気高い飛竜と辺境伯令嬢。

※ほぼ燃え尽きてる中の人が文章書きたい欲と惰性で文字打ったガープスの悪役令嬢卓の自キャラSS。細かい文法作法は竜が食べました。
※RP端折ってしまったなと思った飛竜購入フェイズでした。日常回なので特にヤマもオチもないよ。
※どこ置いていいかわからなかったのでとりあえずここに投下してます。もしかしたら移動させるかも。
※TRPGセッション内の話をガッツリ入れてる内輪ネタ満載の外部に優しくない書き方してる小説です、万が一卓外の方が読んでくださってたらごめんね……。せめてそのうちキャラクター一覧みたいなの作るね……。
!!このお話は二次創作です。実際の設定やセッションとは関係ありません!!

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ーーどうしてこうなった。
真っ白で艶やかな鱗が綺麗な竜と見つめ合い、否、睨み合いながら、内心、私、クロエ・リスノワールは頭を抱えていた。
学園の夏休みに馬車で揺られること丸5日、実家に帰ってきて早々、早めの誕生日プレゼントだと連れてこられたのが新しくできた竜のための厩舎で、この白い飛龍が誕生日プレゼントだと父、ゴーディエが言った。
「お父様、この竜は献上品ですか?」
「いや、他の竜は献上品だがその白いのは買ったものだ。とても綺麗でお前に似合うだろうと思ってつい、な。昔、クロエは竜を欲しがっていただろう?」
竜から目を離さずにお父様に尋ねてみたものの、返ってきたのは非常に暢気な言葉だった。声が弾んですらいる。
確かに大昔に「飛龍が欲しい」と言った記憶はある。だがそれは、家族の誰も彼もが生まれたての弟を構って優先するから意地悪のつもりで言ったのだ。今更蒸し返されても恥ずかしいし困る。確かに王都で竜の騎乗教本は興味本位で買ったけれど……。私ももうすぐ17歳で、大体の貴族令嬢は学園を卒業して1年と経たず結婚するというのに。貴族教育の賜物で表情筋は平静な顔を保ってくれていると信じたいけれど、呆れぐらいは滲んでいるかもしれない。
目の前の白い飛竜は、これ以上ないほど私の好みの綺麗な竜だ。真珠を思わせるような真っ白で艶やかな鱗に、ひらひらとした優雅な翼膜と尻尾は上質なシルクのような優雅さがある。顔はトカゲにツノが生えたような、厳つすぎず可愛すぎない、絶妙な造形の顔をしている。翼と手が一体化しているワイバーンという種類らしい。
問題は、二本足で立ち私を見下ろす金色の瞳が、切長の瞳孔でこちらを捉えて離さないこと。
これは恐らく、私が竜に値踏みされている。自分の主人に足りるかどうか。
威圧をしても引かないと判断するや否や、顔を近づけ鼻息を飛ばしてくる。小馬鹿にするように、脅すように。
……ちょっとした悪意はあるけれど、敵意ではない。だから後退する必要はない、が。
「良い獣魔術商に育てられた魔物は従順だと聞きますけど、この子は違うようですわね。そんな行商から買ったと知ったらお母様が悲しみますわよ。」
「少しプライドが高いだけだ。問題ないさ、俺の娘ならな。」
それはどの意味だろう、と可能性の幾つかを考え目の前から思考を外した刹那、白い竜が大きく口を開け迫ってきた。
咄嗟に飛び退きついでに口の中で詠唱をし不遜な竜に雷を一つ落とす。
閃光と空気が裂ける音が響き、ピギャア!!!と悲鳴があがり、私を見て瞳孔を丸くしている。キョロキョロと辺りを見回しているあたり、驚いているようだ。
どうやら私のことは肝の座っただけの小さい人間程度にしか思っていなかったらしい。
頭に疑問符を浮かべた顔をしていたので一度、指を鳴らしてから竜と私の間に雷を落とす。
「わかっていただけたかしら?見目麗しいドラゴンさん。」
高圧的に見えるよう遠慮なく目を細めて笑うと、白い竜はグゥと鳴き、伏せるように地面に頭を置いた。どうやら降参してくれたようだ。
これからよろしくね、と撫でると、撫でている手に頭を擦り寄せてきた。
グルルと猫のように喉を鳴らしているあたり、撫でられるのは嫌いではないみたいだし、嫌われていないようで安心した。

