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楽曲制作にも使えるクオリティ!フリーのコンプレッサー「TDR Kotelnikov」はゲーム実況にもオススメ。

 こんばんは。イーヴィルな斉藤(@evilsaitoh)です。

 前々から「ゲーム実況に使えるフリーのプラグインを紹介するぞ~」と思っていたのですが、
「まず適切なゲイン調節方法から…」
「いやさその前にマイキングを…」
「むしろプラグインがいらないくらいに録り音を追い込むのが一番だし…」
 と長くて説教臭くなるため、頓挫していました。

 そもそも、UADや並みいる有料プラグインを使っている身としては「わざわざフリーのプラグイン紹介なんかしたくねぇな?」と思っていた今日この頃。
 そんな私が紹介する気になったのがTOKYO DAWN RECORD社の「Kotelnikov(コテルニコフ)」というコンプ。
 有料に負けないどころか、ちょくちょく勝つコンプ。ではレビューします。

1 何がいいのか?

・使いやすい(超重要)
・音が変に変わらない
・かかっているのがわかりやすい

1-1 使いやすい

「フリープラグインは音が悪い」というクソデカ主語で十把一絡げにくくれるような実験用モンキー並みの知性を持ってりゃ楽なんですけど、音なんて使い道次第なので「音の良さ」というのは評価が難しい。
 ただ、フリープラグインのほとんどは「使いにくい」とは言えるでしょう。
 そりゃ当然の話なんですよね。有料プラグインはきちんとデザイナーがデザインしているんでしょうし。
「UIがきれい」とかではなく、「よく使うノブがデカくなっている」「設定している数値が見える」「声を出したときにスレッショルドの周りが光って音量レベルが見やすい」などの心遣いを感じるデザインになっています。

1-2 音が変に変わらない

 プラグインのほとんどはインサートした途端にちょっと音を大きくして音が良くなったと見せかけます。人間は大きい音を良い音だと思うので。
 コテルニコフくんはそんなことしません。話のわかるヤツだ。
 また、コンプを強くかけても低域や高域に音が寄らないです。その点、ヴィンテージ機材のような味付けがないとも言えます。
 まぁ、フリーのプラグインで「ヴィンテージのような味のある~」という枕詞がついているのは十中八九ほぼ地雷なのでやめましょう(クソデカ主語)。
 ヴィンテージ系と名乗ってもいいフリープラグインはAnalog Obsessionだけです。厳密には無料でもないけど。

1-3 かけているのがわかりやすい

 これはパツンパツンのコンプ感があるとかではなく、音はまるでフェーダーを自動で下げてくれているかのように自然なのに、大きな音でも「おー、抑えてくれてるなぁ」と感じやすいという意味です。
 これはある程度コンプに慣れた人ならわかってもらえると思いますが、「デジタルコンプが得意とする仕事をこなしてくれている」と思うような仕事ぶり。

 下で設定方法を説明するので歌を歌ってみてほしいんですが、情感を込めたサビで声を張っても自然な音でレベルが一定に保たれるんですよね。いやぁべた褒め。


2 詳しく紹介

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 これがご尊顔(ご尊UI)です。
 「色々数字があって拒否反応起こしそう」と思うかもしれませんが、あなたが設定するのはピンクの3つのノブだけでOKです。


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「3つのノブをいじるのも難しい!」という方はママのおっぱいでもいじっていてください。2つなので練習にちょうどいいですよ。赤子(あかご)には難(むず)しい話(はなし)してごめんなさいね。

 煽りは置いといて、設定の説明をします。


2-1 THREHOLD(スレッショルド)

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 左側のノブがスレッショルドです。
 「どれだけ大きな音を出したらコンプ(圧縮)かけるか」という設定で、初心者ならこれだけで設定はおしまいにしてもOKです。
 声を出すと横のGain Reductionメーターが動くので、これが「大きな声を出したときに2~3dBのリダクションがかかるようになるまでノブを回す」だけ(一瞬4dBになるなどはOK)。

 これは「大きい声を出したら2~3dB音量を下げるよ」という設定です。
 人間の声は大きいところと小さいところの差(ダイナミックレンジ)が大きいので、これで音量差を整えると聞きやすいし安定して聞こえます。
 このメーターがめちゃめちゃ触れるような設定(15dBなど。THREHOLDを左に回しきる)にすると、大きい声を出したときに「めっちゃ声張ってるのに声が小さくなるオモシロ人間」になりますし、逆にまったく針が振れない設定(0dB。THREHOLDが右に回しきる)にするとまったくコンプがかかっていない状態になります。

 なので、ほどほどの位置がだいたい「2~3dBのリダクションがかかる位置」なんですね。

2-1 RATIO(レシオ)

