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『木洩れ日に泳ぐ魚』恩田 陸

おはようございます。
先週読了した本の感想文を書く。
楽しみにしてたので「やっと書けるぞ」という気分だ。
恩田さんの作品を読むのは今年だけで3冊目になる。
おそらく最も有名な「蜂蜜と遠雷」は去年の内に読んでいた。
ぼくの場合は「夜のピクニック」が1番好きだ。
それではいっきまーす。


恩田さんは一晩をとても素晴らしく仕上げる作家さんだと思った。
舞台はアパートの一室。引越し準備を完了させた家具のない殺風景な部屋のみ。
登場人物は男女二人。千浩(ちひろ)と千明(ちあき)だけ。
この二人の関係は終末にかけて少しずつはっきりしていく事になる。

殺風景なアパートで男女二人の心理戦から結論を導く物語。
まとめると一行だが、これがとにかく面白かった。
結論を挙げても複雑だった。
二人は双子の兄妹ではない。だが夜中まではずっと兄妹だと思っていた。
二人の目の前で事故が起きた。そしてお互いが殺人犯だと疑っていた。

アパートの一室、空っぽな部屋を「広い」と感じた千浩。
対して空っぽな部屋を「狭い」と感じた千明。
冒頭から二人の違いを目の当たりにしたのが印象的だった。
お互いを双子の兄妹だと思っていた二人。
お互いに恋人がいても、なぜか背徳感を感じてしまう二人。
プロポーズを断った千明に歓喜する千浩。
ぼくはもどかしくて歪んた二人の物語に深く沈んでいくのが分かる。

千明の言葉がいつまでも残る。
「愛がなければ嫉妬もない、しかし私の愛はどこにも存在しない事になっている愛だ。」
千明という女性の強さと賢さを知れた。
千浩という男性の醜さと意気地なさを感じた。

一晩の空っぽなアパートでこれほど深い物語。
ぼくはこの作品を忘れられないだろう。

なんつって。
やっぱり読んだらすぐ書かなきゃ覚えてないもんだね。
お求めは近くの本屋さんもいいですね。

おしまい

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