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【Letter for XXX】#6 歴史デザイナー井上祥邦さん

こんにちは、Shihoです。独断と偏愛で他己紹介をさせて頂く3Minutesマガジン「Letter for XXX」。

#6 は歴史デザイナー井上祥邦さんです。

■#6 歴史デザイナー井上祥邦さん/Status:初対面

「歴史デザイナー」と自ら名乗る井上さんが最も好きな戦国武将は「真田幸村」。大河ドラマ『真田丸』も記憶に新しい、大阪冬の陣での活躍と夏の陣での散り様で知られるあの英雄です。井上さんにインタビュー後、改めて幸村の人生を調べると、45歳の生涯の割と後年(30代半ば)まで父・昌幸の影に隠れており、後年急速に存在感を増したように感じました。

井上さんの「歴史好き」「戦国武将好き」の始まりは小学生の頃。『まんが 人物 日本の歴史』といった歴史漫画を図書館で借りては読み漁り、戦国武将の生き様や、家系図という縦軸・同時代のライバルという横軸などが複雑に絡み合う人間ドラマに魅了されたそうです。井上さんがそれらを愛する理由は「学び」。先人たちの失敗体験を先に知ることで、その学びを自分の人生に反映できるという歴史の面白さに魅了された井上さんは今、戦国武将の様々なグラフィック作品の制作を通してその魅力を伝えようとしています。

新卒で印刷会社に営業職で就職後、いくつかの制作会社や編集プロダクションを経て、現在はフリーランスのデザイナーとして活動する井上さん。彼の中で2回あったという人生の転機は、どちらも「人生の先輩の言葉」がもたらしました。1回目は制作会社に勤務していた20代半ば。取引で現場担当者と揉めた際、全てを納めてプロジェクトを成功へ導いてくれた得意先のボスから受けた「デザイナーならいつか独立するべし」という進言。それまで特に意識していなかった「独立」を、リアリティのある選択肢として認識するようになったそうです。2回目は、デザインを学びに短期間だけ通ったデジタルハリウッド大学での南雲治嘉氏の言葉。曰く、デザイナーにとって重要な3つのことは「自分を否定しないこと、他人と比較しないこと、完璧を求めないこと」。当時、自身のデザイナーとしてのスキルにコンプレックスを感じ、「まずは手を動かさなきゃ」と強迫観念にさらされていた井上さんは、デザイナーとして大先輩にあたる南雲治嘉氏のこの言葉を聞いて肩の荷がおりたそうです。漫画を通じて戦国武将たちに学んできたのと同様、2人の人生の先輩の学びと経験が詰まった言葉は、井上さんの人生を大きく変えていきます。その「学び」はもっと早く、苦しむ前に知りたかったかもしれませんが、追い込まれてこそ気づけるものもありますし、いくつになっても人は学びを得ることが出来ます。

そうしてデザイナーとして歩みを進めてきた井上さんですが、「30代は周りの人のためだけに人生を捧げすぎていた」と振り返ります。美大出身でもない、お金もない、そんなコンプレックスからやりたいことは二の次にして仕事や相手のためにと没頭してきた人生は、家族が出来て大きく変わったそう。子供が産まれ、「自分を大切にしなければ人を大切にできない」という真理に気づくと、海外旅行で世界の様々なエンタメに触れて刺激を受けたり、独立して自身の時間の使い方を見直したり、サイドプロジェクトとして戦国武将タイポグラフィを始めたり。現在43歳となり、そうした「自分自身がやりたかったこと」に、やっと向き合うタイミングがやってきました。

戦国武将絡みのクリエイティブは、井上さんの「抑圧していた30代の自分への反動」が現れたものだといいます。私も初見の感想で、反骨精神をまとった「HIPHOPっぽさ」を感じていました。しかし、もうすぐ師である真田幸村の年齢を超えるこれからの人生は、ある意味「先輩不在」の新しい挑戦の時間。「人生の先輩」である戦国武将たちを言葉にし、形にしていくことを通して、自らがまた彼らの生き様をヒントとして伝える「誰かの人生の先輩」となっていくのだと思うと、その挑戦がとても楽しみです。

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Letter for XXXは、不定期かつ独断と偏愛で随時更新していきます。


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