夏と冬とぼく『トイレ掃除生活15日目』
おはようございます。
朝起きて小説を書いて3日目になります。
とてもしんどい。
それでは第3章いっきまーす。
ぼくと冬子の出会いは本屋だった。
なんとなく棚に伸ばした手が隣の女性の手と触れてしまったんだ。
「あっ、すいません」
ぼくは謝ってすぐ店を出た。あんまりベタな展開だったから、ナンパと思われるのが嫌だった。チラッと見えた顔がとても可愛くてびっくりしたのもある。
そのまま隣のカフェに入ったのは一縷の希望に託そうと思ったからだった。彼女にはその価値があると思った。
店内は混んでいて4人掛けのテーブルに案内された。窓側はソファーでもう片側は椅子。混んでいる中で4人掛けは申し訳ないなと思いつつ、ぼくはソファーに座ってコーヒーを注文した。
しばらくするとさっきの彼女が入店してきた。本屋の袋を持っているからさっきの本を買ったのだろうか。
店内は満席で彼女は順番待ちの紙に名前を書き込んでいた。ぼくにとって最高のシュチュエーションだ。
店内は騒がしいが、この時ばかりはぼくの心音が勝っていただろう。それほどの緊張の中ぼくは彼女に声を掛けた。
「良かったら相席しませんか?ぼくはすぐに帰りますんで。」
困ったような苦笑いで頷いてくれた彼女。苦笑いでこんなに可愛いんだったら笑顔はどれだけ可愛いんだろうか。
彼女は順番待ちの紙に書いた名前に取り消し線を引く。
人数の記入欄は2人と書かれていた。
待ち合わせの相手は夏子だった。
ぼくがいる理由を説明した所で帰ろうとすると夏子は言った。
「コーヒー奢ってくれません?あっわたしソファー座っていいですか?」
ニヤニヤしながら夏子はぼくを椅子に座らせた。空いたソファーに座った彼女はわざとらしくメニューを開き悩みだした。ムムムッと聞こえてきそうな悩み方を現実で初めて見た瞬間だった。メニューが逆さまなのもわざとなのだろうか。
だがこれで彼女が注文した分の伝票がこないとぼくは帰れなくなってしまった。
そしてぼくの隣には苦笑いした冬子が座っている。
【なんて良い人なんだ】
これが夏子の第一印象だった。
「やっぱりコーヒーにしようかな。」
夏子の言う【やっぱり】がぼくには理解出来なかった。
冬子がお手洗いで席を外したのを機に夏子に聞いてみた。
「なんか強引にぼくが隣に座っちゃって、冬子さん迷惑じゃないかな。」
するとふうっと息を吐いて夏子は言った。
「冬子をばかにしないで。あの子は嫌ならはっきり言える強い子よ。」
夏子は続けた。
「それとあの子の困った様な苦笑いは親友のわたしにしか見せないの。それなのにあなたには見せてる。この意味は自分で考えて。」
ハッとする様な強い言葉でも、相手が夏子だと色が変わる。
彼女たちの信頼関係が伺えるからだろうか。
夏子の言葉はぼくの背中を強く押してくれた。
戻ってきた冬子にぼくは言った。
「あなたを好きになりました。ぼくと付き合ってください。」
向かいに座る夏子のニヤニヤが増した気がした。
【良い人だけど厄介な人】
夏子の第二印象がこれだった。
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