【BPLS2 SDVX部門】定期的にコメントに出現する「ミュゼカ」という単語は何を指すのか【小話】
どうも、EveGokurakuです。
普段はリズムゲームよりかはカードゲームを中心に嗜んでおり、それについての記事をちょいちょい書いている者です。
BEMANIシリーズは2015年末から2年半程度触って一度離れた後、BEMANI PRO LEAGUEの興行を閲覧して感化され、今年の10月に楽曲解禁のために片手で数えられる回数だけ触れていたSDVXを数年ぶりにプレイする形で復帰しました。
VFは2か月程度プレイしてやっと2桁に乗ったぐらいです。
さて、時が経つのは早いもので、12月の開幕からもうレギュラーステージ・リーグ戦が全戦終了してしまうBEMANI PRO LEAGUE SEASON2(以下BPLS2)のSOUND VOLTEX(以下SDVX)部門ですが、時たま配信プラットフォームであるYoutubeの配信コメントにこんなものが現れます。
DJプレイである楽曲が流れた時、一部の人間から突然放たれる「ミュゼカ」という聞き馴染みのない単語。
SDVXをプレイしているとたま~に公式の情報を伝手として聞く事もあるかもしれません。
しかし、このBPLS2はSDVXプレイヤーだけに留まらず、他機種のリズムゲーマー、更には普段音ゲーよりはFPSやMOBAのようなゲームばかり見ていそうなeスポーツ視聴者といった様々な層が視聴する一大コンテンツ。
ぶっちゃけこの謎の単語を真意を詳しく知っている視聴者はほんの僅かしか存在していないんじゃないでしょうか?
今回はそんな謎の単語について迫り、チラ裏っぽい近代史を挟みつつ知識として持ち帰ってもらいたいと思います。
「MÚSECA」というゲーム
結論から言ってしまうと、ミュゼカという単語はかつて存在したBEMANIシリーズのリズムゲーム作品の一つの事です。
「MÚSECA」(以下MUSECA)。
2015年12月に稼働を開始した本作品は、SDVXと同じ縦向きワイド液晶に、押下・回転の2つの操作が可能な特徴的な5つのデバイス(スピナー)+足元のフットペダルから成る演奏システムを持つリズムゲームです。
白を基調にし、折り紙を想起させるレイアウトで、他に多数存在するリズムゲームとは一線を画す筐体デザインです。
独特な世界観に加え、楽曲公募(MÚSECA's Compe.)によってクリエイターたちから提供された有力な収録楽曲、更には同様に公募によって集まった美麗なアートワーク(作中用語でGrafica)を備えており、魅力たっぷり。
BEMANIシリーズの新顔として長く名乗りを上げ続けていく…はずでした。
かつて存在したという物言いの通り、この作品はある程度更新を継続していたものの、2018年7月を以てオンラインによるコンテンツ更新を終了。
多くの筐体がKONAMIによる回収の後、ビシバシチャンプシリーズのアーケードゲーム「ビシバシチャンネル」にコンバートされる憂き目に遭いました。
KONAMIのアーケードゲームサービスであるe-amusementとの紐付けが為されているオンライン筐体が存在する店舗は2023年1月現在全国6ヶ所しか存在せず、オフライン化筐体も現存数がそれほど多くない幻のゲームと化しています。
で、何でこうなったんだっけ?
