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即興小説3『トイレ掃除生活101日目』
いま私は狭く暗い部屋の中、貴方を想って死ぬでしょう。
かろうじて右手だけが動かせて良かった。
あなたに手紙を書けて本当に良かった。
そしてこれが最後の手紙になります。
私はいまあなたの近くにいます。
戻らぬ私を探しているのでしょうか。
時折貴方の声が、足音が聞こえます。
返事をすれば貴方に会えるでしょう。
それがどれだけ嬉しい事でしょう。
返事をしなくて申し訳ありませんでした。
泣きました。
泣き声を必死で抑えて泣きました。
瞼を閉じても涙が止まらない事を知りました。
照れくさくて言えませんでしたが、貴方は太陽のような人でした。
私は貴方のお陰で幸せでした。
照れくさくて訊けませんでしたが、私はどんな夫でしたか?
振り返ってみると口下手であまり喋りませんでした。
貴方の笑顔に甘えてたんだなと、いまになって気付きました。
貴方に会いたい。
会って抱き締めたい。
でもそれは叶いません。
私はもう動けないのです。
せめて貴方の名前を呼びたい。
でも私は貴方には生きてほしい。
だから私は声を殺して死んで行くのです。
近くで私を探す貴方を想って死んで行くのです。
瞼を閉じると貴方の笑顔が浮かびます。
最後の時も感謝の気持ちで胸の内を満たしてくれる。
そんな貴方に出会えて良かった。
ありがとう
ゴキ田ブリ男より
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こんな手紙がゴキブリホイホイの横に落ちていた。
罠にかかり死を待つ彼が、大切な方に遺したのだろう。
恐ろしい罪悪感から私は立ち尽くした。
この3年後
私は『黒光を守る会』を発足した。
ブリ男さんへの償いではない。
自らの過ちを正すのだ。
次回に続く、ことはない
おしまい
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