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 下手にもういじらなくてもいいですが、もし「俺は大声実況者だからまだ声が安定しない!!!!!!!!!!!!!!!!!!(大声)」という方がいたら俺の耳から少し離れてもらって、ここを4.0:1とかにしてもいいかもしれません。

 レシオとは「比」という意味で、「スレッショルドを超えたらどれくらいの比率で音を小さくするか」という意味のノブです。
 今「2.0:1」としているのは、「スレッショルドを超えるくらい大きい音のときは音量を2:1(半分)にするよ」と言っているわけです。
 ただ、人間の声はマイクの距離や角度、体調、わからない問題を黒板の前で立って解かなきゃならない時などで大きく音量が変わるため、半分(2:1)にしたところで音割れが発生する場合があります。
 割と2:1~4:1まではポピュラーな設定のため、一回実況録ってみて音割れたら少し比を上げるくらいの付き合い方でいいでしょう。大体の人は2:1くらいで十分とは思いますが…。

 ここをいじると前項のGain Reduction(メーター)の値が変わるので、またスレッショルドを2~3dBくらい圧縮されるように設定するのを忘れずに。

2-3 MAKE UP(メイクアップ)

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 少し振り返りますが、
 THREHOLD(スレッショルド)…一定の音量を超えたら音を小さくする
 RATIO(レシオ)…スレッショルドを超えた音量を下げる比率
 と説明をしました。

 つまり、コンプレッサーとは基本的に「音を小さくするもの」です。
 よくある勘違いで、「コンプをかけたら音がデカくなる!」などの話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは論理の飛躍があります。
 ①コンプをかけると音量が一定になる(音量差が少なくなる)
 ②音量差が少なくなるため、急に大声出したところなどの「一部だけ音量が上がること」がない
 ③一部だけ音量がデカい部分がないということは、全体の音量を上げられる

 というメカニズムなんですね。

「というメカニズムなんですね」と独りごちられても何言ってるかわからないと思うので、画像で説明します。

 下が「コンプなし」の音声の波形です。
 ギザギザが多く、音量が大きいところでは音割れしていますね。

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そして、この下が「コンプあり」の波形です。
わかりにくいですが、「小さい音はそのまま」で「大きい音が小さくなっている」状態です。
全体的な音量は小さくなりましたね。つまりこれは「音割れまで余裕がある」状態なので音量を上げましょう。

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そこで、コンプの後に音量を上げたのが以下の波形です。
最初の音よりも「大きい音は大きいまま」で「小さい音が大きく」なっています。

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 「コンプは音量を小さくするもの」でありながら、「(最後に音量を上げれば)全体的な音量は上がる」というものなんですね。


 ……と、ここまで来て「MAKE UPの話はどこに行ったんだ」と思われるかもしれませんが、MAKE UPはこの「コンプ後の音量を上げる」役割を持つノブです。

 いちいち「コンプ後の音を録音して編集時に音量を上げる」みたいなセコセコした作業を"ちいかわ"がごとく「ンショ…ンショ…」とする必要はなく、プラグインの中で完結するようになっているんですね。

 設定方法は簡単で、「コンプ前の音と音量が変わらないように聞こえるまで上げる」程度にします。
 ここで爆音にすることもできますが、コンプ後とはいえ音を上げると割れるし、「ここで音量レベルを稼ぐくらいなら録音の時点で大きく録りたまえ」と全エンジニアが思うのでやめておいた方がいいでしょう。
(小さい音を無理に大きくするとノイズの割合が増えます。ド素人だと思われたい以外の理由ではやらない方がいいでしょう)

2-4 その他補遺

 アタックやリリースなども心得があるならいじりましょう。
 心得がないならいじらなくても大丈夫です。そりゃ、いじった方がいいですけど、ズブの素人がいじるよりもプリセットのままの方がマシです。
(けなしているわけではなく、それなりに慣れた私でもよくコンプの心得違いをするので本当に設定が難しいのです)


3 まとめ

・透明感のあるコンプレッション
・わかりやすいGUI
・無料(面倒な情報登録や〇秒待たされるなどもなし)

 と、「金取れよ」と思わざるを得ない出来です。

 一応、これは無料版という位置づけで、課金すればさらに高機能版「TDR KOTELNIKOV GE」が使えますが、これで十分でしょう。
 というか、私は設定項目が多いプラグインが嫌いなので、むしろこの項目省略版の方が使いやすいです。

 一応、最新版のOBSでも動くことは確認済みなので、配信などで活躍できるでしょう。
 久々に有料・無料問わず、良いプラグインに出会えました。

 では、今日もノブをいじっていきましょう。

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 このノブじゃねーよ。

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