※この項は各方面に対してセンシティブな内容に触れているため、苦手な方・興味のない方はスキップする事を激しく推奨します。
MUSECAが稼働していた2015~2018年はKONAMIのアミューズメント事業部の大幅な体制変化・KONAMI全体の経営方針の転換の最中にあり、その煽りを大きく受ける形でBEMANIシリーズ各所でユーザーの目線からでは看過できないような事象が相次いでいました。
・BEMANIシリーズ新機種の相次ぐ正式稼働の中止(ロケテスト・広報が行われながら一般稼働しなかった機種がこの期間だけで多数存在)
・"BEMANI Sound Team"問題(KONAMI所属のコンポーザーの名前出しに関する一連の変化とそれに伴うユーザーの憶測が招いた騒動)
・広報の変化(「宣伝部田中」と呼ばれる人物についての言及)
「殿様商売だ」だの「(当時の)経営陣が終わってるからこうなるのも仕方ない」だの、ある事無い事色々な事が多く囁かれてきた時期です。
様々な場面に波及したこれらの問題は現在も禍根を残している事例もあり、この期間をBEMANIシリーズ・ひいてはKONAMIのアーケードゲーム全体で最大の黒歴史であると主張するプレイヤーも存在します。
MUSECAもどうやら例外では無かったようで、ロケテスト段階では当時のKONAMIが注力していたソーシャルゲームに近いゲームシステム(収益モデル)が搭載。
これはプレイヤーに大層な不評を買い、以降正式稼働ではこの収益モデルが完全に排除され、KONAMIによる「生まれ変わった」を標榜する積極的なプロモーション活動があったにも関わらず数年単位に渡ってロケテスト時の悪評が尾を引き続けるハメとなりました。
黎明期には不必要かつ過剰な程にMUSECAという機種及びそのプレイヤーに対する攻撃的な言動を行うユーザーが散見され、(確証がある情報ではないものの、)MUSECAのプレイ中に他のプレイヤーから直接的な危害を加えられたという報告もあるようです。
最終的に、更新頻度の低下と共にKONAMIからの広報活動も意図的に停止され、静かに息を引き取るようにMUSECAはBEMANIの表舞台から姿を消す事になりました。
それはそうと
恐らく今この記事を見ているほぼ全ての方は、当時のKONAMIとかそんな話は知らないし、当時からBEMANIに触ってたとしてもその辺の事は全然覚えていないだろうし、別に深入りをするつもりもさらさら無いだろうと思われるため、次に抱くであろう
「MUSECAってゲームの存在は分かったけど、じゃあ何でBPLS2の場やSDVXの端々でこのゲームの名前を見るの?」
という疑問にお答えします。
MUSECAとSDVXの関わり
先述の通り、MUSECAは楽曲公募で収録する楽曲を決定しています。
これはSDVXも同様ですね。SOUND VOLTEX FLOORという楽曲公募が存在しています。
そして、これも先述の通り、MUSECAは縦向きの画面に奥からノーツが流れて来るUIを備えます。
…SDVXの魂を感じるレイアウトです。
そんなわけで、当時のBEMANIの運営・広報からは「MUSECAはSDVXの弟分」というような触れ込みが為され、そこからお互いの機種の楽曲・アートワークが移植されるイベントが開始される事になります。
この関わりはMUSECAのオンライン更新終了以降も継続的に行われており、MUSECAの楽曲が他のBEMANI機種に移植される際も、大抵の場合はSDVXに移植されています。(大々的な告知なしに他の機種にしれっと収録されている事もあったり無かったり)
MUSECAに収録された公募楽曲は、元の機種が割と自由で捉え所のないイメージであったが故、フリージャンルな良曲が豊富である事で広く知られています。
熱心なプレイヤーたちは今もMUSECAに魂だけ取り残された楽曲の移植を待ち望んでおり、その間口・受け皿としての役目をSDVXが果たしている訳です。
そして現在
かつてMUSECAにあった楽曲の魂はSDVXや他のBEMANI機種に流れ込み、当たり前のようにそこに存在するようになっています。
これからも定期的に楽曲移植が為され、より手軽に触れられる機会が設けられているはずです。
おすすめ楽曲
よく『かつてMUSECAのプレイヤーだったユーザーに「どんな曲が入っているの?」と聞いたら「良曲しかない」みたいな返しをされる』事例がありますが、これは誇張ではないと思います。(機種の境遇に対する裏返しでMUSECAの収録曲が神格化されてる感は否めませんが…)
中には上述の通り移植曲としてSDVXに流れ着いた楽曲がBPLS2の舞台で流れた事もあり、そこでもユーザーからMUSECAの楽曲群が数年の時を超えて愛されている事を認知できます。
