墓地の住民

暗くなってきたな
あれ?まだあそこに誰かいるな
そろそろ帰らないと危ないのに
俺たち以外にも
ここに住み着いてる
生きた人間がいるし
ちょっくら脅かしに行ってくるか
よし、とりあえずこのへんで様子見だな
昔誰かが落としていった音楽プレイヤーが
たしかこの墓石の裏にっとあったあった
これでホラー系のBGMを流しとけば
すぐに気味悪がって帰るはずだ
…あれ?聞こえてない?遠すぎるかな?
いやでも、あんまり近づきすぎるとなぁ
俺、生きてる人間とか苦手だし
しかも女とか…
万が一話しかけられても困るからな
音量をMaxにしておこう
それにしてもさっきから微動だにしないな
もしかして寝てる?そんなわけないか
ちょっとだけ近づいてみよう
たぶん気づかれなさそうだし
あっ…!
線香のにおいがする
墓参りに来てたのか
あそこは確か、1週間前だったっか
よく見たらまだそんなに大きくないな
中学生?いや…小学生か?
そうか…可哀想に

俺は気がつくと彼女の頬を伝っていた涙を
透けた指で拭っていた

あっやべ

彼女と目があった
さすがに気がつくか
どうしよう

だれって
そんなことより早く帰りなもう遅いよ
あっちょっと近づかないでって
何でって人間とか苦手なんだよ
笑うな
別にいいだろ、俺が何を苦手でも!
幽霊でも?って、そんなん関係ないだろ

そんなことより早くお帰り
そこにはだれもいないから

えっあー
俺は生きていた記憶がないから
ずっとこの墓地をさ迷っているんだ
でも死んだ人のほとんどはすぐに成仏してしまう
この墓地には数百もの墓石があるけど
ここにいるのは俺、たった一人だけだ
きっと君の大切な人は今頃、天の上だ
俺も行ったことはないがこの世よりずっと幸せな場所だ
この世は嫉妬や絶望、煩悩で溢れかえってる

そんなことはいいんだ
もう帰れ
入り口まで送っていく

はあ!俺のことどうして見えるかだって
そんなん知るか
あー…ただ一回だけ参拝に来てたやつが、話していたのをきいたことがある
あれは、ずいぶん昔だった気がする
強く思えば、願いが通じることがあるって…

ほら、ついたぞ、入り口だ
俺はここからは出られない
じゃあな
え?さっきの話?あー…もしかしたら、君の大切な人と俺は似ていたのかもしれないな…
じゃあ、気をつけて帰るんだぞ
またな

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