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重いガラス戸の向こうは暗くて見えない

小中学生の頃によくあるFFとドラクエどっちが面白いとか、ビアンカとフローラどっちが好きとかいう話に参加したことがない。その頃家に据え置きゲーム機がなかったからだ。我が家の据え置きゲーム機は2周ぐらい遅れていて、2000年代も初代プレステとビブリボンが現役だった。

ゲームといえば私にとってはアーケードゲームで、KOF96を遊ぶ友達に誘われて踏み込んだゲームセンターで、アホみたいにはまりこんだ。

折しもSNKが我が世の春を謳歌していた時期。KOF、サムスピ、マジドロ、餓狼、月華、メタスラ、武力まで、遊べる台のゲームはだいたい遊んでいた。他のメーカーだと、子育てクイズゲーム、ミスタードリラー、もじぴったん、斑鳩、サイキックフォース、式神の城、ギルギアX、マブカプ、パカパカパッションなどなど。お小遣い貯めて据え置きゲーム機を買うより、500円持って習い事サボってゲームセンターに行くのが楽しかった。だいたいコンティニューしないとエンディングまでは見られなかったような腕前で今度は音ゲーにスコンと落っこちたので、そっちの方はまたなんかの折に書く。

窓のない薄暗い中で点滅するデモ画面。ドアを開けると出迎える、タバコと空調の甘いようなにおい。黙々と麻雀ゲームをやっているスーツのおじさんや、隅の方で椅子をくっつけて寝る農協の帽子のおじさん。面倒くさい代の上級生。何らかの指導目的のおばさんにつかまると、ゲームやってるのに話しかけてくるから参った。でも、そこにいても良いように思えたのは有り難かった。

裏キャラの出し方を対戦台のお兄さんに聞きに行ったり、50円台を探して自転車で走ったり、そしたらそこがクラスの男子が立ち読みしに行くエロ本屋だったり、交流ノートのお姉さん達と花見に行ったり。どこも閉店したか格ゲーが撤去されてしまっているし、人前に出せる話は、ボンヤリと綺麗な布のかかった向こうのこと。

手元にその頃の思い出はなにもなくて、遊んでいた場所もなくなって、それでも全部はわたしのものだ。

あのコインランドリーに一台だけあった豪血寺一族の50円台、やっぱりやっとけばよかったな……