そこで、勝手ながら何曲かおススメを提示させて頂きます。
尚、MUSECAオリジナルの楽曲は公募とそうでないものを合わせて全100曲以上。先輩格のSDVXには足元にも及びませんが、まあ誰か絶対好きな人がいるんだろうなって気持ちになる物ばかりです。マジで勝手に探して勝手に聞いて欲しいって言いたいレベルなんですよね
Youtubeに有志から音源・プレイ動画が投稿されている他、ULTIMATE MOBILEでも視聴可能です。コンポーザーのアルバムにExtendedが収録されている物もあります。
SDVX収録曲
Paradission - BlackY
10年近くに渡ってSDVXを筆頭にリズムゲーム界を牽引する超ベテランコンポーザーのBlackY氏による提供。長期間に亘って数ある提供楽曲がありますが、登場から久しく年月が経過した現在でも最高クラスの評価を得ているのがこの楽曲です。
Energetic Hard Trance+Piano=Energetic ContemporaryというBlackY氏の触れ込み通り、中速のハードトランス風味にピアノの美麗なサウンドを織り込んだ曲で、ノリノリになりながら感情が溢れ出す、何ともハイパワーな1曲。
その余りの人気ぶりから様々な伝説を残しています。
・The 5th KONAMI Arcade Championship MUSECA部門の決勝課題曲になる
・開発部が選ぶBest of MUSECA楽曲の一つに選出
・ジャケットの女の子が独立してキャラクター化(エクレアル・パラディって言うらしいよ)
晩年までMUSECAを象徴する楽曲として君臨し続けました。
Redshift - technoplanet
現在ではSDVXはじめ、複数の音楽ゲームに多数の楽曲提供経験を持つハセガワシュン氏の名義アーティスト名義technoplanetによるBEMANIデビュー曲です。
氏にとっても思い入れのある楽曲なのか、4年以上の時を経てSDVXで続編曲となる『Redshift 2nd Ignition』が公募採用されています。
透き通るメロディーラインに氏を象徴する暴れピアノがこれでもかと詰め込まれており、聞いてご想像の通りゲーム上での譜面も非常にパワフルな物となっています。
上記のParadissionと共に5thKACのMUSECA部門決勝課題曲に選出されており、キャラクターがジャケットアートの飾りを持っているのはその名残です。
Touch My Body - anubasu-anubasu
Hardstyleのカリスマ、Lilium Records所属のanubasu-anubasu氏によるBEMANIシリーズデビュー作品。通称TMB。
SDVX以外ではDANCERUSH STARDOMにも移植されています。
先日のレギュラーステージ第10試合 APINA VRAMeS vs GAME PANICでYU11選手によって選曲された楽曲です。
作者コメントの「☣HARDSTYLE IS IIZO.☣」、その物言いを一切裏切らないゴリゴリのハードスタイルで、こちらもBEMANI Fan Siteの楽曲ランキングでは2017年4月の1位に輝いています。
SHOCKER BREAKER - Yu_Asahina
MUSECAの2周年を記念して登場したYu_Asahina氏によるトラック。氏は本曲以外にも公募を介さないオリジナル曲として『Birth』・『Function #05』を提供しており、MUSECAと深い接点を持つコンポーザーです。
軽快でジャズィーな楽曲、難易度ごとに無地から染色されていくギミックが仕込まれたジャケットアート等、MUSECAの持つ世界観との親和性が非常に高く評価されています。
それ以外のBEMANI機種に収録されている曲
Trash - Candy House
収録機種:『DANCERUSH STARDOM』
Bounce・Handsupの要素を多く含んだノリノリのトラックで、移植曲ながら収録先のDANCERUSH STARDOMとの親和性が極めて高い事で有名です。
本曲はニコニコ動画における音ハメ系映像作品、所謂「音MAD」のコンテンツで人気が高く、BEMANIシリーズの収録楽曲の中でも多くの作品に用いられています。
音MAD界隈に留まらず2022年のインターネットコンテンツ全体で見ても最強クラスの流行を誇った「おとわっか」(リンクでTrashのパートから視聴できます)にも起用された事で、BEMANIシリーズを露ほども知らないネットユーザーから人気を得るという特異な地位を築きました。
Replica - Endorfin.
