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【Letter for XXX】#10 MONSTER’S 尾花龍一さん

こんにちは、Shihoです。独断と偏愛で他己紹介をさせて頂く3Minutesマガジン「Letter for XXX」。

#10 はMONSTER’S 尾花龍一さんです。

■#10 MONSTER’S 尾花龍一さん/Status:初対面

ある職業が目指す対象になるための最も分かりやすい手段は“カッコイイ”だと私は考えます。例えば、前澤友作さんが月への旅行計画を発表した時、「起業家」は夢のある職業になりました。では「デザイナー」や「クリエイティブディレクター」は今「夢のある職業」でしょうか?

今回インタビューした尾花龍一さんは、様々な企業・サービス等のクリエイティブを手掛けるMONSTERS,INC代表兼グラフィックデザイナー/クリエイティブディレクター。農林水産大臣賞を受賞した「まんのうひまわりオイル」の商品デザイン・ブランディングなどのブランディング関連のクリエイティブ制作を中心に、そのほかドラマや映画のパッケージ、「封神演義」「戦国無双」「超体感ステージ キャプテン翼」といった2.5次元舞台の宣伝美術まで手掛ける彼。でも実はもう一つ、「馬主」としての顔も持っているんです。

その人生を決定づけたのは11歳の時。たまたまテレビで観た「有馬記念」で、骨折あけながら優勝を果たしたトウカイテイオー、そして彼に騎乗した田原成貴騎手の男泣きに刺激を受け、中学卒業後そのままジョッキーになるべく競馬学校の試験に挑戦したそうです。結果は惜しくも落選。しかし「近い環境に入るのが近道」と考えた彼はなんと、北海道の牧場に住み込みで就職。競馬に対する情熱と若さが、無鉄砲とも思える行動を後押しします。

しかし2回目の試験時、身長規定を超えてしまったため、泣く泣く断念して次の道へ。そこから尾花さんのデザイナー人生が始まります。競馬以外にもう一つ、子供の頃から好きだった美術の授業。その延長線上でCDジャケットのデザインがしたいと考えた彼は、大検を独学受験して高卒資格を取得すると、大手レコード会社であるGIZAが関西で経営していたクリエイティブスクールに入学。実際のCDジャケットを手掛ける講師のもと、デザインの勉強に1年間どっぷりと浸かります。

これだと思ったものへのストイックさと、"どうにかなる"精神、そして若さ。それらを武器にデザインのスキルを習得すると、今度は就職に向けて一直線にアプローチ。CDジャケットを手掛けているデザイン事務所・制作会社に片っ端から電話でアプローチし、深夜の夜行バスに飛び乗っては翌日のアポイントにのぞむという執念の活動で仕事を獲得します。

就職先は横乗り系のデザイン事務所。希望する音楽関係ではありませんでしたが、「自分の手掛けたデザインが世界中の人が乗るボードになる」というやりがいを感じながら3年ほど勤務。しかしその傍ら、個人の仕事として音楽関係へのアプローチも欠かしません。当時流行中だったmixi上でインディーズアーティストに直接コンタクトをとっては、CDジャケットデザインの仕事を獲得。その仕事のスケールの拡大に合わせて独立へと進んで行きます。

その後も継続してCDジャケットのデザインを中心に手掛けていた尾花さんですが、ある出会いがきっかけで舞台のアートワークを担当。そこから舞台関係の仕事が増加し、2.5次元舞台のデザインやアートワークにも関わるようになります。当時、2.5次元舞台はまだまだニッチな領域で、予算も関わる人も限定的。業界全体がクリエイティブに力をいれられていませんでした。競馬でもCDジャケットでもなくても、「人に影響を与えるものに関われるという喜び」と「それは“デザインをやってきた"からこそ」だということを噛みしめていた尾花さん。2.5次元舞台の仕事は右肩上がりに増えていきます。

2.5次元は原作があり、そして大抵映画作品などの別メディア作品も平行するもの。舞台版だけが満足のいくクオリティに達していない、原作の世界観を再現出来ていないと感じた尾花さんは、危機感とデザイナーとしての見過ごせなさを感じます。「自分のデザインスキルは、底上げに貢献できるかもしれない。」そうして関わり始めると、最も多い時で年間40作品ものグラフィックを作るまでになっていきます。

2.5次元舞台の人気の加速に合わせて尾花さんの仕事も拡大、満足のいく収入を得られるようになりました。ではどうするか?そこで尾花さんは、自分の人生を変えた「競馬」という世界に再び近づくため、「馬主」になることを選びます。日本では一口馬主となり、オーストラリアでは4頭ほどの馬を所有。馬たちの様子は毎週Youtubeで観察していますが、現地まで行って、大地を駆ける彼らを目の前で見届けられる日を楽しみにしています。

もちろん、彼らを日本のG1で優勝できる馬へと育てて行きたいという想いも尾花さんにはあります。でももう一つ、デザイナーという職業を「夢のある仕事」として演出したいという想いもあります。スポーツであり、ロマンでもある「競馬」。その最高峰の試合で、いつかきっと名を残すであろう名馬を育てるオーナーになるということは、尾花さんにとっては月旅行のように夢のある人生。自らの人生を決定づけた競馬への想い。一度はあきらめた競馬の世界へ再び近づけてくれたデザイナーという職業への感謝。そしてデザイナーは、競馬の世界でまだまだ貢献できる可能性を秘めているということ。自らの夢を別の形で叶えてくれるかもしれないデザイナーという仕事への誇りとロマンを引き継いでいくために、デザイナーという仕事の「夢」を自分自身で体現すべく尾花さんの挑戦は続いて行きます。

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Letter for XXXは、不定期かつ独断と偏愛で随時更新していきます。


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