アワビは炙った後で良い

2009.4.3.

大学の友人4人で集まる定例会。
今回の目的は伊勢日帰りツアー。
朝8時に梅田集合というハードスケジュールのなか、 天候に恵まれた一日だった。

ツアーの内容は、
①ホテルで豪華5大食材を使用したお食事。②露天風呂つきの温泉。
③伊勢神宮~おかげ横丁散策。
④帰る。

5大食材!
伊勢エビ!アワビ!車海老!ウニ!松阪牛!

伊勢エビさんはどどんとお膳の正面にいらっしゃったが、お造りとなった姿は3切れだった。そんなもんだ。
しかし、その3切れは十分に甘かった。

ウシさんはしゃぶしゃぶということで、これもおいしかった。
貴重な3枚だった。

車海老さんは後から仲居さんが持ってきてくれた。
ここまで豪華食材が少量ずつ登場するなか、何故かこれだけ一挙に5尾という謎の大盤振る舞いが解せなかったが、 良い塩味。
しばし殻の解体作業に没頭し、皆無言になる。

ウニさんは終盤にウニ釜飯となって現れた。これがまた、ごはんが甘くておいしい。
「えっ何これちょっと待ってめっちゃおいしいんちゃうん」というくらい、ウニの味がごはんに染みていておいしい。
しかし、ウニさん自身は持てる力を全てごはんに使い果たしてしまったらしく、 あまり味がしなかった。

さて、最後の食材、アワビさんがいた。

席に着いたときから、既にお膳の右側にあるプチ網焼きセット的な網の上に鎮座していた。
「あれ?これ生きてるかも」
「ほんまや、今ちょっと動いた」

食事の途中、仲居さんが来て網の下の固形燃料に火をつけてくれた。

「こちらしばらくそのままにして、時間が経ったらひっくり返して、
最後もう一回返してお召し上がりください」

いつ?しばらくっていつ?と思ったが、人間の習性でとりあえず頷く。

「しばらくってどれくらいやろなぁ」
「ひっくり返すの忘れそうやんね」

それから1分と経たないうちに、「忘れるなんてありえへんな」ということに気付いた。
アワビさんが、背中に熱さを感じてうごめき出したのだった。

うようようようようようようようようよ

そりゃ火あぶりなのだから、声こそ出ねども断末魔の叫び。
そのうようよするヒダの動きは、 例えて言うなら中学校体育のダンスの授業で「大シケの海」を表現するかのような、そんなダイナミックな動きで人々の目線を捕らえて離さない。

そのうち、目の前のアワビさんの手(?)が隣の小鍋用灯籠みたいな器に届いた。
何気なく眺めていると、そのまま徐々に灯籠へしがみつき、体を起こし始めた。
明らかに態勢を立て直して逃亡を図ろうとしている。

友人と協議のうえ、「ごめん」と言って灯籠から引き剥がした。
再び網の上に戻るアワビさん。

その後食べたが、おいしかった。
しかし、アワビの最期をライブで見届けた人によっては、 その後食べられなくなるんじゃないかという気もした。

結論。
アワビは調理後のものを食べたい。

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