってくる間に考えようと思っていた」とのこと。
あらら、です。

数字+自由記述のアンケート。
数字の部分も結構あるので、そこは全体計や属性別の比較もしたいところ。
それには、数値だけ一覧表にする必要があります。
しかし・・・アンケート様式としての体裁を重視したのか、設問別に回答欄に「セルの結合」が多用されていて、一括で集計表へコピーすることが難しい。
もしかして、これ、ちまちまとセル単位でコピペするつもりだったのかも。
あるいは、目コピー・手入力かも。
1回答30セル×回答数50弱、としても・・・膨大な時間がかかります。
間違いも起きますし、間違い防止のためのチェックにも時間がかかります。

せめて数字部分だけでも1回のコピーで済む表を試作して提供してみたのですが・・・結果は採用されず。当方の提案が稚拙だったのか、それとも効率化の意義を理解してもらえなかったのか、あるいは計算式を理解してもらえなかったのか、そこは不明です。
(そもそも、この手のアンケートは、WEBフォームを使うのが一番です。CSVに落とし込めば、集計はあっという間。単純なコピー作業を廃することで、集計した数値や自由記述の分析・解釈に注力できます。)

備考2

「どう取りまとめるつもり?」
この手の問いかけをすべきなのは、直属上司クラス。
つまり、チーフとか係長クラス(名称は組織により違うでしょう)ではないでしょうか?

大きな方向性を示すディレクター(部長クラス)や、組織運営を行うマネージャー(課長)は、そこまで細かく見ないでしょう。
戦略あるいは戦術を考えるのが彼らの役目。
具体的な戦法は、現場レベルの対応が必要です。
スタッフの仕事ぶりを一番間近で見ているチーフクラスの上司こそ、スタッフの「見えないコスト」となる日々の作業に目配りし、その効率化を目指すべきでしょう。

備考3

備考1のケースのアンケート。
正式な照会通知でした。
つまり、内部の稟議(決裁)を得ているということ。
少なくともマネージャー(課長)クラスの了解は得ているはずです。
ということは、当然チーフ(係長)クラスも。

その稟議(決裁)の過程で、誰も「これどう取りまとめるの?」と言わなかったのでしょうか?
あるいは、「これ、WEBフォームを使えば楽にできるんじゃないの?」と思いつかなかったのでしょうか?

「何を聞くか」に関心ばかりいっていて、「どう取りまとめるか」には無関心。
そして、回答や取りまとめを簡単にする方法にも無関心、というか、その方法に無知。担当者が頑張ればいい、と思っているのでしょうか。
多分、それ以前に、そんなことに考えが及んでいないのでしょう。
上司の「想像力とスキルの欠如」。これもとても問題です。

目の前の稟議書(照会案)だけでなく、その照会がどれだけの効果(利益)を生み、反対に、どれだけの労力(コスト)を費やすか、それを俯瞰し、最小のコストで最大の効果を目指す方法を指し示すのが上司の役割ではないでしょうか?
残念ながら、「お役所」の場合、「意見を聞く」こと自体が大事で(つまりアリバイ)、コストや利益(それをどう反映させたか)は二の次、の雰囲気になりがちかと思います。

企業だけなく、お役所でもDX、DXと盛んに言われています。
でも・・・、DXという前に、もっとやるべきこと、考えるべきこと、取るべき姿勢があるのではないでしょうか。(それがないから、DXで何とかしよう、ということなのでしょうか。)

余談

単純な照会なら、できる限り、回答作業も取りまとめ作業も効率化した方がいいでしょう。
でも、不定形なもの、例えばアンケートの自由記述とか、現状の課題とか今後の施策に対する意見とか、不定形な質問は、幅のある回答ができるようにしておいた方がいいでしょう。
そういったものは、「余白」が読めるようにしておいた方がいいと思います。
なんても類型化・単純化してしまうと、深みがなくなります。



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