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よるのばけもの 住野よる

この物語は【少数派】を描いていると思った。
「誰もが共感する少数派物語」とでもいうべきだろうか。
これは相反することだろう。
しかし私はそう思わない。
相反するものを矛盾なく描くという技術を感じる。
さすが住野さんなのだろう。
【不思議が不思議なまま不思議で大好き】という言葉には衝撃を受けた。

この小説は住野さんの3作品目。
全て読んでいる中で、ここまで伏線を回収しなかったのは始めてだった。
伏線の答えは物語の中に書かれてはいるが描かれてはいない。
登場人物は主に2人。
安達は夜になると黒い粒に覆われた化物になる。
たまたま宿題を忘れて化物のまま学校に取りに行った。
そこで出会ったのが矢野といういじめを受けているクラスメイトの少女だ。

この物語は昼と夜でガラッと変わる。
安達の一人称は昼は「俺」で夜は「ぼく」になるし、そもそも夜は化物になる。
昼はクラスメイトを「矢野」というし夜は「矢野さん」になる。
昼の学校ではいじめを容認する多数派に所属。
夜に会う矢野さんには寄り添う少数派になる。
安達を通して人の持つ多面性を描いているのだろうか。

【正義が多数派ではない】というのは私の持論だ。
ただし残念ながら多数派で世界は回っているのだ。
この学校のクラスも正にそうだった。
矢野が悪いから矢野をいじめるのではない。
みんなが矢野をいじめるからそれがクラスの正解なのだ。
それが正しい筈がない、そんな勇気ある少数派の苦悩が描かれている。

しかし夜に化物になる設定に意味はあるのだろうかと思った。
別に化物のくだりはいらないんじゃ・・・。
その分でもっとクラスメイトを深く描いて欲しかった。
もっと続きが読みたいと思わされる物語だった。
これが住野さんの魅力だろうか。
正に不思議が不思議なまま不思議で大好きだ。
ぼくはそう思った。
お求めは近くの本屋さんもいいですね。

おしまい

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