「ほら、問題なかったろ?」
「結果論ですわよ……。」
噛まれかけた時は結構怖かったんだから、と文句を言おうとして、お父様があんまりにも楽しそうに笑っているのと、たかだか厩舎に行くだけなのに帯剣していること、手の位置が先程まで抜刀寸前だったことにもそれを誤魔化そうとしていることにも気がついてしまって。口に出すのはやめ暫く白い竜のひんやりした鱗を堪能しつつ、名前を何にするか悩むことにしたのだった。

★★★

クロエが無事に主従関係を叩き込み、一通り撫で終わった後、気高い白いワイバーンの名前は『ヴィクトリア』に決めた。
なんともまあ、あの半刻にも満たない時間でペットにつけるには仰々しくも、あの竜にぴったりの名前を見つけてきたものだ。やはり愛娘はセンスがいい。

誕生日プレゼントに何が欲しいか聞いても、『一番欲しいものは叶えてもらったからもういらない』になったのはいつからだったか。
それでも何か喜ぶものを渡したいと毎年頭を悩ませ、妻に相談し、情けなくも同じ男親の家臣や口の堅い侍女にもそれとなく聞いて、毎年それなりに喜んでもらえていたと思う。
今年も例年の如く頭を悩ませていると、クロエと頻繁に文通をしているリアムから「お姉様が飛竜の乗り方の本買ったって。」と聞いて、昔クロエが竜をねだったことを思い出した。
あの頃はクロエが小さすぎるからダメだと断ったが、まだ欲しがっているのだろうか?
探りを入れはじめた時期に馴染みの獣魔商が亜竜を仕入れたと聞き、それを聞いた妻が翌日だか翌々日には商人を呼び、飛竜2匹程貢がせた上で一番見目の良い白い飛竜を買った。
側に置くなら誰彼構わず言うことを聞く傭兵よりも忠実な臣下の方が良いに決まっている。ヴィクトリアはプライドが高いだけあり認めた相手以外には靡かない。
それでいい。可愛い愛娘だけの絶対的な味方であってくれれば、当主の俺にも愛想を撒く必要はないと伝えてある。
……どこまで理解しているかは謎ではあるが。賢い竜ではあるので大丈夫だろう。

クロエがクリフォード家に嫁ぐこと自体に異論はない。ハロルドもその御子息も誠実であるし、クロエは二人にもとても懐いている。
しかしあの子は、ハロルドの手土産の多さの理由を知らぬのだ。クロエ宛の手土産の多さは、そのまま贖罪のつもりであることに気付いていない。
ハロルドと俺が黙っていればいい。そのまま無かったことにしてしまえはいいと思っている。が、聡い子故にいずれ気付くかもしれない。
もし真相に辿り着いた時、あの子は精神的にも強い娘だから大丈夫だとも思う。きっと御子息も支えてくれるだろう。だが、それでも心配しない訳がない。
もし万が一、嫁ぎ先が嫌になっても逃げられるように。
そうでなくても何かあったら、愛娘がリスノワールに帰ってくることが少しでも簡単にできるように。
世間一般の『勝利(シアワセ)』でなくていい、彼女が『勝利(シアワセ)』だと思えるものに導いてくれるように。
「クロエをよろしく頼むよ、ヴィクトリア」
黄金の瞳を見つめそっと撫でると、任せてくれと言わんばかりに雄々しく一言鳴いて、肯定してくれたようだった。



「ちなみにお父様はどうやってヴィーに認めてもらったんですの?」
「ゴーディエ様は威圧と素手で完封してたぜ、お嬢。」
「本格的にクロエの侍女になるならガヤもヴィクトリアに最低限認めてもらわんとな」
「いいんですかい?腕がなる…なりますね!」
「無理しなくていいのよ……ヴィーを一回説得してみるから……。」

誕生日プレゼントが要らなくなったのは大好きな人との婚約っていう大きいプレゼントを無理してもらったと思っているからもう要らないよ大丈夫だよってつもりだった。
ゴーディエパパが頭悩ませてると侍女とか従僕さんが『そろそろ夏だなぁ』って思うリスノワール風物詩。
今回飛竜を買わせようと母ラウラと弟リアムは結託しているし(二人は頻繁に里帰りして欲しい組)、なんやかんや1匹はゴーディエさんの飛竜扱いです。ドラゴンに乗るのは男の子のロマンだからね。
リアムくんは、クロエが出て行った後に『自分も飛竜に乗れるようになれば好きな時に姉様に会いに行けるのでは?!』と気付いてから猛特訓を始めます。ついでに伝令用の魔鳥と飼育係も雇います。その熱意を他に向けろ。

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2022/04/14 加筆と誤脱修正。

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