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また、同じ夢をみていた、の読書感想文

「空は青く、草は緑で、土は茶色。」
これが本の中でぼくが1番覚えている言葉だ。
こうして文章を抜き出すと普通の事を並べているだけに思うだろう。
だけど物語の中に入り込み、主人公と同じ目線で歩いていると違うんだ。
見上げた空が青い事に気付いて、草は緑で、最後に土の茶色を知る。
主人公は空を見上げて、ゆっくり視線を戻して草を見て、俯いて土を知る。
色によって主人公の動きを表現している事に気付いただろうか。

この小説の主人公は小学生の女の子。
とても賢くて、周りの小学生がくだらなく見えてしまう。
友達がいなくて常にひとり、まるでそれが必然であるかのように日々を過ごす。
同級生と口喧嘩になっても彼女は負けない強さを持っている。
大抵の人が欲する「強さと賢さ」を併せ持っていたとしても、人生はなかなか上手くいかないのかもしれない。
この「人生」についてよく語られている。
「人生とはヤギさんみたいなもの」
それはなぜか。
「素敵な物語を読むと思うの、この本を食べて生きていけるかも」
この様に「人生とは」で始まるなぞなぞで、ぼくは何度も考えさせられた。

この小説に登場する彼女の友人がいる。
高校生の南さん、アパートの住人アバズレさん、木の家に住むおばあちゃん。
彼女たちとの別れの度に大きな気付きを得る主人公。
友達たちとは彼女の未来の姿だった。

高校生の南さんは、主人公の高校時代。
両親を事故で亡くし、自傷行為を繰り返す南さん。
手首を切り落ち着く南さんを止める主人公。

アパートの住人のアバズレさんは卒業してからの主人公の姿。
周りを馬鹿にして育った彼女は後に自分が空っぽだった事に気付く。
そうして自分を大切にしなくなった彼女は風俗嬢になる。
だけども彼女の魅力は変わらない。

木の家に住むおばあちゃんは主人公のずっと後の姿。
彼女の持つ絵にはサインが書かれていた。
「LIVE ME」
間違った文法には意味がある。
その意味を書くと、不幸にもこの感想文を先に読んでしまった住野さんファンの楽しみを奪ってしまいかねないので割愛しよう。

この本のタイトルから容易に推測できるのは「夢だった」という結末だろう。
事実これは夢の物語なのだけど、このタイトルにも意味があると感じている。
読むにつれ、主人公の未来の姿を知っていく形だ。
それに対し、夢から覚めた彼女は幸せなのかを考える様になるからだ。
それがこの作品の醍醐味になるのだろうとぼくは感じた。

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おしまい

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