収録機種:『ノスタルジア』シリーズ
sky_delta作曲・藍月なくる歌唱によるユニット『Endorfin.』の一曲。同ユニットの楽曲には『片翼のディザイア』もあります。
sky_delta・藍月なくる両氏は現在ではSDVXに留まらず、BeatmaniaIIDX・GITADORA等多くの機種に楽曲を提供する有名アーティストですが、Endorfin.名義で登場したのは実はMUSECAが初。The 6th KONAMI Arcade Championshipのライブアクトでは両氏が登場し本曲を披露しました。
ピアノ演奏によるキャッチーなメロディー、歌物という楽曲特性、ノスタルジア稼働初期に移植された話題性、ゲーム的な話では譜面が表記難易度不相応に簡単な所謂「逆詐称」であり練習曲として愛された経緯等もあり、他の曲よりは地味ながらもファンが多い曲です。
他機種未収録曲
MUSECAという機種のマイナーと登場から数年以上経過している事が災いし、一部の有名曲以外は「Googleで曲名を検索してもMUSECA及び関連コンテンツがトップにヒットしない」という事例も頻発します。
ここに紹介するのも恐らくはオタクチョイス紛いな物となりますが、一定数MUSECAの音源・プレイ動画を集中的にアップロードしていたユーザーも存在していたため、そこから好みの物を探してみてください。
prudentia - Hidra-Xjeil
MUSECA黎明期の終わり際に登場したHidra-Xjeil氏による楽曲。同氏はSDVXに『Growth Memories』『JUNKIE FLAVOR』等、MUSECAにも『c2Theater』(yaseta氏との合作)を提供しており、SDVXの参加アーティストの中では比較的長期に亘って楽曲提供を継続しています。
楽曲コメントでは「曲が纏まらなかったため、逆転の発想で敢えて纏めない事とした」という旨の記述が為されており、目まぐるしく変わる曲調・ピアノとシンセの織り成す泣きメロが印象的な楽曲です。
novaluna - KLing
MUSECA稼働中期に登場したAoi・Yunosuke両氏による合作。同時期にSDVXに同合作名義で『Quaint Echo』が収録されています。
両氏、特にAoi氏はSDVXから連綿と続くリズムゲームシーンに強く影響されたアーティストであり、この2曲を皮切りにBEMANIシリーズに留まらず、多くの楽曲を世に送り出していく事となります。
MUSECAの世界観の一部をイメージした「新月」がテーマの楽曲で、ハイスピード・スタイリッシュな楽曲です。
Other World - Nush
MUSECAの晩年に収録されたNush氏による楽曲。Nush氏は同人音楽サークル「toyKasket」の主宰であり、同サークルにはSDVXを筆頭に複数の楽曲採用経験のあるはがね氏が所属していたりもします。
BMSの楽曲出展イベント『BOFU2016 - Legendary Again』にて同氏が発表した『Third World』の流れを汲むArtcoreであり、100秒に満たない短い演奏時間にドラマティックな要素を多数詰め込んだ曲となっています。
おわりに
これだけ長々と書いてきて何様のつもりかと思われそうですが、恐らくBPLS2の配信プラットフォームのコメントの、それも「ミュゼカ」というよく知らない単語について深掘りしようなんて思う人間なんてこの世にはそう存在しないと思います。
それでも、こんな感情を持ってBPLS2を視聴し、SDVXに向き合ってる人間もいる、そんな事を考えながらの書き散らしでした。
この書き散らしが誰かの頭の隅に残り、ちょっとBPLS2・SDVXに触れる時にちょっとした知識として浮上してもらえたらなと思います。
それでは。
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